43 今世
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
この43話でラストになります。
私が場所はわかるので、和也の手を取り、姿くらましで湿原まで移動した。
「ああ、魔法陣に落っこちるのと、どっちが楽かな?」
和也が少し頭を振りながら言った。
開拓中の湿原を行くと、田畑が荒らされている場所があり、魔物特有の気というか……。
私は聖魔法の防御を和也と私にかけた。
和也が聖魔法の結界を私達を守るのではなく、この場に私達と大ヘビを閉じ込める形で発動した。
地表に大ヘビが這い出してくる。
和也が斬りかかり、私は風魔法で大ヘビの尻尾の方の動きを押さえこんで封じる。
「ありがとう、七瀬!」
和也が叫びながら、大ヘビの頭のすぐ下、まあ首の辺りを斬った。
うん、切断できた。致命傷、なんだけど、すぐにはおとなしくなんないんだよね。
そーなんだよね、皮が色々使えるそうなので、火魔法で燃やしちゃうとかできない。
私は黄光魔法の魔法陣を発動し、とりあえず大ヘビの頭だけを収納する。
身体の方は風魔法で押さえ続けているけれど……。
もうしばらくかかりそうかな。
ヘビにしちゃ、ぴくぴくぐらいなんだろうけど、けっこう大きいから、尻尾が暴れたら危ないし。
和也が首の方に剣を突き刺し、黄光魔法を剣を通して大ヘビの身体に流した。
すると大ヘビの動きが止んだ。
「……何したの?」
「眠らせるって黄光魔法があるだろ?
あの神経に作用するっていうところを利用して、身体の動きを止めるってできないかと……」
「新しい魔法創っちゃったの?!」
「創ったというか……、今まで習ったのを組み合わせて?」
私はため息をつきながら、大ヘビの身体も魔法陣に収納した。
「あー、あんまり急いで強くなっていかないで、ね。
いくらそばにいるだけでいいと言われても……。
ま、和也が強くなるのはうれしいし、地道に追いかけるから、いいけどね……」
和也が結界を解くと、周囲で様子を見ていた村人たちが駆け寄ってきた。
「勇者様! 聖女様! ありがとうございました!!」
私と和也は念のため、その場所からこれから開拓する辺りに聖魔法の結界を発動した。
これで残っていた大ヘビの気配とかも浄化されるはず。
私が姿くらましを使おうとしたら、和也に止められた。
「今度は魔法陣で転移しよう」
私は頷いた。
和也が聖魔法の転移魔法陣を発動すると、見送ってくれていた村人の中の子どもが叫んだ。
「あれ? 勇者様が聖女様の聖魔法使うの?」
私と和也は顔を見合わせて笑ってしまった。
勇者と聖女、それはもうふたりにはどうでもいいのかもしれない。
支え合うように抱き合って落下。
ギルドの前に広場に転移した。
「七瀬が聖女って思われてたんだな」
「和也が勇者ってね」
「前世とあべこべだな」
「今は今!
でも、勇者って言われると、つい反応しちゃうな。私のことか?! って」
和也が大きく口を開けて、笑った。
◇ ◇ ◇ 完 ◇ ◇ ◇
最後まで読んで頂き、どうもありがとうございます。
5万字に少し足りない中編となりました。
ハイファンタジーにしたけど、内容やテーマは恋愛かもしれないですね。
メルティトとこころちゃんは、将来、結婚するんだろうな~。
いつもいろいろ書きこんじゃって長くなるので、今作はけっこう登場人物の心の中、お互いに思っていることや、その思いがすれ違っているということを中心にしたかったので、七瀬と和也のことにできるだけ集中して話を進めました。
どうでしょうか?
読みやすくなってるといいのですが……。
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