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本当に大事なものは  作者: 城井龍馬
社会人・大学生編
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第91話 舞台裏で 芝浦山手の場合

「芝浦くん、高2のとき光哉と夏祭り行ったの覚えてる?」


「忘れるわけないでしょ、城之崎と2人で行こうとしたのに勝手についてきたよね?」


別に今更根に持っているわけではないが、あえてそう言う言い方をした。


「アハハ、あったねそんなこと!」


大庭は大笑いしている、コイツというヤツは……。


「あのときは女の子とデートする鷲那を、城之崎に見せないために苦労したよ」


「あ!それでもしかして途中で離れたり、急に帰るって言いだしたりしたの!?」


そっか、大庭は知るわけないか。


「やっぱりあの女ったらし……」


大庭がブツブツと呟く、正直ちょっとコワい。


そして鷲那と女の子を別の場所に向かわせたあと、戻ると大庭が城之崎に告白してたんだよな。


「あの日さ、私光哉にフラれたんだよねー」


大庭はケラケラ笑いながら言った。


「……そうなのか」


コッソリ聞いていたとは言えない。


「芝浦くん、隠れて聞いてたでしょ?」


なんだよ、バレバレだったのか。


「気づいてたの?」


「戻って来るの見えちゃったから」


え?


てことは僕が戻ってきてるってわかってて告白したのか?


コイツは本当にスゴいヤツだなと、あらためておもった。


「話がそれちゃったね。あの夏祭り、毎年私と光哉で行ってたんだけどね。中3のとき、急に光哉が別の人と行くって言い出して、それが鷲那くんとだったの」


大庭は、どこか遠い目をして呟いた。


その言葉に先程の城之崎の、


『……なんか前にも、こんなことがあった気がするな』


その言葉と大庭から聞いた過去の話が、パズルのピースのようにカチリと嵌っていくのを感じた。


……あれ?


オバケ屋敷?


「え? でもあの夏祭り、オバケ屋敷なんてあった?」


僕がそう尋ねると大庭は、


「あー」


と昔を思い出すように視線を上げた。


「昔はあったんだよー、あのお祭りも年々規模が小さくなってるから。まぁオバケ屋敷なんて言っても街の夏祭り規模のカンタンなヤツだけどね」


そっか、若い人が減ったりしているのも関係あるのかな。


大庭は続けて話す。


「私も一緒に行きたいって言ったんだけど、ダメだって言われちゃってさ……だからまぁコッソリ勝手についてったの」


当たり前みたいにそう言う彼女に僕は内心で、さすが大庭だなと思う。


その執着と行動力は、ある意味尊敬に値する。


「そしたらあの二人がそのオバケ屋敷に入ってくのが見えて、まさかあの光哉がオバケ屋敷だなんてろ…怖がりなのにどうして?って驚いたよ。私もさすがに中まで付いてくわけにはいかなくて外で待っていたら、出口のあたりで鷲那くんの叫び声が聞こえたの……それで急いで近くに行ったら光哉が気を失ってて、すぐに意識を取り戻したから良かったけど」


大庭は、そこで一度言葉を切った。


「私そのとき鷲那くんをめちゃくちゃ怒鳴っちゃって、『何で光哉をこんなとこに連れて来たの!?』ってね。そのときが鷲那くんとの初対面だったんだけどさ、お互い印象最悪だったよね」


大庭はアハハと力なく笑った。


そして、


「それから光哉に『なんでお前がここに居るんだ?』って怒られて、逃げ帰ったわけ。それからは光哉をあのお祭りに誘うのやめたの、当の本人は全部忘れてるけど」


と付け加えた。


そうなのか。


城之崎はそんな昔から、あぁやって意識を失うことがあったのか。


それに城之崎と鷲那の関係はそんなにも昔から続いていて、大庭もずっと城之崎のことが好きだったんだろうな。


その長すぎる片想いに、胸が痛んだ。


僕だけじゃない。


みんなそれぞれの想いを抱えているんだな、当たり前のことだけとあらためてそう思った。


「シバー! サクラー!」


不意に敷島の太陽のような大声が、僕たちを呼ぶのが聞こえる。


見ると、敷島と能田ちゃんがこちらに走ってくる。


「キノ、見なかったか?」


敷島が息を切らしながら聞いてきた。


「え? お前ら、一緒に居ただろ?」


僕がそう聞くと、能田ちゃんが困ったように説明する。


「それが……私達が2人で飲み物を買いに行っている間、待っていると言っていたのに戻ったらいなくなっていて……」


その言葉に、大庭がすぐさまスマホを取り出した。


コール音がスピーカーから聞こえるが、城之崎が出る気配はない。


何度目かのコールの後、彼女は諦めたように通話を切った。


アイツ、どこ行ったんだ。


僕たちが顔を見合わせ、途方に暮れていると。


ピロン、と大庭のスマホに『PINE』の通知音が鳴った。


「……光哉だ」


大庭はそう言うと無言のまま、その画面を僕たちに見せた。


そこに表示されていたのは、あまりにも簡潔なメッセージだった。


『すまない、電話には出られない。急な用事ができたので先に帰らせてもらう、皆には申し訳無いと伝えて欲しい』


え?


帰った?


何があったんだよ。


何かイヤな予感がする。


なんだか得体のしれないものが動いている気がした。

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