番外編 雲雀の二つ名
瑠璃子はふとした瞬間気になった。
そういえば雲雀には戒名があるのだろうか。
お葬式時には聞いたような記憶がない。
――よし!聞いてみよう!
キョロキョロと辺りを見回すと――見つけた。
雲雀は逆さまに部屋の天井からにょっきり生えていた。
「あんたの戒名何?」
雲雀はゆっくり瑠璃子の方を向くと、
やや間を置いて応えた。
「えっと――天翔院音羽光輝慈風英霊真慧童子居士(てんしょういんおとはこうきじふうえいれいしんけいどうじこじ)だよ」
「戒名なっっが!!」
「私のよしこ(曾祖母)なんて戒名三文字なのに!!……ブフッ…二つ名みたいでかっこいいじゃない……ふふっ……」
その姿は水揚げ直後の魚。
瑠璃子は腹抱えてピチピチ悶えながら笑った。
「親が最後に無駄にお金かけてくれたからね……」
対する雲雀は睫毛を伏せ、窓の外に目をやった。
空は既に暖かな蜜柑色に染まっている。
空を見つめていると、瑠璃子の笑い声が彼にはどこか遠く感じられた。
「天翔院音羽光輝慈風英霊真慧童子居士!!天翔院音羽光輝慈風英霊真慧童子居士!!」
瑠璃子は雲雀の戒名が妙にツボにハマったのか先程からずっと連呼する。
極めつけは――。
「今日からあんたのことこう呼ぶっ……!!!」
その宣言には爽やかさすらあった。
「……陰湿ないじめだ。」
ぽつりと呟いたその声が夕暮れの乱鴉の声と重なる。
雲雀はもの言いたげな目で瑠璃子を見つめていたが僅かに口元だけが笑った。




