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異界の魔獣使い15

15


Eランクの依頼からは、採集関連のものが多くなる。


討伐はあるにはあるのだが、ムルヴァーラの周辺の森や平原だと群れで動く魔獣が

中心になるせいか、Eランクの場合討伐系の依頼は何人かでチームを組んで行うことを推奨されているようだ。


「採集系で良いか」


特に金銭にも困ってはいないが、比較的同じ生息地にある採集の依頼を2つ受けることにした。

採集系だと2つまで、討伐系を受ける場合は1つだけと決まっているようだ。


「こちらの2つですね。期限は2つとも3日以内にお願いします」


魔獣ギルドと違い、冒険者ギルドの受付は、女性も可能らしい。


「わかったありがとう。注意することはなにかありますか?」


「そうですね。採集の場所近くは、毒蜂や咬みつき蜂がいることがあるようですので、薬を用意した方が良いかもしれません」


咬みつき蜂は、珍しいことに蜂の外見をしていながら針で刺すのではなく、咬みついて麻痺させる魔蟲といったところだろうか。


「わかりました。ありがとう」


ランクE 依頼書


依頼主 ムルヴァーラ ムーンスナ通りルミング薬草店 メイア・ルミング


依頼内容 ・麻酔薬用の原材料採集 ムルツキ草 5束

       ・滋養回復薬の原材料採集 アウレー草の根 5束

注意事項

     ・麻酔薬用のムルツキ草は、ウナツキ草と間違えやすいので注意

     ・アウレー草は、採集時に草汁に注意してください。かぶれやすいです。

     ・どちらも森を中心に生っていると思いますが、魔蟲に注意してください。


報酬  1束10ルーグ~ 

  

     ・こちらの依頼より少なくなっても、多くなってもかまいませんが、多く採集して

      しまった場合の買取は各10束までとします。


冒険者Pt 30Pt


期限   3日内 


募集人数 1~3人


募集期限 張り出された日から1週間後まで


報酬の受渡し条件 採集した薬草をルミング薬草店まで、持ってきてください。依頼完

           了の書類にサインをいたしますので、それを受け取った後に冒険者

           ギルドにて報酬の受け取りをお願いします。



セルファが受けた依頼内容は、依頼者が女性だからだろうか、わざわざ注意事項まで書き込んでくれていた。


「アウレー草の根は採集用スコップが必要だな」


さすがに、何でも入る道具袋でもスコップなんて入れてない。


足りないと思えるものを、道具屋で揃えてから向かうことに決めた。


冒険者ギルドをでて、周辺を見回せば直ぐに道具屋のある場所が見つかる。

もともと、冒険者が依頼を受けてから即用意可能なように、ギルド周辺に店を集中させているのだろう。


「いらっしゃい~何が必要だい」


威勢のよい店員が、セルファに聞く。


「薬草採集用の小型スコップと、採集したものを入れる袋をお願いします。大きさは中ですかね」


「はいよ。お客さんそれマスカレード祭とかってのに使う仮面だろ。

それどこで買えるか知らんかい?ギルド貸出し用とは違うみたいだからさ」


商店などには、すでに情報が回りだしているようだ。


「ロドリック・ペインさんてわかりますか?この祭の主催者なんですが、その人に聞いてもらうか仮面作る工芸ギルドに問い合わせして聞けば良いと思いますよ。通りごとにお揃いの仮面とか作ってもらのも面白そうですね」


・採集用小型スコップ 12リーグ

(家庭菜園にも使えるらしい)

・採集袋 中  6リーグ


「おおそれは良い案かもしれんな。はいよ2つで18リーグだが、おまけして15リーグだ提案の礼だよ」


威勢の良い店員に礼を言ってスコップと採集袋を道具袋にしまいこむ。


薬も用意したほうがいいと言っていたが、こっちはすでに道具袋の中に各種あるため用意する必要はなかった。


「武器は、見るか…」


失った精霊憑きの武器とは別に、道具袋に普通の武器も用意してはいたのだが、銘のある武器なので見る人が見れば所持者が誰かばれる可能性があるので使うことは避けたい。

短剣などは銘がないため大丈夫なのだが、やはり武器の所持は必要だろう。


武器屋はどこかと探せば、道具屋の裏側の通りにあるようで、最近の武器はどんなものかと確認もかねて見ることにする。


バルゼク武器店 人かそこそこ入店しているようで、それなりの店らしい。


壁にかけられている大型の武器(鑑賞用か?と思う大きさである)


どうやらこの店は剣を中心とした武器屋なようで、投擲用の小剣から大剣が主流のようだ。


「はいよ次~…」


店員さんに肩をポンと叩かれ、何が次なんだろうと疑問がわく。


「あれ、お客さん依頼を受けた人じゃなさそうだね。仮面つけてたからてっきり依頼を受けた人かとおもったよ」


どうやらこの店は、マスカレード祭を宣伝するためのスタンプを押す店の一つだったらしい。


「ああ。そうだったんですか。何かと思いましたよ。ブロードソードが欲しいのですが…」


「悪いが手見せてもらえるか?」


どれだけ使えるのか、手をみてから判断しているようだ。


「悪くはないな…いや…これは…」


なにやらブツブツと呟いては考え込んでいる。


「武器は、主流のものならほぼ使えますが」


「のようだな。本来は刀じゃねえのか?握った時のクセとかがそんな風にみえるんだが…」


「ええっ。失くしてしまったので…」


「刀はあるにはあるんだが、値段がここにある武器と1桁違うだが買えるかにーちゃん?」


刀の技法は、本来この世界の物ではなかった。

異世界からの技術なため、作れる者は多くないらしい。手入れや修理などはここでも

受け取りは可能で専門の刀を扱う所に頼むらしい。


「価格によりますとしかいえないですね」


「まぁ 見るだけみてみるかい? おい ここの番頼む奥に行ってくる」


近くにいた店員に声をかけ、セルファに奥へ一緒の来いと合図する。


「奥にも武器あるんですか?」

「ああ。表のは一般的な武器だけだ。それなりの使えそうな相手には、奥を見てもらっている」


冒険者などの実力を見てから売っている店らしい。

かなり玄人と言ったところだ。


「…これは、凄い……」


1桁違うと言うだけの種類の武器が置かれている。

精霊憑きの武器ほどではないが、銘なしにもかかわらず思っていた以上の出来である。


「どれもすばらしい物ですね」


刀といっても種類がいくつかある。太刀、忍者刀、野太刀、小太刀、長巻、短刀、脇差etcetc

ここにはそれらの半分近い量が置かれているのである。


「おう。そう言って貰えりゃ作った奴も喜ぶな」


「その方は?」

「もう随分前に、寿命で死んだ。なんでも異世界の刀鍛冶師って話だが、

ありゃどうみて生粋のエブラード人だぜ。

法螺話にしちゃあ、良い刀作るじーさんだったがね」


セルファから見れば、その人も『死に戻り』した者としか思えない。

既に、死んでしまっているので確認出来ないのが残念だが。


武器屋の店員こと店主だったらしい。名をガンク・バルゼクとのことだ。


「ガンクさん。その方が作った武器、すべてください」


「ぶっ!…にーちゃん冗談はなしだぜ」


通常一般的な剣の価格は、初心者用で最低でも5000ルーグである。


桁1つ違うと言われる刀だと初心者向けかは微妙だが、50000ルーグと考えると

刀だけでもすべて買うと言うことは、とんでもない金額になる。


「ガンクさん。ルーグでの用意だと直ぐは難しいので、これじゃダメですか?」


道具袋から取り出したのは、最初から何かあった時の為と自分が用意しておいた予備資金の一部であり、道具袋に入れておいたものだ。

そのため宝石の所有権は大丈夫であった。


「宝石じゃ無理ですか?」

取り出した宝石は4つ。赤、青、黄、紫で指の第二関節ほどの長さがある。

宝石で鉱物と思うのだが、以前狩った魔獣の心臓が変化したものなので、詳しくはわからない。


「にーちゃん。おめえ何者だ」


「通りがかりの冒険者ですが」


そうじゃなくて、と頭をガシガシとかく。


「にーちゃん見てると自分の常識が、馬鹿みたに思えるぞ」


「で、売ってくれますか?」


「よし売った!これならおつりも十分だしな。刀以外の気に入りあれば、何本か持っていって良いぞ」


どうでぇ太っ腹だろうと告げる。


「取引成立ですね。では選ばせてもらいますよ」


購入した刀類は、よけるように移動させてもらうと、セルファは他にも使えそうな武器を吟味していく。


自分の好みが刀だったせいか、他の武器はまぁまぁな出来かと。使いまわしがきき、予備武器として使える剣と小剣、槍、弓で計6本もらうことにした。ついでに矢も1000本ほどもらう。


「おしっ。んでどうする配達はできるが?」


見れば、そこそこな武器の山が出来ている。


「大丈夫ですよ。ここだけの秘密ということで、見たことは他言しないでください」


近くにあった武器からセルファは、道具袋に入れていく。物理法則無視である。


「にーちゃん。それは…」


聞いたことはある。

何でも入れられる道具袋と言うものがあって、極一部の人間が所持していると…

それがあれば、重い思いをして荷物を運ぶ必要がないらしいとだ。


「秘密ですよ。ここだけの事です」


良い買い物をしたなぁとセルファ。

買った刀の中から1本を選び脇に差す。


「ああわかったぜ。またなんかあればきな。修理はこっちに持ってきてくれれば、請け負うからな」


「わかりました。またきます。後、私を探したい時は魔獣ギルドに問い合わせればわかりますから

オババさんの所にいるんで」


「おうよ」

ガンクは嬉しそうに出て行くセルファをみながら、ややげっそりとする。

あんな馬鹿みたいな大人買いで、武器を買って行くやつを初めてみたのだ。

しかも4種の宝石でだ。極上品な石なのはすぐにわかった。


「はぁ~これ売って、新しく武器、仕入れるかね」


赤い石を手にとって、かざすように見るガンク…

「……まっ…まさかな…」


ありえない!ありえない!と否定をしたい自分がそこにいた。


宝石は宝石でも、魔獣石ではないか!


魔獣から宝石は取れるのだが確率が低く、買って手に入れようとした場合小さな小国一つくらいは買える値段である。

しかも魔獣石は、魔道具を作る素材に使用できるのだ。


普通の鉱物の宝石では、装飾品にしか使えないのだが、魔獣から取れる魔獣石は別である。

魔道師が欲しがるので、大きな石であればあるほど値段が半端なくなるのである。


「あのにーちゃん一体、何者だ…」


呟く声を聞く者は、誰も居ない。

ただ、ガンクはこの石を持っていることを誰にも言えないと思うのだ。

売る先は、よほど信用出来る所でない限り自分の身が危険だと思うのであった。


















         





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