異界の魔獣使い13
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結局、その日はオババの家に泊まりこれからのことをどうするのか話し合った。
オババが言う小人族は15人ほどの小さな集団で、この家の床下を利用して住んでいることも聞いた。
臆病なのか姿は見なかったが、小人族の3人とは仲良くなれたとのことだ。
小人族の3人には卵の世話を頼み、ここで一時的だが保護してもらうことで話がついた。
「さて、次はお前さんたちじゃな。魔獣使いになりたいとのことだが、すでに魔獣を所持していることで見習いレベルだのう~」
魔獣使いになるには、特に難しいことではない。
要は自分に使役してくれる、魔獣を手に入れることが一番肝心なことなのだ。
なので、愛玩用の小型の魔獣を持つ者も、魔獣使いには違いはないのである。
ただし、一般的に魔獣を手に入れると言うことはかなり難しいのである。
何が難しいのかと言うと、まず魔獣を自分に懐かせることである。
懐かせたい魔獣がいた場合、その個体が幼ければ幼いほど良いのである。
生まれた雛鳥が、刷り込みで初めてみた物を親と勘違いするのと同じと思って貰えればよい。
そうなると幼い魔獣を手に入れる為には、親をどうにかしなければならず、人気の高い
魔獣ほど手に入れる為の危険性が大きくなると思って貰えれば分かるだろうか。
そのため専門のハンターもいるほどで、手に入れた幼い魔獣の売買の値段は魔獣のレベルにより変わるのだ。
「ただし、まだ半年は無理じゃな」
シラユキを見てオババが言う。
成長しきっていない為、今すぐ訓練に入るのは難しいとのことだ。
訓練と言っても、人との連携を深めることと自分たちの戦うスタイルを確立させるためである。
例えるなら空を飛ぶ魔獣を飼いならす→まず懐かせて→空を飛ぶ訓練をさせ→主人を乗せて飛び、主人の戦いにあわせて自分で判断させるということを覚えこませるのだ。
必然的に、知能が高い魔獣ほど好まれるのが分かったと思う。
「あとは、『死に戻り』とのことじゃが、エスティア。お前さんの兄には言わんほうがよ
い。あれは、直情馬鹿なところがある。自分から気づいたら話してしまっていたとなる可能性が高い」
「オババ。ならセルファはどうさせればいいんだい?」
「ばれなければ良いんじゃろ。『死に戻り』はまだまだ謎が大きい。国のお偉い連中は、危険視だけでしかみておらん。確かに危険な過去の事件もあったがのう~」
「ならば、どうしたいかはセルファ次第か」
「そうですね。顔さえばれなければ、こちらは問題ないと考えてはいるのですが、上位の貴族連中と家の傭兵たちに見られなければなんとかなるかと考えてはいるのですが、難しいです」
傭兵王と言われているルクサス公爵家は、かなり規模の大きい傭兵部隊を抱えている。
こちらは顔は知らぬが、向こうは知っていると言うことはありえるのだ。
「顔を変えるか、隠すしかないじゃろうなぁ」
「包帯巻くのは、変な病気持ちと思われるから却下だね。セルファいっそう仮面かなん
かで隠すとか、道化師メイクもあり?」
「道化師は勘弁してほしい。常に人がいるところで道化する必要ありそうだ。どこかの国か忘れたが仮面を付ける祭りがあるみたいだな…」
スズ・アララギの持つ記憶に、マスカレードと言うものが出てくる。
完全に顔を隠すタイプから目元だけだったりと、かなりの種類があるらしい。
特殊メイクと言う言葉も出てきたが、こっちは難しそうである。
わざと怪我している風にメイクすることのようだ。
「細工師にも相談できないか?思いついたことがある。後は魔方陣をうまく利用できれば誤魔化せそうなきもする」
「巻き込む人間は、少ないほうが良いんじゃないかい?」
「そうなんだが、協力者が多いにこしたことないのも確かだと思う」
「お前さんの持つ異世界の知識なんじゃろう?巧くいけば周囲も巻き込めるなら話してみんか?」
オババはセルファが思いついたことを話してみろと言う。
それは奇妙な話だった。
仮面をつけて普段ではない自分になりきり、祭を楽しむと言うイベントが異世界にはあるらしい。
顔が隠れてしまい、誰だかわからない状態をあえて楽しむ仮面舞踏会とも言うらしい。
「面白いかもしれぬのお~」
この世界での祭りと言えば、豊穣祭か季節の変化を精霊に感謝する祭くらいである。
「ここの商人連中を巧く巻き込んで、イベントとして定着させるのも有りかと思ったんだが、出来そうか?」
自分の顔を隠すためだけの思いつきであったのだが、真新しいことに目がない商人を巧く乗せ、町1つを巻き込んでマスカレード祭りとして定着してしまったのは、1年後の話である。
読んでくれてありがとうです。
どうも話とばしすぎかなぁ