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再起

瑠璃子は階段を駆け下りた。

雲雀もそれに続く。


瑠璃子は居間で父親の姿を見た。


父親の顔はげっそりとし、

萎れたミイラのよう、

目の淵は赤々と充血している。


まだ、彼は瑠璃子に気づいていない。

「お帰りパパ!!」

瑠璃子は父親の前に出ると、

勢いよく叫んだ。


「うわっ……瑠璃子か?」

父親は面食らったような顔をしていた。

自殺未遂をしたという娘がこんなにも生きが良いことに困惑している。


瑠璃子は父親の目を見つめて宣言した。

「私生きる。学校にも行く。」


父親は軽く苦笑しながら、娘を見た。

「……力強い。それ直接聞けてパパ安心だよ……」

その言葉がこの気の毒な父親を随分と安心させたらしい。

彼の額の皺は緩んでいた。


「私に何が起こったのか話すね。」


瑠璃子はこれまた神妙な顔で話を進めた。

(ただ、生きると宣言するだけじゃダメだ。

何が起こり、そう決断さしせめたのか話し、これからどうするか話さなければいけない。)


「おっおぉ……受け給える……」

父親は瑠璃子に座るよう促し、

自身もその正面に腰掛けた。


「まず、私が死のうと考えさせしめた経緯について。」


「まず、これを見てくれ。」


瑠璃子はスマホを開いて、

クラスラインに投稿された例の動画を見せた。


その動画の中には、暴れもがくように体操する瑠璃子の姿とそれを笑うぽんたろう一味の音声が記録されている。


「……これは?」


「私だ。」


父親の声には震えが混じっていた。

「………酷いな。許せない。」

彼は険しい目つきで、

動画を睨んだ。


「それで、これからの私がどうするかなんだけど、」

(これ見るたびに胸糞悪いね………)


瑠璃子はこんな自分の姿が親に知られるのが恥ずかしくてたまらない。

だがあくまで、

平然と話を続けた。


「私はまず、この動画を証拠として担任に見せようとおもう。」


「……それはもちろんだよ。」


「それから、私強くなりたい。私が彼等に漬け込まれるような弱い人間なのが私自身赦せない。」


「私自分のこと見直してみたら、駄目なとこばっかだった。今からでも改善するつもり。」


「まず、手始めにこの体操覚えようと思う。後最近太ってきたから痩せたい。パパ休みの日一緒に走らない?」


「……もちろん!走ろう!」

父親は口元を歪めて、

笑みを向けようとした。


「私は自分で勝手に思い詰めて、極端な考えに陥りがちだから、これからは困ったことあったら相談していい?」


「………わかった!!いつでも聴くから。」


瑠璃子は父親に話して、肩が軽くなったような氣がした。


「なんだ、自分で何やれば良いかしっかり見えてるじゃん!」

雲雀は満足気に腕を組みながらぷかぷか天井を漂った。


来たる土曜日、そして日曜日。

朝日が昇る前の時間。

瑠璃子は暗闇の中に浮かぶ父親の青い尻を追いかけた。

父親は青いランニングパンツを盛んに揺らしている。


瑠璃子は昨日――土曜から朝夕と父親と河川敷を走っているのである。


(パパ早すぎ………)

瑠璃子に額には髪が張り付き、口の中に風で髪で入ってきた髪の毛を必死に払い除けた。


「お父さん張り切ってんね〜」

雲雀は優雅に瑠璃子の前方を、寝そべるような姿勢で浮かんだ。


瑠璃子は空中から呑気に鑑賞する雲雀を思わず睨んだ。


「あんたね………」

憎まれ口の一つでも叩いてやりたかったがそんな気力もない。


「ほら、足が止まってんぞ〜」

雲雀はニヤニヤしながら戯けて茶化した。


父親の尻を見失いそうで、瑠璃子は足に力を込めた。


「あっ……」

雀がチュンチュン鳴いて飛び立つ。


登ってくる太陽。

紅い光が遠くの地面から湧き上がり、

美しい薄紅と深い青が混ざり合い、

瞬く間に全体に広がる。空は群青からに空色に変わった。


新しい朝日が、瑠璃子の頰を照らした。


(………大丈夫、私の未来は明るい。)


(きっと辛いこともあるだろう、

だが、どうにかやっていける気がする。)


瑠璃子は眼に美しい朝の情景を焼き付けた。





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