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半年後に死ぬらしい俺の家に、ポンコツ悪魔が営業に来た  作者: 友利色良


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19/20

心太、加護を知る


 しかし相手は神の眷属。

 倒せるのかな。

 と考えてたら。


―――カラン。


「ん?」


 部屋のどこかで

 音が鳴った。


「……鈴?」


 室内の様子が変わった。

 九尾弧が醸し出していた甘ったるかった匂いが、すっと引いた。


 気づけば。

 俺を包んでいる光があった。

 優しく頼もしい光だ。

 なんだか懐かしい気がするのは……気のせいか?

 

 九尾弧も気づいたらしく、ぴたりと動きを止めた。

 そして。


「……ほう?」


 この部屋に来て初めて。

 ほんの少し、警戒した顔をした。


―――カラン。


 また鈴の音色。

 それが俺のすぐ近くから鳴った。

 そして今度は。


 カツ、カツ、とフローリングに音が響く。

 木を軽く叩いた音に聞こえた。

 

 なんだろう。この音。

 

 記憶もあいまいな子供の頃によく聞いたような……。

 あぁ、そうか。

 この音。

 下駄の足音だ。

 それを思い出したのは、その音の持ち主が俺の隣に凛とした姿勢で立ったからだ。

 

 束ねた髪。目力めじからの強い視線。

 ピンと伸びた姿勢。

 それに白地に真っ赤な椿の刺繍が入った着物。

 

 やべぇ。

 なんでこの人がいるんだ。

 そこにいたのは。

 俺をかわいがってくれた……。


「婆ちゃん……!?」


「……出てこぬのではなかったか?」


 ファウストが婆ちゃんにそう言う。

 まさか、知り合いなのか?


 見ればベルクも珍しく、言葉を失っているようだ。

 眉間にシワを寄せたまま、俺の婆ちゃんを凝視している。


「……心太」


 やけに、懐かしい声だった。


「本当に……マジで……ばあちゃん?」


 口から、勝手に出た。


 婆ちゃんは少しだけ笑った。


「遅くなって悪かったねぇ……。助けに出たよ」


 九尾が目を細める。


「……面白い。人の身で、“結界”を張るか」


 祖母は、ふぅと息を吐いた。


「やれやれ……狐ごときが、うちの孫に何してくれてんだい」


 空気が一段、重くなる。


(ってか……うちの婆ちゃん何者!?)


 ベルクが小声で言う。


「……守護者……いえ、“系譜型の加護持ち”……」


 ファウストが続ける。


「血筋だ……」


 婆ちゃんが、俺の胸を見た。


「……なんだいこりゃ。ひどい縁だねぇ」


 九尾が笑う。


「我が与えたものじゃ。全部……な」


「……そうかい」


 祖母が、懐から古びた糸切りばさみを取り出した。


 それでチョキッと空を切る。

 すると―――。

 俺の周囲に、

 うっすらと見えた。


 無数の“糸”。


 赤。


 黒。


 白。


 人。


 悪魔。


 何か分からないもの。


 全部が俺へと繋がっていた。

 それを婆ちゃんが切った。


「うわっ……なんだこれ……」


「縁だよ」


 チョキ。


 一つ切る。


 外から声。


「……あれ?」


 チョキ。


「好き……じゃ……?」


 チョキ。


「契約を……ん……?」


 どんどん、


 静かになっていく。


 九尾がじっと見ている。


「……ほう。切るか」


「当たり前だろ。過ぎた縁は毒だ」


 フフフ、と九尾が笑う。


「全部は切れぬぞ?」


「もちろんさ。全部は切らない。いらない縁だけね」


―――パチン。


「必要な分だけ残す」


 最後の一本を切る。


 ―――そして、静寂。


 外の気配が、


 完全に消えた。


「……えと、終わった?」


 婆ちゃんがが頷く。


「応急処置だよ。しばらくは大丈夫」


「しばらくって何!?」


 九尾が俺と婆ちゃんを見て、ふっと笑った。


「気に入った……。人のくせに、面白い」


「さぁ、帰んな。瑞獣よ……」


「……また来る」


「もう、来るな」


 婆ちゃんが言うと、嫌な笑い顔を残して九尾は、空気に溶けていく。


 そして、スゥと消えた。


 部屋がシンと静まり返る。


 俺は婆ちゃんを見る。


「……ねぇ、ばあちゃん何者?」


 祖母は肩をすくめる。


「ただの年寄りだよ」


「嘘をつけ」


 即座にファウストがツッコむ。


「うるさいねぇ悪魔。今、いいとこだろ」


 初めて見た。


 ファウストが「ぬ……」なんて言ってちょっと黙った。


 婆ちゃんが俺の頭に手を置く。


「心太、無茶すんじゃないよ」


「いやぁ……俺はしてないつもりなんだけど……ねぇ……」


「巻き込まれてる顔してる」


「それはその通りだよ? 婆ちゃん俺のそばにいたの?」


「うん。いたよ」


「そうなんだ……全っ然気づかなかった……」


 俺が肩をすくめると、婆ちゃんはまた少しだけ笑った。


「ずっと……繋がってるからね。ちゃんと見てるよ、心太」


「うん……うん?」


 婆ちゃんは一言、そう言って消えた。


「はぁぁ……」


 俺はソファに倒れ込む。


「……ファウスト俺の婆ちゃんと知り合いなんだな」


「まぁ……な……」


「そろそろ教えてくれていいだろ? ファウスト、俺の事もずいぶん前から知ってるんだろ?」


「ぬ……。いや……」


「ファウスト様。もう誤魔化す事は出来ないようですよ」


「……ファウストが来た時から思ってたんだよ。俺みたいな普通の人間に、どうしてファウストみたいな元! 上位悪魔が来くるのか……」


「”元”を強く言うな……」


「それにこの間の魔力が見える騒動の時、ファウストと黒煙が繋がってるのも見えた。なんか絶対に理由があるんだろ?」


「……見たか。そうかならば仕方ない。が、心太よ」


「ん?」


「……事実を知ってだ。その……」


 珍しいな。なんか気持ち悪くファウストがモジモジしてる。


「なんだよ……。似合わないぞ?」


「……怒らぬと約束しろ」


「……何。俺になんかしたの?」


「何も聞かずに約束するなら……教える」


「……分かったよ。怒らない」


「……我を嫌ったりも……せぬか?」


「なんだよ! くどいぞ! しないよ」


「……よし。分かった。では……」


 言ってファウストは俺に近づいて。


「ちょ……」


「自身の目で見てくるのだ」


 俺の額に手を当てる。

 すると。


「なんだここ……」


 俺はどこかの……家の中? に飛ばされた。

 焼けている匂いがする。

 炎がいたるところに……。


 これは……火災現場か?





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