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第一章 第2話:魂の重さに刻む約束。

               ――あらすじ――

命を落とした少女が目を覚ました場所は、神々が眠る“神域”だった。

謎めいた神の導きにより、自らの過去と未来を知ることになる彼女。

その魂には、とある世界を救う使命が課せられていた。


目覚めた新たな名は――ルミナス・デイヴァイン。

人類の希望として、神聖な種を託された少女は、運命に導かれ異世界へと降り立つ。


そして“彼女の物語”が、ついに動き始める。

——神域、獣の間。


神々の住まうとされる神域に、一人の女神が佇んでいた。

突如、その身に戦慄が走る。


「……!?」

「……魔王が、消えた……?」


唇をわずかに歪めたその女神の名は、ザル=ガナス。

魔族を生み出した、魔の神である。


「……天眼(てんがん)《ジャッジ・アイズ》」


キィィィィン……


空間が歪み、女神の瞳に戦場の光景が映し出された。

真っ二つになった魔王の肉塊。そして、その奥で空を見上げる一人の少女。

その姿を見た瞬間、ザル=ガナスは小さく息を呑んだ。


「ルミナス・デイヴァイン……!?」


天眼でルミナスの情報を読み取った彼女は、瞬時にすべてを悟る。


「はっ……そういうことね。やってくれたじゃない、アルヴィリス……」


微笑みと共に滲んだのは、憎悪とも愛情ともつかぬ感情。


「……ふふ。可愛い可愛いアルヴィリスのお気に入りに、今だけはいい夢を見させてあげましょう」

「——今だけは、だけどね?」


——時を遡り、地球。西暦2038年 某所。


まぶしいLEDの光。天井を仰ぎ見るように、無表情の少女はベッドに背を預けていた。


パソコンの画面には「WINNER」の文字と、爆発するような観客アバターの歓声が広がっている。


舞台は《War of Soul Gears》。全世界同時接続型VRバトルゲーム。

大会の参加者数、十万を超える。


そのバーチャル空間で、彼女の名を知らぬ者はいなかった。


“無敗の星”——ルミナス。


「……あー、疲れた。最後、武器なしで素手って……どんだけ無茶なんだか。ま、勝ったけど」

「これで……優勝。なんか、あっけな……」


名前は、那須瑠美。

リアルでは無名。仮想では英雄。


現実の自分と、バーチャルの“ルミナス”との乖離が、胸に鈍く刺さる。


 「……別に、ひとりで平気だし」


そう口にすると、胸が少しだけ痛んだ。

でも、ゲームの中で誰かと遊んだ時、「ありがとう」と言ってもらえる。だから続けた。


この”ルミナス”という仮面のままで。

目を閉じる。まぶたの裏に、いつもの光景が浮かんだ。


一人きりの部屋、無音の夜。


そんなある夜、


「ピコンッ」


メール通知音。

パソコンのモニターに表示されたのは、見知らぬアドレスからのメッセージ。


「……ん?」


画面には見慣れぬアドレスと、奇妙なリンク。


「COMMAND_SOUL_WEIGHT」


「イタズラか……?……でも、なんか気になるな」


SNSなどで調べてみた。どうやら複数の人物に送信しているらしい。


「VR関係者ばっかだ…魂の重さ?…21…19…31」


アクセスすると魂の重さが数字で表示されるという。


「ちょっとおもしろいじゃん……」


怖さよりも好奇心が勝った。


カチッ。ENTER。


——ERROR。


「……は?」


もう一度。


——ERROR。


「……んだよ~…やっぱイタズラじゃんか…。はぁ……。」


苦笑してディスプレイを閉じたその時、ふと時計が目に入る。


「ヤバ……明日、朝練……って、うそ、もう1時!?」


慌ててベッドに潜り込む。


——その翌朝。遅刻して走る途中、那須瑠美は雷に打たれて、


——この世を去った。


——神域・人の間


目を覚ますと、そこは雲のような霞が満ちた空間だった。

声が聞こえる。


「おや、目が覚めましたか。ようこそ、我が神域へ」


現れたのは、銀の髪と深い碧眼を持つ男性——神、人の神・アルヴィリス。


「私の名はアルヴィリス。人類の神を務めています」


那須瑠美は思わず声を漏らした。


(は?神域……?神様……?)


「混乱しているようですね。率直に申し上げます。あなたは、既に地球で命を落としました」


現実感のない言葉。

アルヴィリスは静かに続ける。


「この世界は、地球とは別の“異世界”です。あなたの魂は、地球の神から譲り受けたものです」


(え、異世界!?……てか、心読まれてない!?)


「ご明察。今のあなたは“魂”ですので、思念がそのまま私に届いております」


(うわぁ……)


「あなたは、地球の神の奇跡で雷に撃たれて死亡しました」


(はぁ!?地球の神なにしてくれてんだ!!)


「……その件については、こちらからも謝罪いたします」


神にまで謝らせてしまい、少しばかり気まずくなる那須瑠美。

だがアルヴィリスは真剣な顔で続けた。


「はい。そしてこの世界は、あなたのような魂を必要としています」


「この世界は今、滅亡の危機に瀕しています。魔族神ザル=ガナス……私の妹が、他種族を滅ぼし、残るは人類と三つの王国のみ」


(……妹……!?)


「はい。私には、フェリアムという双子の妹がいます。彼女は私とは異なる神域に堕ち、魔を生み出す神…魔族神ザル=ガナスとなりました。本来なら私が止めるべき存在でしたが……」


アルヴィリスの声には、悔いと無念が混じっていた。


「そしてあなたがなぜここに連れてこられたのかご説明すると魂の総量です。あなたの魂の総量は異常だと地球の神から教えてもらいました。」


(昨日のあのサイト……!)


「地球の神にお願いして、信仰力を使い奇跡を起こしてもらい、ごく少数に魂の総量を計ってもらえるよう手配してくださいました。さらに即日お届けするように雷を対象に落とす奇跡も行使していただきました……。」


(ちょ、私、ア◯ゾンの荷物かなにかか!?)


「……申し訳ありません」


バツの悪そうに俯くアルヴィリス。

だが、彼の目は、確かに瑠美を見据えていた。


(で、私は何をしたらいいの?そのために呼んだんでしょ?)


「はい。ここエルディナ王国は三カ国のうちのひとつ。今まさに魔族の軍勢に攻め落とされようとしています。そこで那須瑠美様にはこの世界に転生していただき、この国……いえ、人類を救っていただけないでしょうか……?」


(わ、私が!?そんな大役務めちゃっていいの!?)


「ええ、地球の神には感謝しなければなりません……。あなたになら私の全てを捧げる器を持っていると断言できます。」


瑠美は戸惑いながらも、少し頬を赤らめる。


(そ、そこまで言われると……その、大役……受けようかなって)


「ありがとう……那須瑠美。いえ、これよりあなたは——ルミナス・デイヴァイン」


アルヴィリスは荘厳に手を掲げ、神の力を彼女の魂に刻んでいく。


《転生者:ルミナス・デイヴァイン》


●神術

・剣術《剣神の加護》:剣速、反応速度、筋力など全体強化

・魔術《魔術神の加護》:魔力無限、詠唱破棄、全属性・創造魔法、神話級魔法

天照(あまてらす)の加護:病気・呪詛・老化無効

●受動術

・身体強化・瞬間再生・暗視・料理スキル等


「最後にこれを……“神の種”です。腐らせるも、咲かせるも——あなた次第」


黄金の粒が彼女の魂へと溶け込んでいく。


●特殊

《神の種》:神格進化の可能性

《英雄の血》:神器を引き抜く資格


「ルミナスよ……あなたに神の加護がありますように」


そう言い残し、アルヴィリスは静かにその場から消滅した。


——そして現在、王都、食堂。


「まっずぅぅぅぅ……」


提供された粥を一口飲み、転生したルミナスは思わず呻く。


「素材の良さを全部台無しにしてるじゃん……」


すでに彼女の“冒険”は始まっていた。

ただ、戦いよりもまず必要なのは——


「……この国、まずは飯からだな」


ルミナスの静かな決意が、この異世界に一筋の光を落とす。


——第一章第二話 了。

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