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山岡の乱前夜(11) 栄光なき雑用路線



名誉!最高!喜劇!

こうして瑠璃子は合唱コンクールにおける重大な地位に預かった。


担任の女教師――斎藤マリコは嬉々として教壇の前に躍り出た。


「それでは、我がクラスの合唱コンクールにおける役員をみんなに紹介します!!」


声は弾み、チャームポイントのポニーテールを馬のケツのしっぽのごとく揺らしている。


大層めでたし、愉快な様子だ。


瑠璃子の推薦と自らの立候補により雲雀もその地位をあやかった。


合唱コンクールにおけるピアニストと指揮者はとうに決まっていたのに、肝心の諸々の雑用を受け給う実行委員が中々決まらなかった。


だがその枠組みが一度に埋まり、担任教師マリコは感激狂乱した。


これで一年生の合唱コンクールの役員は全て決まった。

田舎の小学校なだけに一学年一クラスしか存在しないのだ。


斎藤女史は黒板にスラスラと役員連中の名前を書き印していく。


指揮者――鈴木俊哉

ピアニ担当――水嶋マリア

実行委員女子――神谷瑠璃子

実行委員男子――風見雲雀


以上が名誉ある役員四名。


「みんな!役員に立候補した四人のお友達に拍手!!」


斎藤女史がみんなに呼びかけると、

みんなは盛大に拍手をした。


――ワァァァァァァ!!


雲雀はなんだか照れくさくなって俯いた。


一方瑠璃子はそんなことしっちゃこっちゃなく、親指の爪をいじいじしていた。


鈴木俊哉とは山岡の手下の一人、丸メガネの鈴木である。

普段腰巾着として主人と一緒にやんちゃぜんとしてる彼が、あろうことか自分から立候補したのだ。 


ピアノ担当のマリアは、可哀想に瑠璃子にいつも付き纏われている子である。


成績優秀でピアノまで弾けてオマケに教師を不快にさせない最強の優等生だ。


マリコの実行委員二名への印象はこうだ。

小賢しくて可愛げのない雲雀に、純粋にテストがからっきしの瑠璃子。


どちらも居ても居なくてもよく、どちらかと言えば居ない方がありがたいかもしれないタイプの二名。


マリコからしたら、

この二人が急に可愛く思えて仕方がないだろう。


一年生の合唱といったら「ハナ」であり、いわば最初のスタートダッシュだ。  


祭りの開始から、人が集まり出す20時頃になって小学生の合唱がスタートする。


夜峰街の夏祭り――「ペンペン祭り」

では小学生の合唱は花火と並んで二台演目である。


それだけに住民の期待は大きい。


何ごとも最初が肝心だ。

最初で良い流れを作れなければ後はもういけない。

それだけに一年生の責任は重かった。

一年生の合唱が失敗すると、

「……今年はもうダメだね」

と、住民達が囁き出して合唱全体の成功どころか、祭りの空気もなんだか落ちこんでしまうのだ。


ここで、一年生の実行委員の具体的な仕事を紹介しておこう。


宣伝用のポスター作成、休み時間の練習の呼びかけ取り仕切り、合唱の課題のメモと報告、楽譜の管理、練習計画作成。


みんなを鼓舞し、率先して歌い始めるのも実行委員だ。

責任感とリーダーシップ、教師と生徒の間で板挟みになっても耐えれる精神力をも求められる。


小学生一年生には余りにも過ぎて仕事に思えるが、みんななんだかんだ毎年やり遂げているのである。


実行委員を経験した生徒はそれゆえ、周りの生徒より一皮も二皮も剥けるのだ。


しかし、ごくたまに重圧に耐えられなくなり逃げ出し不登校となり消える生徒もいるのが事実。


実行委員は通常、歌が大好きでたまらなく自身の歌唱力に自身のある生徒がなるのが常である。


雲雀はともかく、瑠璃子はそのどちらも持ち合わせてはいなかった。


勝って育つか、敗北して去るか。


瑠璃子の運命はいかに――?





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