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半年後に死ぬらしい俺の家に、ポンコツ悪魔が営業に来た  作者: 友利色良


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16/20

悪魔、キャンプをするーーー後編

ご覧くださりありがとうございます。タイトルを変更しました。


 焚き火がパチパチと音を立てて燃えている。

 俺は、さっきまで食っていた肉を見下ろしていた。


「じゃあここ魔界なのか?」


 ファウストは平然と肉をかじる。


「分からん」


「は?」


「適当にイメージした山にテレポートした」


「……だってコイツ、魔界の猪だって言っただろ?」


魔獣猪コイツは案外どこにでもいる」


「いねーよ。見た事ねーよ」


「魔界と気配の相違点を確認しました。空気中に魔気が含まれていません」


「……ではやはり、魔界ではないな」


「……ねぇ、どこに連れてきたの?」


「それより心太様。お体に異変は?」


 ベルクはノートを取り出しながら言う。


「……特に何もないけど。何で?」


「非常に興味深い。人間が魔獣を食べたらどうなるのか? それが知りたいのです」


 ベルクがチラチラと見てくる。

 やめろ。

 その視線だけで体調悪くなるわ。


「やめてベルク。なんかお腹痛くなってきた気がする……」


(それにしても……)


 森は静かだった。

 風が木の葉を揺らす音だけがする。

 普通の山となんら変わりない。

 これだけなら普通のキャンプ。


 ……だったのだろう。


「魔気では無い……。だが、その代わりに奇妙な空気だ。これは……もしやここは……」


 ファウストが周囲を見渡す。

 少し警戒を強めているらしい。


 ふと、森の奥から、ゴォォォ……と、低い音が聞こえた。


「……今の何?」


 ベルクが耳を澄ます。


「風ではありません」


 ファウストも眉をひそめた。


「うむ。風でも魔法でもない……」


 次の瞬間。森の空気がピリッと張り詰めた。

 焚き火の炎が揺れる。

 そして。暗い森の奥から、白い影が現れた。

 それはゆっくりと近づいてきた。

 月明かりの下に姿が現れる。

 毛並みは白く、淡く光っている。

 尾が複数に分かれている。


 それは、巨大な狐の姿をしていた。


(ウソ……尾が九本ある……。この狐さまって……)


 目が、こちらを見ていた。

 

 そして静かに、しかしはっきりとした声が響いた。


「……汝ら、悪魔と人間か」


 俺は固まった。


「しゃべった」


 ベルクは落ち着いている。


「高度な……瑞獣。九尾弧きゅうびこですね」


 ファウストが腕を組む。


「なるほど……ここは神域か」


 俺は振り向く。


「……しん……いき?」


 ファウストが答える。


「神の領域。そのいただきの付近だな」


「……」


「……」


「……」


「すみません。ぼきゅたちかえります」


 白い獣――九尾弧がゆっくり近づいてくる。

 お、おこらせちゃったのだろうか?


「貴様ら」


 さらに一歩、近づく。

 ふわっふわのもっふもふの毛並みが美しい……ちょっと触りたいな。


「ここで何をしている」


 俺は正直に言った。


「きゃ……キャンプです」


 沈黙。


 山の主が焚き火を見る、肉を見る、串を見る。

 焼けてさばかれている魔界猪を見る。


 そして言った。


「ここは神域だ。狩猟は禁止されている」


 俺はゆっくりファウストを見る。

 ファウストは肉を食べている。

 ……よく食えるなコイツ。

 仕方ない、取り繕うか。俺も共犯だし。


「申し訳ありませんでした。何もわからず……迷い込みました」


 言った俺をジッと見つめてくる九尾弧。

 その視線だけで食い殺されそうだ。


「……神域で火を焚き……獣を狩り……食す。いい度胸をしているな」


「神域とは知らなかったからな」


―――モグモグ……モキュモキュ


 ファウストが肉を咀嚼している。

 その音がやけに響く。


「……とりあえず今は食うのやめろ」


 やっべ〜。

 ファウストの態度で、空気がピリピリしてきた、九尾弧の尾が淡く光り始めた。


「ここでの殺生……本来なら罰する」


 俺は焦る。


「すみませんでした!!」


 ファウストが言う。


「肉は美味かった」


「まず謝ろうか!? ファウスト」


 ベルクが観察している。


「非常に神性が強い存在です」


 九尾弧がファウストを見る。


「……汝、悪魔」


 ファウストは肩をすくめる。


「ん?」


 山の主はしばらく黙り、そして言った。


「ならば試す」


「試す?」


 次の瞬間。


 山の空気が変わった。


 突然。


 森の奥から


―――ドドドドド!!


 大量の獣の気配。


 さっきの三つ目猪が十匹、現れた。


「獣の軍勢!?」


 九尾弧が言う。


「狩れ。出来なければ……」


 尾が光る。


「神罰だ」


 九尾弧は目を黄金色に光らせた。


「フン……」


 ファウストが立ち上がる。

 左右に首を振って鳴らすと。


「面白い」


 両手を広げ、影を目一杯に伸ばした。闇が森を覆う。


(さっきの技か……)


 あれ?

 なんか猪の内……その一頭が。

 俺の方に……。

 来てる?


 いや、こっち来てる!?


「いやぁぁぁぁ!! 来ないでこのケダモノ!!!」


 振り返って全力で走りだした!

 こんな場所で死んだら!

 神隠しで蒸発! 所在不明!

 んでもって、俺のプライバシーの全てが明るみに出る!


 ならん! それだけは断じて!


 そう全力で突っ走っていると。

 俺は背中越しにドス! と鳴り響く音を聞いた。


(なんだ?)


 また振り向くと。

 猪の鼻っ柱を、鷲掴みにしているファウストがいた。


「獣め……相手は我だ……」


 月明かりの元。

 猪を掴んだファウストが、ニィと獰猛な笑みを見せると。


 刹那、ドン!! と猪が爆ぜた。

 巨体が木々に叩きつけられる。

 猪を掴んだままファウストが、爆裂魔法をぶっ放したのだった。

 さらにファウストの背中から、数体の幻霊ファントムが現れた。

 そのファウストの幻霊に。

 猪たちが猛進する。


―――ドドドドド!!


 ファウストが笑う。


「まとめて来い!!」


―――ヒャホホホホホ!

 

 笑う幻霊が、猪に目掛けて飛びつく。


 ズドン!ズドン!


 一頭、二頭、巨体が紙切れのように宙に浮く。


(あの幻霊に触れると、爆裂するのか)

 

―――パキッ。


 今度はベルクが指を鳴らして空間を歪めた。

 木、土、空気が徐々に凍りついていく。

 凍結魔法か。


 周囲を絶対零度の銀世界へと塗り替えていく。


「プギィィィ!」


 魔獣猪の断末魔が響いた。


「終わりました……か?」


 ベルクがファウストに確認する。


「うむ。終わりだ」


 ベルクは三体の猪を凍らせていた。

 猪達は全滅した……。

 

 俺は焚き火の横まで戻って叫んだ。


「こんなのキャンプじゃねぇ!!」


―――それは一瞬でした。


 森はまた静かになった。

 地面には猪。


 ……その骸が十匹。


 ファウストが満足そうに言う。


「終わりだ」


 九尾弧はしばらく見ていた。

 そして静かに言った。


「……なるほど」


 九尾弧がさらに。


「よかろう、今夜だけ、ここでのキャンプを許す」


 俺はへたり込んだ。


「あ、ありやとございます……」


 ファウストは肉を拾う。


「では続きを焼くか」


「試練のおかげで食料が増えました」


 ちょっとベルクが幸せそうにしている。

 俺は空を見上げた。


「なんでキャンプで神の試験受けてんだ」


 九尾弧が帰ろうとした時だった。

 ベルクが質問する。


「ちなみにこの猪、全部食べていいんですか?」


 その問いかけに九尾弧は振り返る。


「……」


 ファウストが言う。


「もうすでに焼いているが」


 山の主はしばらく沈黙し、やがて小さくため息をついた。


「……好きにしろ」


 俺は思った。


 この悪魔との共同生活、外に出ても全然平和じゃない。


 そう思いながらも。

 肉は腹一杯、食っちゃった。


 好きにしろって許可されて安心したからね。


―――――――――――――――――――――――


 そして、帰宅。

 キャンプに行ってしばらく頂で過ごしたはずなのに、帰ってきたら時刻はまだ七時半だった。


 神域だと時間の経過が現世と異なるらしい。

 

 そして、翌朝。


 トイレでお便便をした。

 きんっぴかの黄金色だった。

 神域の油脂か?

 

 ……流して大丈夫だよなコレ。


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