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F1 2026 新規定解説 車体編

F1 2026 レギュレーション変更点まとめ&考察


 さて、いよいよ明日からF1 2026年シーズンの新車発表が、各チームで行われる。

 2026年のF1では、大規模なレギュレーション変更が行われる。

 変更点が多いので、車体とパワーユニット、そして作者が感じた疑問について、それぞれ解説して行こうと思う。

 まずはシャーシからだ。


◎車体スペック

(2025年)

全幅 2000mm

全長 5600mm

車重 800kg

ホイールベース 3600mm

アンダーフロア構成 トンネル型グラウンドエフェクト構造


(2026年)

全幅 1900mm(100mm縮小)

全長 5400mm(300mm縮小)

車重 768kg(約30kgの軽量化)

ホイールベース 3400mm(200mm縮小)

アンダーフロア構成 フラットボトム構造+ディフューザー

(ダウンフォースの大幅減少が見込まれる。)


大まかに以下の話について、触れていく。

・車体サイズ縮小

・30kgの軽量化

・インウォシュから、アウトウォッシュへ

・アンダーフロアの形状変化

・レーキ角コントロールの復活


車体サイズ縮小

 近年のF1は車体サイズの大きさ故に、コース幅を使い切ってしまい、オーバーテイクが困難だという声が多く出ている。特に、モナコなどのような狭いコースではそれが顕著になっている。

 今回のレギュレーション改定では、車体サイズを全幅−100mm、全長-200mm縮小し、同時に軽量化も行われる。それにより、小柄かつ軽快な車を作り出し、オーバーテイク増加を狙う事が目的である。

 ホイールベースの縮小は、縮小した車幅(トレッド幅)に対してバランスを合わせる為である。あの長いホイールベース(去年までで3600mm!)が、ようやく縮まる事は願ったりだ。

 しかし、トレッド幅も同時に縮まり、ホイールベースウェイトレシオ(これが重要)も現状をほぼ維持する事になる。

 よって、ダウンフォース抜きで考えた素の挙動は、去年までとあまり変わらないと推察している。


30kgの軽量化

 車重は、去年までと比べて30kgの軽量化が行われるが、これはタイヤのサイズダウンと車体の小型化による物と思われる。(2017年にタイヤサイズが大型化した時が、ちょうど約30kgの重量増となった。)

 建前としては、前述した通り、小柄かつ軽快な車でレースを行うのが狙いという事だ。

 しかしそれでも、車重は770kgと、フォーミュラカーとしては重たい。自然吸気エンジン&ノンハイブリッドだった時代(3.0L V10エンジンや、2.4L V8エンジンの時代)が、車重600kgだった事を考えると、あまり軽くなったとは思えない。

 正直な所、現実論で言っても、750kgまでは軽くして欲しい所だった。

 厳格な安全規定、(恐らくだが)バラストの搭載量を減らしたくない、重たいパワーユニットなどの事情が関係して、この重量に収まったのだと思われる。

 車体サイズや重量に関しては、言いたい事が多くあるので、また別の機会に言おうと思う。


アウトウォッシュから、インウォッシュへ

 個人的には、あまり触れたくない(触れてもしょうがないと思っている)事なのだが、ピックアップする記事が多く出ている、或いは今後出てくると思われるので、一応触れておく。

 先に説明すると、アウトウォッシュは空気をマシンの外側に逃す空力コンセプト、インウォシュは空気をマシンの内側に取り込むコンセプトの事である。

 去年までは、フロントウイングの形状や、アンダーフロア前端のフィンを利用して、空気を外に逃す“アウトウォッシュ・コンセプト”が行われていた。

 最もF1は、今の大きなフロントウイングが採用されてからは、アウトウォッシュ・コンセプトが主流であった。

 しかし来年からは、フロントウイングやアンダーフロア前端の形は、空気を内側に取り込む“インウォッシュ・コンセプト”へと切り替わる。

 フロントウイングは、去年まで車幅一杯にウイングが広がっていた。来年は、左右のタイヤ間の中央部のみがウイングとして機能し、外側両端は整流用のフィンとして機能する。これによって、まず車体前面の空気を内側に取り込み、外側の整流フィンがフロントタイヤ周りの空気の流れを整える形になる。

 そしてアンダーフロア前端には、外に大きく広がった整流板を設けられる。フロントタイヤ外側の近くにまで広がった整流板は、空気をアンダーフロアに向けて、マシンの内側に取り込みのが狙いだろう。

 これにより、マシンの周りの空気の流れは、自らのマシンにその空気を取り込む形になる。外に空気を逃す事が無くなるので、自分の横や後方を走るマシンへの乱気流ダーティエアが無くなり、高速域でもオーバーテイクや接近戦を仕掛けやすくするのが狙いである。

 最も、このレギュレーションが上記の思惑に働けば、の話だが……。

 マシンの外観は、2000年代前半の、軽快で俊敏な走りを見せたV10時代のマシンに似ている……というより、明らかに似せてきていると思っている。


アクティブエアロ・システム

 今回のレギュレーションで、目玉の機能として注目されているのが、前後ウイングに搭載された可変ウイング、“アクティブエアロ・システム”である。

 これは、去年まで採用された、直線のオーバーテイク用の可変ウイング“DRS”を、常時稼働出来るようにした物だ。

 そもそもとして、F1マシンのフロントウイングとリアウイングとは、マシンを地面に押し付けるダウンフォースを生み出し、コーナリングスピードを上げる為の代物である。しかし、ダウンフォース増加によるコーナリングスピード上昇は、直線での空気抵抗を増やし、直線での最高速度が伸びなくなるというデメリットに繋がる。

 しかし常時稼働のアクティブエアロ搭載によって、コーナーではウイングを立ててダウンフォースを多く獲得し、直線ではウイングを寝かせて空気抵抗を減らす、という事が可能になる訳だ。


空気抵抗削減の目的

 マシンの小型化や、アクティブエアロ搭載、そして後術するレーキ角コントロールなどから察すると思うが、来年のマシンは直線での空気抵抗が大幅に減る傾向にある。

 そもそもとして、オーバーテイク増加の為に小柄軽快なマシンを作らせる規定……というのは、恐らく建前だと、作者は邪推する。

 パワーユニット編の開発で触れるが、今回のレギュレーション改訂で、エンジンとモーターの出力比率が、9:1から6:4へと大きく変わる。

 つまり、エンジン出力が大きく減り、モーター出力が大きく増える。

 これにより、2026年のPUでは直線でモーターのバッテリー切れが起こり、スピードが伸びなくなる傾向になる。(バッテリーのエネルギーは、すぐに底を付くからである。)

 よって、車幅の縮小と共に、アクティブエアロを組み合わせる事で、直線での空気抵抗を減らして直線スピードを補う事こそが、これらの施策の本当の目的と思われる。

 

アンダーフロア構造の変化

 あまり触れられている話ではないが、来年のマシンは従来のグラウンドエフェクト構造(別名ウイングカー構造。アンダーフロアにトンネル上の大型ディフューザーを設ける構造)から、旧来のフラットボトム構造(文字通り平らなアンダーフロア構造)へと戻る事になっている。


ダウンフォースの大幅減少

 グラウンドエフェクト構造の方が、大きなディフューザーとの組み合わせで、より大きなダウンフォースを確実に獲得できた。

 しかし、来年からはフラットボトム構造に戻り、リアディフューザーも小型化されること。

 しかも、マシンの小型化の影響により、アンダーフロア自体の大きさも、幅と長さ共に縮小される事になる。ダウンフォースを獲得できる面積が、大きく減るのだ。

 ダウンフォースの大幅な減少は、避け難いと思われる。これに対する対策を、各チームがどのように練るのかが注目点である。今からそれについて、現在予想出来る範疇で説明していく。


グラウンドエフェクトの再現方法

 上述したフラットボトム化への回帰により、グラウンドエフェクト構造特有の、物理的なエアロ・トンネルが廃止される。

 その代わりに、フロア両端にはスリットが復活する模様だ。フラットボトム最終形態だった、2021年までのトレンドだ。フロア両端にスリットを刻む事で、空気の渦による壁を作り、フロア内の負圧を確保するのが狙いだ。これによりフラットボトム構造でも、グラウンドエフェクト構造に近い効果を得られるのだ。


レーキ角コントロールの復活

 そして最も注目すべきなのが、ハイレーキ・コンセプト、そしてレーキ角コントロールの復活だ。レーキ角とは車体の前傾姿勢の角度の事を指す。レーキ角コントロールは、リアサスペンションに車高調整の機構を取り入れる事で、直線とコーナーでレーキ角が変動する機構だ。

 コーナーではリアの車高が高く設定されているので、レーキ角は高くなる(これがハイレーキ)。小型化されたリアディフューザーの高さを上がり、擬似的に大きなディフューザーを作り出せる。ウイングも前面面積が大きくなって空気の当たる量が増え、ダウンフォースをより大きく獲得できる。

 直線では、リアウイングのダウンフォースでリアの車高は下がり、レーキ角は低くなる(レーキ角は0度に近くなるので、ゼロレーキとも言う)。ディフューザーの高さが減り、ウイングの前面面積も減る事で、ダウンフォースと空気抵抗が減り、直線スピードをより高くする事ができる。

 要するにレーキ角コントロールとは、マシン全体を可変ウイングのように動かす事で、意図的にダウンフォースと空気抵抗を増減させられるようになる、という発想な訳だ。

 これは、アンダーフロアが平らで、フロアの密閉は空気の壁だけで行える、フラットボトムカーならではのアイデアだ。車高を常に一定にかつ平らに保たなくてはならない、去年でのグラウンドエフェクトカーでは出来ない手法である。


基本的な考えは、17年規定に戻る事に

 よって空力の考え方は、フラットボトム構造最終形態となった時期の、2017〜2021年までのレギュレーションの発想の復活となるはずだ。

 ハイレーキ・コンセプトに、直線とコーナーで変動するレーキ角コントロール、アンダーフロアに刻まれたスリットと言い、共通点は非常に多い。

 マシンデザインを予想したい人、またはエアロデザインを深掘りしたい人は、ぜひそこをご覧になって欲しい。


心配なのは、ダーティエア

 上記のアンダーフロアの空気の壁(エア・フェンスと仮称)を行うには、空気を外に逃すアウトウォッシュ・コンセプトが有用となる。乱流が、マシンの空気の流れを阻害すれば、アンダーフロアの密閉に支障をきたし、ダウンフォースが減ってしまうからだ。

 しかしこれは、真横や後方を走るマシンに対しての乱気流ダーティエアを多く生み出す形状である。

 新レギュレーションでは、アンダーフロア前部に整流板が設けられるが、これは形状次第でアウトウォッシュを生み出すパーツにもなり得る。というより、多くのチームがそのような使い方を望むはずだ。何故なら、このアンダーフロア前端という位置自体が、空気を1番外に追いやりたい場所だからだ。

 また、前述したエアフェンスを形作る為のスリットもまた、強い気流の渦を作り出すので、横や後方を走るマシンにとってのダーティエアとなり得るだろう。

 敢えてインウォシュ・コンセプトについて深掘りしたくないと言ったは、この為である。各チームのマシン・デザイナーの、形状の工夫次第では、新レギュレーションねもアウトウォッシュ・コンセプトは全然通用してしまうからだ。むしろ逆に、協会のFIAがインウォシュ生成の為に用意したはずのエアロパーツを、アウトウォッシュ生成の為に利用しかねないと考えるのが、当然なのである。


何故グラウンドエフェクト構造を辞めたのか?

 元々、去年までグラウンドエフェクト構造を使ったのは、フラットボトム構造を追求する上で形作られた、ダーティエア有りきの空力開発に終止符を打つのが目的だったはず。

 グラウンドエフェクト構造は、車体下面の強力な負圧で大きなダウンフォースを産み出す代償として、地面に吸い寄せられたトンネルのフェンスが地面に干渉した際に押し潰された空気によって浮き上がり、また地面に吸い付ける状態を繰り返す“ポーポイズ現象”に悩まされるという欠点があった。

 しかし、これは技術の熟成で徐々に改善した。もっと言うなら、電子制御のアクティブサスペンションを導入すれば、より改善出来る見込みもあった筈だ。

 だがチームは、アクティブサスペンション導入による開発領域の拡大とコスト増加を嫌ってか、導入の見込みは立っていない。

 ダウンフォース現象によるコーナリングスピード減少も狙いかもしれないが、この判断は正直疑問に思う。


*軽いネタばらし。アウディのシェイクダウン

 作者がこの記事を書いている途中、マシン発表を先んじて、アウディ(旧ザウバー)がマシンのシェイクダウンを行った。

 作者が予想していた通り、やはりハイレーキ・コンセプトは復活しており、サイドポッドの作り方も去年までの流れを継承するものと思われる。

 ネット上の情報では、直線でリアの車高が落ちている事から、恐らくレーキ角コントロールも組み込んでいると考えられる。

 ただ、ここ最近の新車発表では、完全な形で車を用意せず、テストで本線仕様のマシンを持ってくるのがトレンドになっているので、まだ何とも言えない状態となっている。過去には、メルセデスがゼロ・サイドポッドコンセプトを遅らせて持ち込んだり、レッドブルに至ってはカラーリング発表だけで済ませるなんていう事もやったりするのだ。それだけ、空力コンセプトを他チームに盗み取られないように策を敷いてるという訳だ。


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