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異界の魔獣使い17

17


「簡単な名乗りしかしてなかったから、改めて言わせてくれ。リックス・ルブォーってんだ俺は。んでこっちがリファス・レシア。」


「セルファ・スズ・アララギだ。スーズと呼んでくれればいい」


「こっちもリックとリファでいいよな」


「そうだね。本当に助かりました。スーズさんいなきゃ私たち死んでた」


たまたま運が良かった。

次もこうなるか分からないが、生きていて良かったと思うリファだ。


ムーンスナ通りを歩いていると、薬草を煮た匂いがそこかしこと漂ってくる。

この通りは、薬草店が多い通りのようだ。


「同じ依頼受けてたのかよ…」


あの後、話を聞けばアウレー草の根の依頼の方を受けていたリックが言う。


「リック!助けて貰って文句言わないの!」


今はすっかり、麻痺が治って隣を歩くリファだが、回復薬を飲んだからといって直ぐに

咬まれた傷が治るわけでもないせいか、まだまだ痛そうに時折顔をしかめる。


「まったく、一時はどうなるかと思ったけどなんとかなってよかったわ。スーズさんありがとうございました」


「たまたま運が良かっただけだ。今回は運があったが、次からは注意事項も良くみて考えることだね」


そういえばスーズこと、セルファは経験不足ゆえの無知での死亡者が一番多かったなと思う。


「なぁ…。たまに見かけるあんたもだけどさ。変な仮面の連中なんなんだ?あとなんで咬みつき蜂生かしていたんだ?」


冒険者ギルドに張り出されている依頼を知らないのか、リックが聞く。


「仮面は、一年後に予定しているマスカレード祭の宣伝だ。報酬はランチ1食分程度だが、募集期間が長いせいか、人気がある。私のは違うがね。蜂は、死んでから羽を採集すると、羽が濁った色になるからだ。」


蜂の羽の使用用途はわからなかったが、仮面の隙間から見えるケロイド痕から、顔を隠すためだろうと推測するリファだ。

リックはそこまで気づいていないみたいねと思いながら…。


ルミング薬草店には、ハーブや乾燥途中の薬草が吊るされていた。

店の外観が、薬草店と言うよりも花屋っぽいが、扱うものはすべて薬効効果のある植物だろう。


「いらっしゃいませ~。今日はどう言ったご用でしょうか?」


この店の主人だろうか?薬草の仕分け作業をする女性が言う。


「冒険者ギルドの依頼確認お願いします。私は後で良い」


「じゃあ先に終わらせますね。アウレー草の根の買取お願いします。数は7束なのですがいいですか?」


丁重に取り出した根っこの束を渡す。


「確かに確認しました。こちらにサインしておきましたので、これをギルドに持っていけば報酬もらえます。あら、怪我してるみたいだけど大丈夫?」


血が滲んだ衣類に気づいたのだろう。


「ええ。大丈夫です。処置してあるので…」


注意事項をよく読まずにいたから、とはとても言えない。


「なら良いけど、気をつけてね。たまに冒険者でも簡単な採集依頼受けて、亡くなる人もいるみたいだから」


「はい。ありがとうございます。」


「んじゃ俺たちはギルド行くわ、今日は助かった。」


「ああ。次は準備しておくことだ…リック後で話がある。ギルドの喫茶で待っていてくれ」


「…わかった。また後で…」


二人を見送るセルファは、店主に依頼の薬草をわたした。


「お待たせしました。ムルツキ草とアウレー草の根ですね。先ほどの方と一緒だったのですか?」


「あの二人とは、途中で合流してね」


「そうでしたか。ありがとうございます。あなたが、助けてあげたようですね」


薬草の数をかぞえ、必要書類に記入する。


「なんのことでしょう?」


「とぼけなくても分かりますわ。たまにいるんですよね。不慣れなのに、準備不足の冒険者が怪我をする。この仕事長い私ですが、依頼途中で亡くなる方も何人かいましたわ」


危険はあるが、それ以上に儲けも大きいからか冒険者になる若者は多いが、死ぬ者もまた多い。


「最初の危険を乗り越えた方は大丈夫なのですが、たまに亡くなる方を見ると考えさせられるのです。依頼を出してよかったのだろうかって」


自分で採りに行くのはむずかしい。出来る者に依頼するのが普通なのだ。


「そうでしたか。その結果を選んだのは本人としかいえないですね」


「そうですわね。ではこちらギルドへ提出してください。薬草は間違いなくすべて受け取りました」


「ありがとう。ではまた」


薬草店の店主に見送られ店をでる。


「…追われていたのは、リックたちか」


何をしたのか、または何から逃げているのか知らないが、セルファがリックに後でまたと告げたのは、森をでて、町に入った辺りから後を追う気配に気づいたからだ。


自分を追う者なのか、リックたちか分からなかったため、ああ言ったのである。

後をつけていた者の気配はない、自分ではなくリックたちに用があるのだろう。


「また面倒なことになるかね…」


『死に戻り』してから碌なことに巻き込まれる体質にでもなったのかと、思いながら冒険者ギルドへ向かった。





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