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本当に大事なものは  作者: 城井龍馬
社会人・大学生編
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第87話 さすがに見過ごせない 芝浦山手の場合

「人前でそういうのは、……やめろよ」


城之崎が真っ赤になった顔を片手で隠しながら、か細い声で言ってくる。


でも顔を隠しても、りんごみたいに赤くなった耳は丸見えだった。


あ、ヤバい。


僕はそのかわいすぎる反応に、あえて追い打ちをかけるように言った。


「ありがとう城之崎。人前じゃなければオッケーをもらえたということで、今後は人前でだけはしないように気をつけるよ」


「揚げ足を取るな! 俺が言いたいのはそういうことではない!」


城之崎がワナワナと震えながら、反論してくる。


「今も人が見ているだろう!」


そう言ってバタバタしている。


うん、やっぱりかわいすぎる。


「えー? みんな自分たちのことに夢中で、誰も見てないよ」


僕がそう言って周りを見回したその時。


城之崎がある一点を、ピシリと指さした。


「……それじゃあ、あれはなんなんだ?」


「え?」


言われて僕は、そちらを見る。


そこにはとっても見たことのある、丸いメガネをかけた小柄な女子がいた。


ほとんど地面に寝そべるような形で、こちらにゴッツい一眼レフカメラを向けていた。


そのまわりだけ、人が不自然に避けて歩いている。


うん、どう見ても能田ちゃんだね。


「……能田ちゃん? 何、やってんの?」


僕が声を掛けると能田ちゃんはハッとした顔で、カメラを構えたまま固まった。


そして次の瞬間、驚異的なスピードでその場から離れて近くの建物の陰へと消えていった。


森の小動物かな?


僕と城之崎は顔を見合わせると、その建物の陰へと近づいていく。


すると中からヒソヒソと声が聞こえてきた。


「マズいです! 見つかってしまいました!」


能田ちゃんが焦って誰かに話している。


「そりゃあねぇ、てかアレでバレなかったら逆にヤバくね?」


……この声の感じは、敷島だな。


「能田さんさすがに攻めすぎだよー、私だってもうちょっと考えるよ」


……マジかよ、大庭まで来てるのか。


僕は大きくため息をつくと、建物の陰へと足を踏み入れた。


そこにはやっぱり、思った通りの3人がいた。


僕が、


「何やってんだよ、お前ら」


と聞くと3人は、プイっと気まずそうに目をそらす。


すると僕の後ろから、静かだけど迫力のある声がした。


「とりあえず場所を変えよう、話はそれから聞かせてもらう」


城之崎だった。




ツヤのある丸い木のテーブルの両側にある、丸太を模したイスの片側に座る僕たち男子2人。


その反対側には気まずそうに俯く女子3人、ここはウエスタンな雰囲気のレストランだった。


「……とりあえずだ」


城之崎がこの店で買ったコーラをテーブルに置いて話し始めた。


残念ながら、この店にはメロンソーダは売っていなかったのだ。


その声はいつもより低い、……あーこれけっこう怒ってるヤツだ。


「能田、勝手に撮影した写真はただちに削除しろ」


「「え!?」」


僕と能田ちゃんの声がハモった。


僕は能田ちゃんを信頼している、それは城之崎のかわいさを理解する同志としてだ。


能田ちゃんなら城之崎のベストショットを、あのヤバい値段しそうなゴツさの一眼レフに収めてくれているに違いない。


もしかしたら赤くなったかわいすぎる城之崎や、口元にアイスをつけたかわいすぎる城之崎が写真に写っているかもしれない。


それを消すなんてとんでもない!


なんならお金払ってもいいからほしい!


……心からそう思う。


「城之崎、早まるのはよくない。中身をちゃんと確認してからにしよう」


城之崎は首をかしげる。


「ん?まぁ、お前がそう言うなら構わんが……」


思わずホッとする、あぶないところだった。


さてと城之崎が仕切りなおす。


「なんでお前らがここにいるんだ?」


その問いに、真っ先に答えたのは敷島だった。


「あーしは、未来に誘われただけだから!」


「え!? わ、私は大庭さんに!」


能田ちゃんが、慌てて大庭の方を見る。


城之崎の冷たい視線が、大庭に突き刺さる。


「咲良、どういうことだ?」


だが、大庭は答えない。


「そもそもさ、なんで僕らがここにいるって知ってるの?」


僕は1番不思議に思ったことを口にすると、大庭はボソリと答えた。


「……光哉に聞いた」


「え!?」


僕は思わず、隣の城之崎を問い詰めた。


「城之崎、言ったの!? 誰にも言っちゃダメだって言ったよね!? 特に大庭には!」


「ちょっと、それどういう意味?」


大庭がツッコミをいれてくるけど、とりあえずシカトする。


「いや、俺は決して言っていないぞ!」


城之崎が猛烈に反論した。


すると大庭が、口を尖らせる。


「まあ確かに『どこに行く』、とは言わなかったけどさ。どの辺に行くの?って聞いたら、最寄り駅と誰と行くかは教えてくれたじゃん?」


「え!?お、教えたの!?」


僕が再び城之崎を見ると、コイツは当然というように頷いた。


「……ああ、それは確かに言ったな。」


「いやいや!そんなんバレるに決まってるじゃん!」


城之崎は心の底から驚いていた。


コイツマジか……信じらんねー!


「なぜだ!?」


城之崎は、まさかの反論をしてきた。


「この駅の周辺には郷土博物館や、運動公園だってあるだろう! そっちに行ったという可能性だって十分にあるはずだ!」


「そんなとこ、誰が行くんだよ!」


「キサマ! なんてことを!」


城之崎が逆ギレしだした。


「この地域の住民やそこで働く職員の方々に対して失礼すぎるだろう! 今すぐ、謝罪しろ!」


そんなあまりにもズレたことで始まった、僕と城之崎の言い争い。


それを大庭はまるでスポーツ観戦でもしているみたいにながめて、能田ちゃんは不安そうな顔でオロオロと見つめている。


そしてその隣で敷島は、腹を抱えて大声で笑っていた。

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