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重たくなったF1マシン、そして軽さを取り戻すには?

 近年のF1では、マシンの重量増が酷く嘆く声が多い。

 実際、20年前のF1は600kgで作れたのに対し、現行のF1ではその重量は800kgにまで達している。この20年の間に、200kgも重量が増加したのだ。

 流石にこれをまずいと思ったのか、F1は来年の2026年に向けて、車体の軽量化を促すレギュレーションを発表した。

 しかしその重量は768kg。たったの30kgしか軽くなっていない。

 一体、何故F1マシンはここまで重たくなってしまったのだろうか?

 そして、何故軽さを取り戻す事が出来ないのだろうか?

 今回は、その理由と、解決策について、解読していこうと思う。


 さあ、本当の解体新書の時間だ。

 

◎車体重量の遍歴

 近年のF1の中で最も軽かった、1990年代をベースに考察していこうと思う。

 因みにだが、現在のマシンの最低重量は、マシン+ドライバーの合計で計算されている。

 そして、最低重量の規則より軽くなった場合は、バラストという金属のおもりを積む事で、重量をあわせてある。

 この点で、誤解している人間が多いと思うので、要注意である。


1990年

3.5L NAエンジン

車重505kg(ドライバー含まず。)

ドライバー込みなら、575kgといった所。

エンジン重量は、150kg前後。

(参考までにコスワースDFVエンジンが、150kg程度だった。)


1993年

リアタイヤ幅が18インチから15インチへ。

(コーナリングスピード削減が理由)

車重は変わらず、505kg。

余剰重量は、10kg程度と推察。

*ここでの余剰重量とは、レギュレーションの最低重量に対して、実際の車体重量が余分に軽くなってしまった重量を指す。

規定値505kg−実測値495kg=余剰重量10kg


1994年

アイルトン・セナが、サンマリノGPで事故死。

これに伴い、後年マシンの安全規則強化と、マシンのスピード制限が、年々と強化されていくようになった。


1995年

エンジン排気量は3.0Lへ。

給油解禁による、燃料小型化。

(230L程度から、120L程度にサイズダウン。)

恐らくこれで、−20kg軽くなったと予想。

車重は、ドライバー込みで600kgに。

余剰重量は、35kg程度。(10kg+25kg)


1998年

グルーヴドタイヤへ。フロントタイヤが大型化。

余剰分は、−10kg。

*但しこの時期にかけて、エンジンの軽量化が大きく進んでいった。


2005年

3.0L V10末期。

エンジン重量は95kg前後にまで軽量化。

実は90年代以降、F1エンジンは自然吸気エンジンのみとなった事で、エンジンの軽量化追求が進んでいったのだ。

余剰分は、70kg前後。

翌年から2.4L V8となるが、エンジン重量は変わらず。


2009年

KERS搭載によって、余剰重量は30kg前後にまで減る。

しかし、バラスト削減はドライバビリティ低下を招いた。

これ以降、(この件がトラウマになったのか)バラスト重量は70kg前後をキープしていたと思われる。


2010年

給油禁止に伴う燃料タンク大型化。

(120L→240L)

KERSは一旦自主的に禁止へ。

車重は620kgへ。

余剰重量は再び70kgに。


2011年

KERS解禁。

車重は640kg。


2014年

ターボエンジン復活と共に、ハイブリッドパワーユニット搭載。

パワーユニット重量は+50kg。

但し燃料タンクは小型化されたので、バッテリーによる重量増は±0と予想。

(燃料搭載量165kg前後→100kgへ。)

車重690kg。

最終的に700kgへ。


2017年

フロントタイヤとリアタイヤが大型化。

重過ぎて鈍足になったF1に、速さと迫力を取り戻す為の措置である。

車重は725kgへ。

重量は増したが、タイヤのグリップ力と共に、フロア拡大によるダウンフォース増加で、マシンのスピードは上がった。


2018年

HARO搭載。

車重730kg。(最終的に750kgへ。)

HAROとは、ドライバーの乗るコックピット前部を守る為の、金属製のロールバーの事である。

HARO単体では7kg程度だが、その重量物が高い位置に付くので、重心位置を整える為のバラストが、後々追加されていったのだと予想。


2019年

 車体重量は750kg。

 この辺りで、ドライバーの体重は80kgと規定された。体重の軽いドライバーは、バラストを余計に積んで、80kgの重量に合わせないといけない。

 つまり、この時点でのマシンの単体重量は630kgという事になる、90年代初頭より、130kgも重たくなっているのだ。


2022年

18インチホイール搭載。

車重は800kgへ。(当初は775kg案だった。)

*因みにだが、ドライバー抜きの重量では720kg。かつてのインディカーと同等という事になる。


2026年

タイヤサイズダウン。

パワーユニット重量は、プラマイゼロ。

車重は770kgへ。

(当初の目標は750kgだった。)

この30kgの重量差は、単純にタイヤとホイールのサイズダウンによるものと推察。



◎2022年レギュレーションにおける、余剰重量

・恐らく、余剰重量は80kg前後あると推察。

・重量増による負担軽減の為、各部品が重くなってる可能性もあり。それでも70kgのバラストは乗っていると予想。

・750kgだった2021年型に対して、恐らく18インチホイール化で+25kg。

・残りの25kgの増加は、バネ下荷重増加による足回りの強度強化と、安全規則強化による重量増加と予想。(モノコックや、クラッシャブル・ストラクチャーの強度強化。)

・因みに26年型は、ホイール直径は相変わらず18インチなので、足回りはあまり軽量化できず。クラッシュ時の安全基準を落とす訳にも行かないので、モノコックも軽量化出来るはずがない。

・軽量化は、タイヤとホイールの横幅縮小でしか出来なかったということだ。


◎大量のバラストを積む理由

・理由は、98年から始まり、現在に渡って続く、フロントタイヤ依存の継続にある。

・本来なら、リアミッドシップ&リア駆動のF1マシンは、リア寄りの重量配分になる筈だ。

・しかしそれをF1は、規定重量に対して軽くし過ぎた分を利用して、大量のバラストをフロントに積み、無理矢理フロント寄りの重量配分にしているのだ。

・何故このようになったのかというと、リアタイヤのサイズ制限が行われた後に、フロントタイヤを大きくして、4本のタイヤの合計グリップ力を取り戻しにいったからだ。

・実はタイヤサイズ制限に伴い、車の車幅の制限、つまりはワイドトレッド化が出来なくなったのも、フロントタイヤ依存が進んだ理由である。

・ワイドトレッドが制限された代わりに注目されたのが、制限の無かったホイールベースだった。よって、ロングホイールベース化によってコーナリング時の安定性確保を置き換える方針が、2000年代以降のトレンドになった。

・ロングホイールベースの車は、基本的に回頭性(要はハンドリング性能)が悪くなりがちだが、フロントタイヤを大きくすれば、フロントタイヤのグリップ力だけで曲がれる車に仕立てる事ができる事が可能。

・リアタイヤのトラクションで曲がるより、フロントタイヤでステアリングだけで曲がる方が当然簡単である。これが、フロントタイヤ依存がトレンドとなり、現在でも続いている理由だと推測。

・年々重たくなる重量を受け止める為、ホイールベースも年々長くなっていった。フロントタイヤ依存から、なかなか脱却出来ない理由にも繋がっていると予想。

・報道ではバラストを積む余裕が無いと言っているが、恐らくバラスト搭載量を増やしたいが為の言い訳であると推察。

・そもそもとして、フロントタイヤ依存&ロングホイールベースコンセプトの車は、フロントバラストが無いとフロントに荷重がかからず、コーナーで曲がるきっかけを作れない車になってしまう。

・全員同じ条件でマシンを作るのだから、自分達にとって有利な戦況を作り出すのは、ある種必然である。

・この流れに逆らって、ショートホイールベースで軽い車を作ろうとしたのが、恐らくアルファロメオ。だが、トップチーム(主にレッドブル)からの要求で、開幕戦前に最低車重が増えて、彼らのマシンのメリットは無くなった。


◎F1 2026規則と、パワーユニット重量について

・軽量化を目標とした26年規則は、F1 25年の800kgから768kgとなる。

・この30kgの重量差は、タイヤとホイールのサイズダウンによるもの。

・パワーユニット重量は、25年も26年も変わらず、約150kg。エンジンの馬力削減で軽くもいなければ、ハイブリッド大型化で重くなってもいない。

・バッテリーの重量増加に関しても、燃料搭載量が減るので、こちらも重量増は実質±0である。

・要するに、マシンを30kgしか軽量化出来なかった事に対して、ハイブリッド大型化が理由というのは大嘘である。パワーユニットの重量は今まで通りなのだから、単にマシンが重たいだけである。つまり、FIAとF1チームの努力不足である。


*内訳その1 パワーユニット

2025年……エンジン単体で約130kg。MGU-K+MGU-Hで約20kg。

2026年……エンジン単体で約130kg。MGU-K+MGU用3速ギアボックスで約20kg。

(ターボチャージャーはどちらも12kgと考察。)


*内約その2 燃料搭載量とバッテリー

2025年 燃料110kg、バッテリー25kg

2026年 燃料90kg、バッテリー35kg

(理由は後述するが、バッテリーはパワーユニット重量に含ない、燃料の一部と考えるべきだ。)


◎実はパワーユニットにもバラスト載せてる?

・実はF1のパワーユニット、オイルパン下部にも20kgほどバラストを積んでいるのではと、作者は考察してある。

・前提条件として、MGUやターボチャージャーを除いた、F1 V6エンジンの単体重量は120kgとする。これは、重量95kgで作れた2.4L V8よりも、約30kg重たいのである。

・要するに、ターボ化による部品の肉厚強化もあるとは言え、V10やV8時代に95kgでエンジンを作れたF1エンジンが、(同じ技術レベルで)30kgも重量が増すのはおかしい、という話である。

・現行のホンダF1 PUを、現物或いは本で写真を見た人間なら分かると思うが、エンジンブロックなどの肉抜きによる軽量化は、今でもしっかりと行っている。

・バラストを積んでいるという根拠として、現行のエンジンはクランクセンター高さ位置がV8時代より30mmも増した上、10kg以上の重量物のターボチャージャーがVバンク内部の高い位置に収められてるから。

・低重心化を突き詰めたい(というより、V8時代以前からのマシンバランスを崩したく無い)F1チームとしては、重量が余るならバラストを積んで、重心位置を(レギュレーションが許す限り)最大限に引き下げたいはず。

・実際、F1より下位クラスマシンの、FIA F4やF3リージョナルは、オイルパン下部に20kgのバラストを積んでいる(オンラインのユーザーマニュアルから閲覧可能)。恐らくF1も同じアプローチを行なっている可能性ありと推測。

・参考までに、F1エンジンの重心位置の規則は、V8時代では165mm以上、V6ハイブリッド以降は200mm以上と決まっている(26年も継続)。

・因みにV10の頃までは、重量規制も重心位置制限も無かった。実際、3.0L V10の末期の重量は(翌年以降の)ワンランク小さい2.4L V8と同等以下の重量を既に達成し、重心位置もV8より低く出来た。


◎バッテリー重量は、PU重量に含むべきではない

・F1マシンが重たくなった理由として、大勢がハイブリッドのバッテリーのせいだと言う声があるが、作者はそうは思わない。

・理由としては、ハイブリッド化による低燃費化で、燃料搭載量が減っているからだ。

・しかも現行のマシンは、燃料タンク下部にバッテリーを積んでいるので、実質燃料タンクの一部として考えるべきだ。

*燃料搭載量とバッテリー重量の内約

・2013年 燃料165kg

・2014年 燃料100kg、バッテリー25kg

(後に燃料は110kgまで増量)

・2025年 燃料110kg、バッテリー25kg

・2026年 燃料90kg、バッテリー35kg


◎F4500レギュレーション

 作者が以前投稿した、独自のフォーミュラカー用レギュレーション案。

 それが“フォーミュラ4500”である。

 このフォーミュラ4500の目標は、軽くてハイパワーな最速マシンだが、同時に観客に見せる為の走りを目指したマシンでもある。

 近年のフォーミュラカーが年々重たくなる中、このフォーミュラ4500のレギュレーションを通じて、それに対するアンチテーゼと抜本的な解決策を打ち出してみる。

 フォーミュラ4500の詳しい内容は過去に投稿しているので、興味のある方は目を通して欲しい。


◎目標

・フロントタイヤ依存から脱却し、リアタイヤ依存へ回帰させる。これにより、バラストの大幅削減を促す。

・バラスト削減と共に、マシン全体の軽量化を進め、軽いフォーミュラカーを復活させる。

・フロントタイヤの小型化とホイールベース短縮により、90年代前半までのF1、或いはレーシングカートのように、リアタイヤのトラクションで曲がる車に仕立てる。


◎F4500の軽量化の要約

・目標車重705kg。(比較対象はF1 2025モデル)

・バラスト削減で、−50kg。

(バラスト重量70kg→20kgまで削減)

・カーボンホイール導入で、-20kg。

(ワンランク小さいタイヤサイズと同等重量になる)

・カーボンHALOによる軽量化で、−5kg。

(カーボンフレームのエアロスクリーンとする。)

・パワーユニット軽量化で、−20kg

(エンジン+MGUで150kg→130kgに。)

・重量削減分は、これでちょうど95kgになる。

・バラスト搭載量は20kg前後。

(マシン開発自由度の維持のため。)


 F1 2026モデルは、タイヤのサイズダウンで768kgとなるが、F4500はそれより約70kg軽い。

 F4500はカーボンホイールを使うので、タイヤ&ホイールの重量はF1 26年モデルと同等になる。バネ下荷重は、どちらもブレーキが大型化するので、ほぼ変わらない数値になる。フォーミュラカーとしては重めなので、足回りの部品の強化による重量増加は発生する。

 50kgの軽量化は、バラスト削減によるもの。

 20kgの軽量化は、パワーユニットによるもの。

 これでもまだ、20kg前後のバラストを積む余地がある。

 F4500ではホイールベースは統一する代わりに、フロントアクスルとリアアクスル位置は、それぞれ100mm前後できる余地を残す。

 つまり、マシンの重心位置の設計次第で、リアタイヤ寄りのバランスも、フロントタイヤ寄りのバランスも、どちらも行う事が可能。レーシングカーとしての設計自由度も、残しているという事である。

 20kgのバラストは、あくまで重心位置の補正として利用する考え方である。


◎参考、F2の重量増

・2017年までは688kg。

・2018年から、722kg。

・2020年に18インチホイール導入で、750kgへ。

フロントタイヤが大型化される。

・2025年(?)からは、798kgへ。大型化したフロントタイヤ機能の為の、フロントバラスト搭載が理由か? にしても、50kgの重量は正直いただけない。


◎FIA F4に対する疑問

 2018年時に、インパクトストラクチャー追加のアップデートで、車重は570kgから610kgと、40kg増加した。

 前後ストラクチャー追加で40kgは、本当にストラクチャーだけのものか? 前後ストラクチャーそれぞれ10kg×2と、バラスト20kg追加だとしても、少々無理があるのでは無いか?

 しかもこの後、第二世代F4は、F3リージョナルとのモノコック共通化に伴い、車重は640kgへとさらに増加している。

 エントリーフォーミュラとしては、幾らなんでも重過ぎやしないか?

*参考までに、ラップタイムは2017年までの方が、現行マシンより2〜3秒速い。流石に80kgの重量増が効いてしまっている…。

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