火葬(二回目)
雲雀は燃えていた。
炎はパチパチと音を立て、熱を感じさせない火の粉が宙を舞っていた。
「あっあああ…」
ここ数日間の雲雀とのやり取りが脳裏にかすめた。
病で苦しんで死んだ後、死んでからも再び焼き殺されそうになるなどあんまりではないか。
次の瞬間、瑠璃子の固まっていた身体が動きだす。
「やめろよ、ババア!!」
瑠璃子は叫ぶとよん婆めがけて思いきり突き飛ばした。
「わぁ!?」
よん婆はまたもやかわいらしく鳴くと地面に崩れ落ちる。
しかし、炎はいっこうに消えない。
「なんにするの〜?ねぇっ、ねぇ、なんにするの〜?」
よん婆が瑠璃子に呼びかける。
瑠璃子は焦った。
火は消えない。
「クソッ!!」
瑠璃子は辺りを見回す。
(あれだ!!)
この壮絶な火葬が行われている道に面した家に庭先のホースを発見した。
瑠璃子は迷わず庭に侵入すると蛇口を勢い良くひねり水を出した。
――じょおおお!!
瑠璃子はホースを握りしめ、燃え盛る雲雀めがけて勢い良く火水を放った。
よん婆ごと辺りは水浸しになった。
――しかし、火は消えない。
(どうすれば、どうすれば、火が消える!?)
(こうなったら、婆を殺るしかないのか!?)
(そうだ、あの妙な石――)
雲雀の周りを囲む奇妙な顔が書かれた石。
思えばあの石で囲んでから炎が燃えだした。
(あれだ!あれしかない!!)
瑠璃子は炎に躊躇せず近づき石を蹴散らした。
赤々と燃える炎が急速に萎んでいき、火は消えた。
「ねぇ、だいじょうぶ!?」
うずくまる雲雀に駆け寄り声をかけた。
身体に火傷のようなものは見えない。
しかし、その身体は以前よりいっそう薄く今にも消えかかってしまいそうなほど頼りなかった。
「ねぇ~どうしてぇ〜もう少しで綺麗に払えたのにぃ〜」
「悪霊だよ〜!悪霊だよ〜!」
よん婆が不満そうな声を漏らした。
瑠璃子は拳を握りしめながらよん婆近づき、婆の胸ぐらを掴みかかった。
「知ってるよ!!なんなら私こいつに殺されかけたもん!!今日ね!!」
「ババア!この傷を見ろ!!」
瑠璃子は手の平に巻かれた包帯をスルスルととっていった。
「私がこいつに着けられた傷だよ!!こいつにね崖から落とされたの!!その時にできた!!」
「……でもね、同時に救われたの!!!こいつがいなかったらどっちみち私は死んでたんだ!!」
「崖から落ちたとき、私は何としてでも生きたいって思った。こいつがいたから、気がつけたの!!」
「この傷は、その時の決意の証なんだ!!」
「だかは私は雲雀に感謝してるの!!勝ってに払うな!!」
婆に唾を飛ばしながら言い切った。
ハアハアと息が荒くなった。
「はぇ?あぇ?」
よん婆は瑠璃子を見てぽかん口を開けていた。
「……るりちゃん」
背後から雲雀の声が聞こえた。
瑠璃子はよん婆から手を離し、後ろを振り向いた。
「僕、君の側にいていいの…?あんな酷いことしたのに…?」
「二度言わせるな」
その一言で消えかかった雲雀は再びはっきり目に見えるようになり、心なしかコケた頰もふっくらと生き生きしだしたように見えた。
「……ありがとう、ほんとうにありがとう。ごめんね。」
目を潤ませながら瑠璃子を見つめた。
「キャッキャッキャ」
「仲良いねぇ~」
二人の様子を見てよん婆が盛大に笑った。
「へんなの〜へんなの〜おもしろいねぇ〜」
「まだ、いたのかばーさん。明日の事案でニュースに流れたくなかったらとっとと消えな。」
「わかったよ〜婆は消えるねぇ〜」
「ばいば~い」
そう言ってよん婆は軽やかに腰をあげると再び夜に消えていった。
よん婆が去ると雲雀は瑠璃子の隣によった。
「雲雀、そばにいるなら……私がちゃんと生きれるようになるよう、手伝ってよ。社会と戦えるようにさ。」
瑠璃子は雲雀に語り掛けた。
「やっば」
ポケットからスマホを取り出し時刻を見ると時刻は5時半。よん婆とのやり取りは一瞬のように感じられたのに気づけば数時間たっていた。
このところ瑠璃子は夜更かしの常習犯だ。
「まずは、生活リズムから直さないとだね」
雲雀は嬉しそうに笑った。




