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本当に大事なものは  作者: 城井龍馬
社会人・大学生編
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第70話 開かれた門 芝浦山手の場合

鷲那は電話にも『PINE』にも何の反応もない。


エレベーターじゃなくて、階段にも暗証番号とカードキーのロックが掛かってる。


普通こういうロックって外側だけじゃないの?


なんで内側にまでロックが付いてるんだよ!


豪華すぎるペントハウス前のエレベーターホールで、僕と大庭は完全に途方に暮れていた。


「……とりあえず中に入りなよ、ここにいてもしょうがないし」


開けっ放しの玄関のドアを指差して僕がそう言うと大庭は、


「え、でも勝手に入っていいのかな?」


と躊躇する。


「僕たちを勝手に閉じ込めたのは鷲那の方だよ、文句言われる筋合いはない」


大庭はなるほどと頷く。


「……それもそっか」


納得した様子で、お邪魔しまーすと部屋の中へと足を踏み入れた。


リビングでは能田ちゃんと敷島が、突然の来訪者に目を丸くしている。


「え、大庭さんじゃないですか!? どうしたんですか!?」


「わーサクラじゃん、おひさー」


二人は喜んでいるようだが僕が、


鷲那に閉じ込められたことを簡潔に状況を説明すると、その表情は一気に驚愕へと変わった。


「それで?大庭はなんでまた急に鷲那に会いに来たんだよ」


ソファに座り、僕は事の経緯を尋ねた。


すると大庭は少し言いにくそうに、ポツリポツリと話し始めた。


「実は私の友達に、鷲那くんと同じ大学の子がいるんだけどね。その子にもしも鷲那くんのことで何か変わったことがあったら教えてほしいって、ずっとお願いしてたの」


鷲那のことを調べてたってことか?


「なんでまた、そんな探偵の真似みたいなことを?」


僕の問いに、大庭は少し困ったような顔になる。


「だってあの子、最近マンションにもあんまり帰ってきてないみたいだし。何か変なことでもたくらんでるんじゃないかって気になったから」


大庭のやっていることはともかく、鷲那が何かを企んでいるという彼女の直感には僕も同意せざるを得なかった。


「それで光哉の部屋で話してる時に、その友達から電話がかかってきたの。急いで部屋を出て話を聞いて、これは直接鷲那くんに話を聞かなきゃって思って……」


それで鷲那に電話をして、この部屋に来るように言われたらしい。


「鷲那くんちょっと待っててくれって言って、1人でエレベーターで降りてっちゃったんだけど……」


大庭はまた困ったような顔になる。


「追わなかったんですか?」


能田ちゃんが、大庭に質問する。


「それが、エレベーターが全然反応しなくて」


大庭が答えると、能田ちゃんは納得したらしい。


「それで閉じ込められたと言うことですね」


「どうやらセキュリティか何かで、カードキーかパスワードを入れないと反応しないようにしたみたいだ。僕が触っても反応しなかった」


僕がそう言うと敷島が、


「とりますぐにこの部屋のインターホン鳴らして、あーしらとか呼べばよくね?」


と口を挟む。


「いや」


僕は首を横に振った。


「僕たちには聞こえなかったけど、大庭は何度もインターホン押してたらしいんだよ。たぶんチャイムの音量を鷲那がゼロにしてるみたいで、アイツ壁のパネルをいじってたから」


大庭が来たときには鳴っていたチャイムが、鷲那が出ていったあとは鳴らなくなった。


どう考えても鷲那の行動は、全てが狙って行われたものだった。


「キノには?下にいんじゃね?」


敷島が聞くと大庭は首を振った。


「下にはいると思うけど電話もPINEも反応なくて」


僕からも連絡してみるが反応はない。


「まぁ繋がったところでそもそも、城之崎は鷲那の階の暗証番号までは知らないんじゃないか?」


部屋が静まり返った、まさにその時だった。


『PINE』


静寂を破るように、僕のスマホが鳴った。


画面を見ると、鷲那からだ。


『すみません、バタバタしてて気づきませんでした!』


メッセージはその文章から始まり、エレベーターの暗証番号が書かれていた。


僕はすぐに鷲那に電話をかける。


だが耳に届いたのは、無機質なアナウンスだけだった。


『おかけになった電話は、電源が入っていないか……。』


アイツ、人のことおちょくってんのか!?


「行こう!」


声を上げた僕に3人は呆然としている。


「どうやって?」


大庭の質問に僕は、


「鷲那がエレベーターの暗証番号を送ってきた、とりあえず城之崎の部屋に行こう!」


そう言って部屋を出た、みんながあとに続く。


エレベーターのキーパッドに暗証番号を入れると、エレベーターがようやく反応した。


「やった!」


すぐに来たエレベーターに乗って、城之崎の部屋に向かう。


城之崎の部屋のドアの前で暗証番号を入れる。


「城之崎!」


部屋は静まり返っていた。


下駄箱の上には宅配の荷物が置きっぱなしだ、靴も1つなかった。


……何か急いで出たのか?


リビングでみんな黙り込む。


「……ところで大庭」


僕は気になっていたことを尋ねる。


「鷲那を調べていたその友達に、なんて言われたんだ?」


すると大庭は静かに言った。


「鷲那くんね、最近ずっと大学に行ってないらしいの」


「は?」


アイツはここしばらく、忙しそうに何してたんだ?

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