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ニンカツその八「鬣焔の獅子フレイムライガー」

「ずいぶん降りてる、な?」

「体感で五分ほど。今で三階分ぐらいかな?」

 下降する部屋の中では、照明魔法を掛けられたラピスの杖が薄ぼんやりと照らしている。

 ツムギはさりげなくトーヤに近づき、彼の足を踏んづけた。

 《オレたち》は以心伝心、触れていれば声を出さずに会話できる。

(身バレ防止とは言え、失敗しすぎじゃないか?)

(しょうがないだろ。本気を出すと、目立つじゃん)

(百戦錬磨の怪忍と、冒険者見習いの学生じゃ、実力が違いすぎるからなー)

(《オレたち》最深部を探索中の、勇者級冒険者にも負けないだろ?)

(目立てば気楽な学生生活、こっそりハーレム作りができないか)

(まあ今回は、マジでうっかりだけど♪)

(オイこらトーヤ)

 ゴゴンッと地響きを立て、エレベーターが停止する。

「到着だ! さて何が出るか!」

「何も無ければ、安全なショートカットを発見した事になる。報奨金が跳ね上がるぞ」

「おっと、そうは問屋が卸さないってな」

「左右の壁がなくなって、広場に続いてる」

「くせえぞ。獣の臭いがするぜ。デカいヤツだ」

 ベルガが斧と盾を構え直したその時、獅子の咆哮が轟き、紅蓮の火線が迷宮の闇を貫いた!

「わっちぃっ! ドラゴンなんか?」

「違う。だが強敵だぞ。燃える鬣、炎を吐き、牙や爪は鋼鉄を焼き切る」

 火元を一瞥した錬金術師のツムギは、学んだ知識で怪物を識別し、眉をしかめた。

「鬣焔の獅子フレイムライガーか!」

「浅階の中層を徘徊し、新米殺しと呼ばれる中級魔獣だ。金貨二千五百枚の討伐対象だぞ」

 獅子が放った熱線に、赤熱したベルガの盾が持ち主の腕を焼くが、逆に吠える女戦士。

「ドワーフの鍛冶が、火傷で怯むかよぉ!」

「アカンアカン、ウチらじゃ無理や! 迂闊に近づけへんし、魔法も通じひん」

「四の五の言ってる場合じゃない! ここにいたら撃たれる一方だぞ!」

 ツムギの一言で、咄嗟に広間へ駆け出すトーヤとザン・ク。

 囮になった二人の後を追って、撃ち込まれるオレンジ色の熱線が、獣の姿を照らし出した。

 普通の獅子の倍はあろう巨体、灼熱を宿す牙や爪も鋭く禍々しく、炎の鬣は轟々と燃え盛る。

「燃える(たてがみ)から放つ熱波は、対魔法防壁にもなってる。近づくと火傷する高温だ。気をつけろ!」

「近づくなと言われても、な! 向こうが飛びかかってくるのだから、な!」

 熱線を放ちながら、凄まじい瞬発力で疾駆し、ザン・クに飛びかかる獅子。

 振りかざした前足の爪撃をザン・クは間一髪でかわし、肌が焼かれるのも構わず刀身を打ち込むが。

「ぬ、おっ!?」

「たてがみも、バリヤーなのかよ!」

 首筋を狙ったザン・クの刀身を阻む、炎の障壁。

 現役忍者が見てもなかなかの斬撃だったが、半円状に広がった炎の鬣が、一撃を受け止めていた。

「ザン・クはん! 大丈夫なん!?」

「うむ! 袖が焦げたが、軽い火傷だ!」

「どら猫のクセに、ナマイキだぞ!」

 トーヤが投げたナイフも、あっさり弾かれるが。

「ふざけんな! バカヤロウ!!」

 岩小人の罵声が乗った渾身の一撃は、獅子を後ろに吹っ飛ばした。

「効いたでベルガの馬鹿力!」

「いやバリヤーは破れてない。頑丈だな」

「バックステップして、威力をいなしやがった。来るぞ!」

 右へ左へ跳躍し間合いを量るや否や、次に狙ったのは。

「ツムギ!」

 撃たれた熱線を避けようとして、ツムギがつまずく。

 地面に転がる和ロリ少年を、格好の獲物とばかり飛びかかる猛獣の顎。

「させん、よ!」

 獲物を咬み殺す獰猛な牙を目掛けて、ザン・クが再び長剣を突き入れる。

 ダンスのように流麗なステップで、しかし鋭く重い刺突を叩き込んだ。

 バキャッと音を立てて剣の切っ先が砕けたが、獅子の牙もへし折れる。

「グァオオオオオッ!」

 破片が頬をかすめ、肩も浅く抉られた剣士が、顔をしかめつつ飛び離れて。

「火には氷! 仕掛けたぞ、氷結玉だ!」

 コロリと床に転がって逃げるツムギと獅子の間に、こぶし大の白い結晶玉がある。

 意を察したサシャとラピスが、暴れ狂う眼前の獅子に怯まず、同時に魔法を唱えた!

「なら呪印(スペルタトゥー)水参風参! 増幅参! 過剰魔力!! 倍掛けやったるわぁああああっっ! 氷嵐(ブリザード)ぉぉぉっっっ!!」

「神魂凍てつかせ、我が前に流れ落ちよ地獄の氷河! 背神の徒を深く沈め、物言わぬ骸と化せ! 嘆きの瀑布コキュートス・イヌンダティオーッ!!」

 フレイムライガーの猛爪が床を抉り、牙がツムギの白髪を掠めた瞬間。

 その巨体に炸裂する、三つの氷結魔法!

「ガウゥウウウウウウウーーーッ!?」

 鬣の業火が膨れ上がって、抗しようとするが。

 猛火を呑み込み、青白く凍結させていく、三重吹雪の凄まじさ。

「ゴガァアアアアアアア…………ッッ!!」

「へへっ、やったか?」

「って、おいトーヤ!?」

「フラグ、だと!?」

「させるかよぉっ!!」

 思いっきり振りかぶった両刃斧を、剛速球で投げ込むベルガ!

 獅子の顔面を捉えた刃が、凍り付いた頭部を粉砕する。

「やったぜ!」

「あ、焦ったわぁ」 

「ここぞと言う時に、死亡フラグを立てるな!」

「はっはっは! 結果オーライだ! ベルガ嬢のトドメを褒め称えよう!」

「うるせえ、そーいうのはいいんだよ! それより魔石とお宝だ」

「下手な照れ隠しだな。だけど助かったよ、後ろ髪が凍ったけど」

 頭を失った獅子の体が、ひび割れ崩れていく。

 中からゴロリと転がり落ちる、拳大の赤い魔石。

「火、いや炎の中級魔石だな」

「凄いぞ。火属性の低級スキルを中級にレベルアップでき、新しい火属性スキルも覚えられる」

「うわー! うわー! めっちゃエエやん!」

「宝箱はねえのか? 今度は罠を作動させんじゃねえぞ」

「待ちやがれコンチクショウめ。広いんだぜ、この部屋」

 床や壁を調べて回るトーヤに、ツムギが髪の氷を払いつつ歩み寄り、水筒を渡した。

(ヤバかったな。《オレたち》の出番かと思った)

 水筒の水を飲みつつ、無音で応えるトーヤ。

(へへへ。あれくらい余裕だって。でもラピスってよ。思ったより強くね?)

(ザン・クもだ。戦士系スキルを使わずに、あの一撃は驚いた)

(《オレたち》同様、訳ありかもな。見た目通りなのはサシャとベルガか。ハーレムにいれねー?)

(候補にして、様子を見よう。手を出すのはOK)

(んじゃ、ベルガはツムギに任せるな。脳筋系は、ちょっと苦手だ)

(鬼女がトラウマだもんな、トーヤは。ムキムキ女子を可愛がるのはオレ、大好き)

 思わずむせそうになりながら、トーヤは水筒を返す。

「宝箱はまだなん、トーヤぁ?」

「この後は退却だ。私もサシャも魔力切れ。ザン・クは剣が折れ、ベルガの火傷も軽くない」

「いちちち。フレイムライガーの炎ごとき、って強がれねえな。もっと鍛えねえと」

「余も怪我をしているのだが、少しは心配して欲しいものだ。剣も新調せねば、な!」

「どう分配するん? 報奨金は六人割で金貨四百枚ずつ。でも魔石もあるし」

「元の階までエレベーターを動かせるか、そっちも調べてくれ給え!」

「注文早えよ多いよ! 時間くれよ!」

「ガンバレガンバレ盗賊さん。楽しみにしてるからな」

 強敵を倒して小休止、ケガの応急手当をしつつ。

 分け前の分配に、盛り上がる一行だった。

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