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半年後に死ぬらしい俺の家に、ポンコツ悪魔が営業に来た  作者: 友利色良


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心太、過去を見る 後編

こんばんは。なんだかすごく時間が掛かっちゃいました汗 ようこそお越し下さいました。もし、誤字、脱字等、お気づきの点がございましたら、えぇと……、ございましたら……ごめんなさい許して下さい。(修正する気持ちを待とうよ、と)では、よろしくお願いします! 後半行きます。


 そいつは、四枚の黒い翼を背負っていた。


 魔界の最高位―――サタン。


 額に……ミミズを這わせている。

 と、思ったら浮き出た血管だった。

 あと……眉間に深いしわ。さらに気怠けだるそうな表情。

 もう、一瞥して分かるぐらいに、めっちゃくちゃ怒ってんな……。


 危険だ!って信号が俺の体にあったなら、今ごろうるさくて仕方ないだろう。


 だってねぇ……ヤバそうな暗黒の空気の波が、室内に膨張している。

 キャンプの翌日、俺に起きた魔獣バフは、とっくに無くなってる。

 現にファウストからの黒煙は見えない。

 なのに……サタンのソレはハッキリと見える……。

 それにさっきからこの、ビリビリと耳鳴りみたいな音。


 これ、かなりヤバいんじゃね……?


 そのヤバい震源地になりそうな張本人が「……やれやれ」と、長い髪を掻き上げながら呟いて大きく息を吸い込んだ。


 そして。

 一言、叫んだ。


「ファァァァアアストォォォォオオオ!!!」


「!!」


 地獄の怒号、一喝。

 サタンの体から、暗黒のソニックブームが放たれた。

 

 その、闇ソニックブームが。

 立ち昇る炎を全て消し飛ばした。

 

「なんちゅう声だ……!」


 思わず俺は呟いた。自分の耳を軽く叩くが、精神体となっているので何も感じない。

 ただ、どうやら俺の耳は正常に機能している模様。

 もし今、生身でいたなら、俺の鼓膜は消滅していただろう。

 

 ただ……悪魔とはいえ、一応は生身のファウストの聴力もぶっ飛んだんじゃないの? 

 と、思っていたら。


(恐ろしい……魔力でどうにか聞こえはするが、今の一撃で我の聴覚は消された……)


 って、心の声が聞こえてきた。


 ん?


 家の中の炎が消え去ったとはいえ、燻んでいる黒煙は残っている。ただ、その黒煙が……。


「静止してる……」


 本来、昇るはずの黒煙が微動だにしない。

 これは……えと、どういう事?


「へぇ。サタンというだけあって時間を止められるのかい」


 俺が不思議に思っていると、婆ちゃんが現状を解説してくれた。

 

 グッジョブ、グランマ。

 火が消えたおかげで、部屋の様子がよく見える。

 どうやらここはリビングらしい。

 俺は……両親の元へ行こうとしてか、寝ていた部屋から逃げたか……よく覚えてないけど、力尽きてリビングで倒れていたようだ。


「……ここにいる者、それ以外の時間を止めた。部下が随分と無様な真似を晒したものだ。本当にすまない」


 そう言うとサタンは深く頭を下げた。

 そして、死神に対しては。


「黄泉の使者よ。申し訳ないがこの子供は蘇生したようだ。魂を連れて行くのは次回にしてもらえるか」


 礼の代わりに死神に対して視線を落とすサタン。


「フン……受け入れるしか無さそうね……。でも……」


 美女な死神はサタンから今度はファウストへと向いて。


「あんたとはいつかケリをつける。覚えておきなさい悪魔」

 

 そう言い残して姿を消した。


「それにしてもアンタ本当にサタンかい? その物腰の柔らかさ……随分と印象が違うけどねぇ……」


「それはアレか……? 乱暴者、永遠の反抗期ルシファー。……そんなイメージか?」


「まぁ、そうだねぇ」


 婆ちゃんにそう言われたサタンは。


「あぁ……それ、なんだが、なぁ……。人間は私のことをどうしても『おぉw 厨二病ワッショイwww』みたいなキャラに置きたがる……」と、ちょっと顔を紅潮させる。


「でも事実じゃないのかい? よく知らないけど」


「まぁ……昔の事は、ほぼ事実だ。しかし、アレだ……つまり……私とて若かったのだ。その親子兄弟喧嘩があってだ。それから数万年という刻が過ぎた。ならば流石に心のわだかまりとなっていた雪や氷も溶けるというもの。おや大天使達きょうだいたちとよく話し合ってな、問題は大昔に解決したのだよ」


「そうかい……でも……」


 婆ちゃんはそこでファウストをチラッと見て。


「悪魔はまだいるんだね」


「……そこはそれだ。人間界とて、いつまで経っても変わらず犯罪者が現れるだろう。ゆえに、警察や収容所、刑務所というシステムがどうしても必要となる。ゆえに魔界もまた必要と、ちちはそう判断したのだよ。それで私がこれまで通り責任者として統治させてもらっている」


「ふーん……。まぁ、いちいちごもっともか」


「納得いただいたようでなにより、さて……では問題の解決だ」


 婆ちゃんに対しての柔らかな表情から一変。

 サタンは感情が抜け落ちた顔をギラリとファウストへ向けた。


「……っ、閣下……!」


「……黙れ、ファウスト」


 その一言で、空気が凍る。


「規約違反、魂の損壊、人間への過剰干渉……」


 一つずつ、言い渡す。


「言い訳はあるか?」 


「……ございません」


「ではまずは、貴様の位を剥奪する。たった今から下位だ。そして……」


 その声が、空間を支配する。


「その子を最後まで観察しろ。人間として健康に生命を全うするまでだ。貴様の魂とその子は繋がりを持った、ゆえにその子に危険が伴う事があれば貴様も感じ取れるはずだ……。絶対にやり通せ、よいか……?」


「はっ……!」


「二度と同じ失態をするな」


「……はっ」


 ファウストが頭を垂れる。


 魔王は、婆ちゃんを見て。


「……こんなところでいかがか? 気に食わねば此奴こやつを好きにしてくれてかまわないが」


「結構だよ。私は心太このこが無事なら……いや……」


 言いかけて婆ちゃんは何かを思い出したのか、視線を別の方向へ向ける。

 視線の先はリビングを隔てた別の部屋。

 そこは……俺の両親の寝室があったはずだ。

 俺の両親は……寝ていたところで一酸化炭素中毒となり……帰らぬ人となった、と聞いている。


「この子の両親も救ってくれないか?」


「……残念ながら絶命した人間を戻す事はできない。いや……出来るが……私は絶対に勧めない」


「どういう意味だい?」


「……そなたは術師なのだろう? なら分かると思うが、”蘇生”と”よみがえり”は、手段と動機は似ていても着地点がまるで違う……。言わんとしている事は分かるだろう?」


「まぁ……ね」


「その二人の魂は死神に連れて行かれ、黄泉比良坂から黄泉へと向かっている……。あの場所へ人間の魂が行くと精神や記憶がまず洗浄される。もちろん時間をかけてだが……。ただ、少しでも洗われるともう別人の魂へと変わり果てる。そなたが希望するところは、これまでのその二人を生き返らさせてくれということであろう?」


「……やっぱり無理なのかい」


「……すまんな」


「分かった……。それで、心太はこれからどうなるんだい?」


「……分からぬ。悪魔と人間の魂を繋ぐなど、前例がない。ただ……」


「『ただ?』」


 聞き返されたサタンは、横たわっている子供の俺の元まで行くと屈んで、そして手をかざす。

 

 すると、驚いた。


 微弱な光が子供心太の俺を包み込む。

 みるみるうちに、火傷の傷が無くなっていく。


「言いにくいが、この子は―――心太といったか? 心太はおそらくは、感情が現れにくい性格と、なるかもしれぬ。逆にファウストは、人間の感情を知る事になるだろう……。両者共、魂を共有し合っているからな。これから観察が必要だ」


「その観察を、その悪魔にやらせるつもりなんだね」  


「左様」


「本当に大丈夫なのかい?」


 婆ちゃんが訊くと、サタンはファウストへと目を向けて。


「過ちはもう……起こさせぬ。だな? ファウストよ」


「……もちろんです」


 ファウストは即答した。

 あぁぉぁぁ………! ツッコミてぇ……。

 今の俺は声を聞いてもらえないらしい。

 すっげぇ悔し……。

 どこが大丈夫なんだよ。……ったく。


「必要とあらば……また来る。肝に銘じておくのだファウストよ。心太の事、ちゃんと見張るのだ。貴様はしばらく人間界で過ごせ……」

 


 その言葉を残し―――サタンは上半身から空気に溶けて、やがて消え去った……。



――――――――――――――――――――――――――


「お……! おぉ……?」

 

 気づけば、俺は元の自分の部屋に立っていた。

 戻った俺を見て、ベルクとファウストがそわそわと、お互いの視線を合わせている。


 なんか、高価な壺だとかを壊して怒られる寸前の子供みたいだ。


 そんな二人に。

 俺は一喝した。


「あのさぁぁぁぁ!!! 問いただしたい事がいっぱいあるんだけど!」


 俺の言葉にファウストが(ちょっと泣きそうな顔しとる)、ビクッと体を震わせた。



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