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生きるなら徹底的に、さもなくば失せよ。

久しぶりです!読んでくれる人いつもありがとうございます!

「………なんで、あんたにそんなことまで言われなきゃならないのよ……」


瑠璃子はなんとか言葉を絞り出した。

握った手は汗ばみ小刻みに震えている。

――他人の癖に、差し出がましく腹立たしい。


部屋の空気はひときわどんより重い。

外の雨音は強度を増し、地面を勢いよく叩きつけた。


「ただ、何もせずに流されて生きていくのは死んでるのと変わらないよ!!だったら今ここで死ね!!僕が見届けてやる!!」


雲雀の目が瑠璃子を貫いた。

熱の無い彼の声は熱を持って瑠璃子の全身を突き刺した。



瑠璃子はまた拳を強く握った。

手の傷が焼けるようにジンジンと疼く。


「………」


雲雀の目が堪らなく痛い。

一瞬、瑠璃子は彼の目から逃れようとした。

だが、目をカッ開くと両の眼で彼の目を捕らえた。

猛禽類のような鋭い眼差しが雲雀に降り注いだ。


「ただボーっと生きてる奴が世の中の大半じゃない!!」

瑠璃子は声を出した。

喉がカラカラと乾いており張り裂けそうだった。


雲雀も負けじと声を張り上げる。



「問題に目を背けるだけじゃ何の解決にもならないんだ!せっかく真剣に生きるって決めたのにすぐ覆すようじゃ、どうせまた死にたくなる!!」


「僕は学校――ぽんたろうから逃げるなって言ってるわけじゃない。 

逃げるんだったら、とことん逃げるべきだよ。それこそ周りの大人にちゃんと話して自分が学校行けない理由を話すんだ!

理由話して退学なり転校なり自分がどうしたいか伝えなきゃ!!ただ、何もしないのは逃げれたことにならないだろ!!」


「僕が知ってるるりちゃんは立ち向かうことができるんだ。一回くらい奴らに立ち向かってみても損じゃないだろ!!」


雲雀が叫ぶ度に、雨が勢いを増す。

雨音と一緒に激しい言葉が降り注いだ。



「立ち向かうなんて無理に決まってるでしょ!冷静に考えたらできっこないって分かった!!ママにすらちゃんと向き合えない私が敵と対峙できるわけないでしょ!!」


「でも、よん婆には立ち向かえたじゃん、かっこよかったよあん時!!それに僕が崖からるりちゃんのこと突き落としたときだって、手傷だらけにしながら崖にしがみついてただろ!!


るりちゃんには度胸も胆力もあるよ!!」


「よん婆なんて死に損ないの老いぼれじゃない!!私のが強いに決まってるでしょ!!それに、崖から落ちた時はほんとに死にそうだったの!!わかる?無我夢中だったの!!」


「それに、ぽんたろうは手下もいる現役の男子高校生よ!!女で一人の私に勝てるわけないだろ!!」


「僕がいるだろ!!知ってた?僕男!!」

さも当然の事実をとんでもない大発見のように示す。

この真剣な場面で突然何を言い出すのか。


「…確かに!でも、男らしく殴るとか無理でしょ!!あんたが呪い殺してくれるんなら別だけどね!!できるわけ!?」


「できない!!僕が干渉できるのはるりちゃんだけなんだ!!何回試したけど他の人には干渉できない!!よん婆は除いてね!!」


なんと役に立たない。これでは男だろうが関係ないだろう。愛しい瑠璃子のことは殺しかけた癖に、悪しきぽんたろうには文字通り手も足も出ないのだ。


瑠璃子はこの事実を初めて知った。

事実なら雲雀が唯一自身を認識できる瑠璃子にこれほどまでに執着するのも頷けるだろう。



「あっっそ!!…奴らは小賢しいから奴らの社会的地位を脅かすようなことはしない。私を丁度良い範囲でいたぶるの!!命の危機までにはならないの!!」



「つまり、命の危険に晒されないから本気だせないってこと!?」


この雲雀のアホらしい返答に怒りの火を燃やしつつ、瑠璃子は応えた。


「確かに!!本気の理性全部取っ払って私が襲い掛かれば傷くらいつけれるかもね!!そしたら私が今度はお縄よ!!生きるだけで後ろ指をさされるようになるわ!!」


悪鬼のように醜く顔を歪めながら瑠璃子は叫ぶ。

雲雀はそれに微塵も怯んだ様子はない。

それどころか話す勢いが増した。


「動物みたいに襲い掛からなくても……尊厳を保って勝つ方法はあるよ。……君が本当に、やろうと思えば。――君はぽんたろうに勝つんだ!!」


今までのどの言葉より彼は強く言った。

言い終わった瞬間、部屋の空気が揺れるのが瑠璃子は分かった。

一瞬の静寂が部屋を包んだ。雨音だけが耳に届く。


「……………」

「……………」


二人はただまっすぐお互いを見た。

次いで、瑠璃子が口を開く。



「……さっきから私を買いかぶってるようね。雲雀は何も私を知らないらしい!!」


「知ってるよ!!じゃあ……今から語ってやる!!」


そう言うと雲雀は、ずっと語るのを待っていたかのように雄弁に語りはじめた。


「……君は忘れてるだろう。でも、僕はあの日から君を見てきたんだ。」


――それは9年前の夏、瑠璃子がまだピカピカのランドセルを背負っていた時のことである。

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