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半年後に死ぬらしい俺の家に、ポンコツ悪魔が営業に来た  作者: 友利色良


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13/20

悪魔、魔界のお土産


 休みが明けて月曜日の夜。

 仕事を終えて帰宅。

 今日は奇跡的に残業も無く、まだ六時過ぎだ。

 家に帰ってくつろげる時間が少しでも長くなるのは嬉しい。料理をする時間も充分だ。

 さて、今日はファウストと何を作ろうか、と激安スーパーのギガマート・アライバルに立ち寄る。店のドアをくぐると。

 

 お……。


 もう弁当が割引になってる……。

 幕の内、焼き肉、のり弁にわがまま弁当。唐揚げに丼物も次々と売れている。

 あ、おにぎりもある。拳より大きい一撃必殺なおにぎりだ。カキを煮た物とウナギかぁ。まず見た目が贅沢だよね。この視覚効果はヤバ過ぎる。

 うん、もう今日はこれでいいか。

 ベルクにも買ってっておすそ分けできるしな……。


 いや……! いかん、いかん。今日はちゃんと作るんだ。

 

 ……でも、俺が作るより確実にうまいよな。うん絶対。

 それにこれだけの食材を使って作ろうものなら、どうしてもコスパが上がるしなぁ。

 頑張って三品作る! なんて決めて、カキを煮て、天ぷら、唐揚げを作る、なんて絶対できないぜ。いずれかを一品作っただけでそこで挫折するのは目に見えている。


 うんいいや……。俺も買って帰ろ。これは英断というやつだ。決して……作るのをなまけたいわけじゃない……。

 ―――って、なんだろうね? 

 別に誰もとがめやしないのに楽な方へ行こうとすると、どういうわけか罪悪感を抱えちまうのは。

 こういうのって俺だけじゃないはずだ。

 日本人の気質なんだろうか。

 または、ちっちゃいプライドか。

 ファウストには焼き肉弁当と拳骨げんこつおにぎり。おにぎりの具材は天ぷら。

 ベルクに唐揚げ弁当とウナギのおにぎり。

 それと俺はのり弁当とカキのおにぎりを。

 それぞれ買って、帰宅。

 

「ただいま」


 あれ、返事がない。いつもなら仰々しく「戻ったか」なんて言うの………。


「ギャハハハ! 自由だ! 自由を得た!」


 耳慣れない笑い声。

 ファウストとベルクじゃない。ちょっと汚い声だ。


 靴を脱ぎ、部屋へ入ると、その瞬間。

 不気味な光景がそこにあった。

 まず目に飛びこんだのは人参。


 おそらくは人参だと思う。

 ハッキリ言い切れないのは俺が知っている人参と少し違うからだ。


 にんじんが口を開いて笑っていた。


「ギャッハハハハハ!!」


 床をコロコロと転がりながら、笑う一本の人参。

 そのボディに口が出来ているんだ。


「やっぱり土から出るんじゃなかった……。この世界は腐ってる……」


「ライト………まぶしい……頭痛がする……」


「うぅ……吐き気が……止まらない……デンプンしか……出ねぇけど……」


 今度は部屋の隅からブツクサと声がする。

 声がするその方を見ると。

 三個の男爵いもがいた。

 そいつらが身を寄せ合ってブツクサと言っていた。

 いかにも引きこもりだ。


「フンフフーン♪」


 キッチンのシンクにも何かいる。

 白い脹脛ふくらはぎぐらいの長さと太さ。


 そこにいるのは、スポンジで自分の体を洗っている大根だった、

 コイツは腕を生やしている。

 そしてその腕でダスターを使って体を洗っているんだ。


 えぇと……何これ?

 だけど、まぁ……。


「ちょうどよかった」


 俺は指定のゴミ袋を取り出す。


「明日燃えるゴミの日だ」


「待て待て待て待て!!」


 俺が何をしようとしているのかを理解したのか、人参が制止してくる。そして、大根も。


「ちょっと待って!!」


 と、ダスターを振り回す。

 ただその二本の野菜と違うリアクションの奴らがいた。

 男爵いもだ。


「いいよ、どうせ捨てられるんだ……」


「そうだ……外の世界に期待なんてしてないし……」


「ちょうど……灰になりたい……って思ってたし……」


 そんな野菜の前で。腕を組んでいる悪魔ファウストがいた。


「ワケを聞かんのか?」


 ファウストが言う。


「聞く必要ある?」


「ある」


 ファウストの足元でベルクがメモを取っている。

 フローリングの床を下敷き代わりに、せっせとレポート用紙になにやら記入していた。


「非常に興味深い状況です。私が住んでいた地域ではこんな事は起きませんでした」


「なんでこんな事になってんの? コイツら何? 魔界の野菜?」


 するとファウストが。


「野菜自体は心太の冷蔵庫に入っていた物だ。いや、実はな。今日、少し魔界に戻った」


魔界じっかに?」


「あぁ。定期的に持ち物の確認をしておかねば盗まれたりするからな」


「治安悪……」


「魔界だぞ? いいわけがない」


「それで?」


「そこである地域を歩いた。すっかりと忘れてしまっていたのだ。その地域は、ある特殊な土が広がっている地域でな」


「特殊な土?」


「あぁ、特土と呼んでいる。ただ、土と性質と見た目が似ているからそう呼ばれているだけでな。その中身は極小の寄生虫の集合体なのだ」


「……寄生虫が集まり過ぎて土に見えるって事? うぇぇ……」


「そうなのだ。その寄生虫は自らの眷属となる………まぁ、土と相性の良いもの探して宿主とする」


「宿主……」


「つまり……」


 ファウストが野菜を見る。


「その相性のいい生物に寄生して、自らの姿を変えて脳、神経、骨、筋肉、さらに活動に必要な栄養素となり、そして四肢と繋がりをもつ……。そして知性を、自我を与える。この場合、特に土と相性の良い物に……」


「土と相性のいい……」


「うむ」


「で、野菜か」


「野菜だ」


 俺がにんじんを見ると、これみよがしに胸を張る。


「知性を与えられました!!」


「生きる意味が分からない……」


「体洗うと気持ちいい♪」


「よし、分かったところで捨てる」


「だから待って!!」


 人参が俺の足元まで転がってきてすがりつく。

 えぇい、うっとおしい……。


「待て」


 ファウストが俺を制止する。


「何」


「その野菜どもはな」


「うん」


「普通に処理できぬ」


「処理できない?」


「あぁ、まず切ると増える」


「増殖すんの?」


 話を聞いたベルクがおもむろに立ち上がる。


「確認します」


 そして包丁を手に。

 ゆら〜りと人参へと近づく。

 そのベルクに人参が。


「やめろ!! お前怖ぇよ!!」


 制止を呼びかけるが、しかし。

 仕事の出来るベルクは容赦なく、包丁を振り下ろした。

 ちゃんと床を傷つけずに。


 人参は上半身(?)と下半身に分かれた。


「いてえ!!」


「おぉ! 生まれたぜ!!」


 サイズは変わらない。

 切られたままだ。

 だが、それぞれが意識を持ちしゃべり出した。


「増えました」


 顔色ひとつ変えずにベルクが振り向いた。


「うん、増えたな……」


「だから言ったであろう。それと、燃やしてもダメだ。その寄生虫は火に耐性がある。そしてまた増殖する」


「ダメじゃん」


「では、食べるとどうなります?」


「それももちろん体内で繁殖」


「ダメじゃん」


「では茹でればどうですか?」


「巨大化する。そして凶暴になる」


「巨大化……ですか」


「あぁ」


「へぇ……ダメじゃん」


 俺は沈黙した。

 そして。


「もういいや、腹減った。考えるのは明日にして、だ」


「うん?」


「冷蔵庫の野菜室に閉じ込めたら問題ないだろ? しっかり閉めてれば」


「うむ、まぁ、そうだな」


 俺がそう言うと、人参が。


「扱いが雑!!」と抗議してきた。


「どうせ終わるんだ……」


「せっかく洗ったのに〜♪ 寒いの苦手〜♪」


 大根がうるさく歌うが無視。


 バタン!

 

 ひと抱にして放り込んだ。するとベルクが。


「結論」


 ペンを置く。


「何、ベルク」


「この野菜」


「うん」


『煮ても焼いても食えない』


「……うん、ベルク。もうちょっと頑張って欲しい」


「ではメシはどうする?」


「こんな事もあろうか、と弁当を買ってきたよ」


「……予測したのか。素晴らしいぞ」


 いや、できるかよ、こんな事。

   

 二人に買った弁当を渡す。

 そして、今日をねぎらう。


「お疲れ様。食べようぜ」


「あぁ」


「いただきます」


 ベルクは丁寧に頭を下げてくれた。

 そして、皆んなの分を温める電子レンジ係を率先してくれて。


 変なことが起きたが、六畳一間に温もりがあった。



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