41 反省
「もう言わないで! 反省してるから!」
和也がううっという感じで呻くように言った。
「どうしてそうなったか、わかったってこと?
そこまで考えないと、またやるわよ!」
わー、シンシア、容赦ないな……。
「うん、七瀬がかわいかったから……」
うん? どういうことかな?
私のせいみたいに聞こえるけど?
私が困った顔をしたのを見た和也が言った。
「こちらに来るまでは……、七瀬の方がしっかり者っていうか、よく気がついて、僕を助けてくれるような……。
それがイルバニアに来てからは、僕の方がすぐ魔法が使えたし、前世の記憶もどんどん思い出してさ。
僕を頼りにしてくれて、ついてきてくれる七瀬が、その、とってもかわいくて……、つい守りたく……」
「守りたく? 囲い込みたい、じゃないの?」
マイネが呆れたように言った。
和也が赤くなり「う、そうかもしれない……」と呟いた。
その後、マーティスとウリエル王子、そして和也たちはまずウルティカへ戻り、そこからサラザール王国の王城に戻ることになった。
今回、話し合ったことをサラザール国王に報告し、正式に文書にして発表していかなくちゃいけない。
私はスーリア王国に残り、このまま街づくりやギルドを誘致、設営する手伝いを続けることにした。
途中で投げ出したくはないし、こころちゃんの……、メルティトがいるから大丈夫なんだろうけど、まだ小さいこころちゃんをひとりにはしたくなかったし。
和也が「帰る前にもう一度ふたりきりで話したい」と私に囁いた。
私は自分の部屋に和也を連れて行った。
「街やギルドのことがある程度形になったら……、一度サラザール王国に戻るよ」
私がそう言うと和也も頷いた。
「僕も時々、使者として手伝いに来るから……」
「うん、楽しみに待ってる」
「……キスしてもいい?」
えーっと?
ちょっと戸惑った私の顔を見て、和也が静かに言った。
「好きだから、キスするって。ちゃんと……」
言いながら左手で抱き寄せられ、右手で頬と顎を支えるみたいに包まれた。
「七瀬……」
私は魔力循環をしていた時のことを思い出して、目を閉じた。
みんなが青白い魔法陣で転移していくのを見送った後、ノアに言われた。
「一緒に帰らなくて良かったのか?」
私は笑って頷いた。
「うん、サラザールに戻っても、今の私にはできることもそうないし。
だったら、ここで自分のできることをして、それにもっとできることを増やして……。
ノア、魔法と剣、もっと教えてね!」
ノアは微笑んだ。
「うーん、私にとってはもうチャンスはなさそうだな……。
でも、ナナセが幸せで楽しいようだと……、それはそれでうれしいな。
ふふふ、確かにあのカズヤがそばにいたら、ナナセが強くなることを……、邪魔しそうだしな」
読んで頂き、ありがとうございます。
後2話で完結です。




