名句つくろう!絶世の句!!
――喋った。
今の今まで一言も口を聞いていなかったこいつが喋ったのだ。
呆気にとられた。
同時に理解した。
「あんた、やっぱり、私の妄想だったんだ」
雲雀は瑠璃子自身の病んだ心が生み出した、幻妄に他ならなかった。
(心の底から私は死にたがってるのか、)
このところ、瑠璃子はずっと考えていた。
ぽんたろうへの怒りより何よりも自分自身に怒っていた。
ぽんたろうごときに目をつけられる自分が、
それに対処することができぬ弱さを何よりも憎んでいた。
高校などあと三年耐えればそれで終わりだ。
問題はその先――瑠璃子の将来になる。
(この先、私は社会で普通に生きていくことができるのか…)
社会で真っ当に生きるための能力が自分にはない。
普通に働いて誰かと関わる。
それがとんでもなく難しいように思えた。
これから先にどんなに辛いことが待っているのだろうか。
(だったら、楽しい記憶が多いままで終わりたい。)
瑠璃子は真っ直ぐに雲雀を見た。
「いいぜ。今ここで死ぬ。」
もう、すっかり日が暮れ瑠璃子の部屋は夕闇に包まれていた。
瑠璃子は足を二階の窓に掛けた。
いつでも飛び降りる準備はできている。
じっと雲雀を見つめ続ける。
(奴は、いったいどう応えるのか…)
瑠璃子にとっては自分自身への最後の確認だ。
雲雀はまたにっこりと微笑んだ。
「じゃあ、明日もう一度だけ学校休もう!」
――は?
瑠璃子は覚悟を決めたら早い。
一日伸ばしたところで瑠璃子の気持ちが変わる筈がない。
そっちだって乗り気だった癖に急にどんな按配だろう。
「あっはっはは…」
やはり、心の奥底では死ぬのが怖いのだろうか。
死ぬことにすら踏み切れぬ自身の弱さに瑠璃子は涙した。そして怒る。
「黙れッ!今覚悟したんだっ!止めるな!!」
そんな瑠璃子の様子にお構いなしに雲雀は以前にこにこしている。
「まぁ、聞けって」
そう言って、手をひらひらさせた。
「終わりよければ全てよしって言うじゃん!!」
「明日、最期に相応しい最高の日にしようよ!」
「美味しい物好きなだけ食べてさ、どうせ死ぬんだから好きなだけ豪遊してもいいじゃん!!」
「はぁ…?」
突然、とんでもなくお喋りになる。
そのテンションの高さに瑠璃子は戸惑う。
瑠璃子が尚も考えあぐねていると再び雲雀は口を開いた。
「るりちゃん、絶世の句とかある?」
瑠璃子はしばらく神妙な顔をして考えたのち応える。
「…夕暮れに、染み入る孤独、春愁より」
「ダッッッサ!!」
「後世の笑い者だよ!!」
「は?」
「せっかくならかっこいい句で最期を飾ろうよ!」
「せっかく詠むなら部屋じゃなくて山がいいな!」
「よし!じゃあ明日は山にいこう!!」
「じゃあ、今日は明日早く起きるために早くお風呂入って寝る!」
――最期。
それなら…こいつの言う通りにしても良いのかもしれない。




