異界の魔獣使い12
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エスティアが言うオババの森とは、魔物使いギルドの中にある森と言うよりも、
公園と言った感じの場所だった。
使役される魔物の環境を考慮して、病気や怪我の治療などをこの公園を使い行っているという。
水辺、森、岩場と多岐にわたるエリアに分けてエブラード王国の各地にこうしたフィールドが
あるらしい。
そしてここは森をなるべく再現しているとのことだ。
「へー かなり本格的にしてるんだな」
魔物ギルドの建物の裏手から、最初は整えられた公園と言った趣だったものが、歩いて先へ進めば進むほど森と錯覚してしまう。
「年に数回だが、ここを訪れた子供が迷子になって捜索隊が出る程度には広いね」
「だろうな」
『なんだか懐かしい気がします』
エルがセルファの帽子の上に座ってつぶやく。
愛玩用に浚われて、こうしてゆっくりと、森に入ったのはどれくらいぶりだろうか。
ミルとカイは、シラユキの背中に乗っている。
ここの普通の森との違いは、ある一定の距離で設置している外灯だろう。
発光する光る石を利用しているとのことだ。
「あれがオババの家さ。昼間は治療院にいて、それ以外はここで薬草などの世話してる」
詳しい年齢はわからないが、かなり物知りとのことだ。
木造の小さなコテージと言った家だ。家の前の畑には、種類豊富な薬草や花、野菜などが植えられている。
「オババ~いるかい?」
エスティアが先に声を出しながら家に入っていく。
「オバ……ヒャァ…」
悲鳴のような声にセルファは何事だと駆けつける。
「ヤメ…ヒャア…」
「フォッフォッええ乳じゃ。…んむ。揉んでもう少し大きくするとええぞ」
真っ赤になってるエスティアを、後ろから羽交い絞めにする感じで乳を揉みまくっていた。
「………」
見なかったことが無難だなとセルファ。
まぁエスティアの胸が、揉み応えありそうな大きさなのは確かだが…。
「いい加減にしろ!…このエロババァ。客の前でなにしゃがる!」
「フォッフォッ。ええ乳は揉んでやるもんじゃ!…さてのう。お客さんらしいがこんなババァになんのようかぇ」
「初めましてオババさん。エスティアの友人のセルファと言います。今日は見てもらいたい物があって、こうして来ました。これが何かわかりますか?」
気を取り直してセルファは、何の魔物の卵かわからない。卵を渡す。
「んむぅ~…卵じゃな。水蛇か水竜あたりかもしれんが、まだまだ孵化せんよこれはのう。自然の気が足りておらん。まぁこの森においておけばよかろうかのう~」
後数年は、このままではないかとのことらしい。
「へぇ~。さすがオババ何でも知ってるんだな」
「そうですか。ありがとうございます」
「それはそうと、そこにいる小さき子よ。なぜ、森の子がおるんじゃ?」
セルファの帽子の上にいたエルを見て言う。
森の子、小さき子は小人族をさす。
「主らの仲間なら、この森にもおるぞえ。」
「ええっ!オババ小人族が、他にもいるのかい?」
なんで教えてくれなかったんだと、エスティア。
「んむ。おるぞぇ。この森は安全じゃからのう~。ほいほい小人族のことを話せるわけがないのじゃ~」
オババ以外の者がいる時は、隠れているのだと言う。
小人族は、金になる。
浚われ売られてしまってばかりでは、種族としても滅びてしまう。
こうした安全な場所に匿うことも必要なことらしい。
オババが言うには、狩られる対象の愛玩用の魔物もここで保護してるとのことらしく、
魔獣使いでもなければこの中まで入ってくる者もいなければ、部外者が立ち寄ることも
ないため盲点をついたとも言えた。