7 修行
前世の異世界イルバニア。
七瀬はナナセとしてできることを始めましたが、どうなることやら。
どうぞよろしくお願いします。
「大丈夫か、七瀬?」
心配そうな和也の声に「大丈夫だよ」と答える。
「僕は教会の方へ行くけど……、無理しないでよね。
マーティス、七瀬が無理しないように見ててよ」
私達はとりあえず魔王の動きに備えることにして、自分のできることをしようと……。
私にしてみれば、勇者としての力をできるだけ取り戻すしかない。
騎士カイロスは王城の騎士団の師範となっていた。
マーティスに連れられて「修業したい!」と言うと驚かれ、私が勇者ナーセルの生まれ変わりだと知ると、泣かれた。
「なんだよ。泣くなよ」
「なんで、なんで女の子に?!
あのしなやかな理想的な筋肉を持つ身体、超人的な持久力はどこに?!」
「知らねーよ。
それを言うならカージュも男になってるからなっ!」
そう言ってから、そういや魔王も女の子になってたな?! と気づいた。
ナーセル王子が一緒に来てくれてるんだけど、何だかどんよりしている。
いや、悪いね。
自分の名前の由来が、かっこいい勇者様だと思っていたら、弱そうな女の子に生まれ変わって帰ってきちゃって……。
カイロスに向かって言う。
「勇者の時までのレベルになれるとは思ってない。
でも、少しでも強くならないといけないんだ!
和也を、カージュを守りたい、そばにいたいんだ!」
カイロスとマーティスがほうっという表情をする。
「ナーセル……、いや、今はナナセだったな。
お前、ちゃんとカージュに愛を告白できたんだな」
マーティスの言葉に私は赤くなる。
「な、何を?!」
カイロスも頷く。
「よし、ナナセ。
私の修行は厳しいぞ。
愛するカージュ、今はカズヤを守るというナナセの思いはよくわかった」
ナーセル王子もなんかキラキラした目で私を見ている。
「心は勇者のままですね! 俺、なんか感動しましたっ!」
男3人にキラキラした瞳で見つめられて、居心地悪いんすけど……。
とりあえず、体格に合った剣を選んでもらい、ナーセル王子と試合をしてみる。
うっ、剣を振り回すのって、こんなに重かったっけ?!
カイロスが「やめ!」と言って、打ち合いをやめた。
「まあ、女性にしてはよくできる方だと思うが……。
勇者ナーセルのイメージはいったん忘れろ」
「なんで?!」
「今のナナセの動きを見ていて思った。
ナーセルの時はできていたことをイメージして動こうとして、動けない、隙が大きくなる。
今のナナセには悪影響しかない」
「そ、そんな……」
私はがっくりと肩を落とす。
「毎日、ここへ通え。稽古をつけてやる。
今のナナセにあった剣術のやり方をな、身に付けろ」
読んで頂き、どうもありがとうございます。
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