5 同名
聖女と勇者の性別逆転異世界転生から16年。
前世の異世界イルバニアに来て、とうとう仲間に出会えました。
どうぞよろしくお願いします。
「いやー、転生で性別が変わるとは……」
マーティスにため息をつかれる。
「いやいや、僕達にはどうしようもできないことで。
今の状況は?」
和也が歩きながら答えた。
私達はマーティスに連れられて、王城の中を歩きながら話していた。
その前に服を着替えさせられたけど……。
和也は魔法騎士の服を。
私は……昔の私が着ていたような剣士の服が良いと言ったのだけれど、却下され、それならと女性用の騎士の服を選んだ。剣が扱えそうな女性の服がそれしかなかったからだ。
マーティスがニヤニヤしている。
「なんだよ」
「いや、かわいいな、ナーセル」
「お前、殺されたいのか?!」
マーティスはこういう奴だった。
魔法使いは、何となくふざけている奴が多かった気がする……。
「ナーセルじゃない、ナナセだ。
そして僕はカズヤ。
もうカージュとナーセルは死んだ。そう思ってくれ」
和也の言葉にマーティスが真剣な顔で頷く。
「悪かった。
では王に会いに行こう」
「王はまだご存命なのか?」
和也とマーティスの会話から、この世界は私達が魔王と相打ちのように封印してから30年が経っていたことがわかった。
「ああ、先代の王はまだ存命だ。
君達に会うのを楽しみにしていたよ」
「先代……、代替わりしたのか……。
するとモーティマ兄……王子が?」
「ああ、今はモーティマ王だ。
モーティマ王には息子がふたりいて、ひとりはウリエル王子、もうひとりは……ナーセル王子だ」
「私の名前?!」
和也が声を上げた私をちらっと見て言った。
「勇者ナーセルにちなんだんだろ。
七瀬、今は七瀬なんだから。
もう七瀬として生きてくれ、前世を引きずりすぎると今世がおかしくなるぞ」
うーん、それはわかるが……。
王の執務室に案内される。
ドアが開かれ、懐かしい王の姿が……。
歳を取られたな……。
和也が片膝をつく礼をしたので、私もそれにならった。
「そなたらが……、聖女カージュと勇者ナーセルの生まれ変わりか?」
「お久しぶりです、ダイタス王。
今はダイタス先王とお呼びすればいいのでしょうか?」
和也の質問返しにダイタス先王は笑った。
「おお、カージュの質問返しじゃな。懐かしい」
「質問には答えています。
否定しなかったのですから、肯定です」
「ふふふ、変わらんなあ。なあ、ナーセル」
「「はい」」
私ともうひとり同じくらいの男性が一緒に返事をした。
あ、この子がナーセル王子か?!
お互いに見合ってしまう。
読んで頂きありがとうございます。
これからもお付き合いして頂けたらうれしいです。