40 常識
魔族魔法改め『黄光魔法』、魔王国改め『スーリア王国』という名前が決まった。
まあ、周知しながら気長に使っていかないといけないんだろうけど。
スーリアっていうのは湖の名前なんだそう。
女神様の伝説があって、この国の人ならみんな知っているそう。
いいね。女神様の湖にちなんだ名なんて、素敵!
だから、これからは魔族って呼び名もなし!
スーリア王国人だもんね!
「でも、なんで魔族なんて言い方を?」
私はマーティスに聞いてみた。
マーティスはちょっと困ったような表情をしたが答えてくれた。
「私が小さい頃に聞いたことですが……、こちらの地方はサラザールよりも文化や民度が、その……低いと、それにドラゴンなどの生息地で危険な場所でもありましたし……、私達にはなじみのない魔法を使って、その魔物と呼ばれるドラゴンを召喚したりする者もいると……。
申し訳ないが、魔物と一緒の……魔族と」
確かにメルちゃん、ドラゴン召喚しようとしてたな。
まあ、一番強い者が王になるとか、サラザール王国や日本の常識を考えてみると、野蛮というか……、時代がうんと遡った感はある。
話し合いも休憩をということで、私はシンシアをこころちゃんに紹介した。
シンシアがにっこり微笑んで少し屈んで視線を合わせて話しかけている。
こころちゃんもニコニコしている。
「きれいなお姉ちゃんだね!」
そんなことを言われればシンシアもうれしいよね。
一緒に庭を歩きながら話をしていると、マイネと和也とメルティトもやってきた。
こころちゃんとメルティトがふたりで先にどんどん走って行ってしまい、私達はのんびり歩いていたんだけど、マイネが言った。
「カズヤとナナセが仲直りできて、本当に良かったよ。
それにしてもカズヤはひどいよな……。
私は、ナナセに気持ちを伝える努力をしているのかと思ったから……」
「何の話?」
シンシアが首を傾げた。
「魔力循環の時、カズヤ、人前じゃ絶対にナナセとの魔力循環をしているところを見せなかったし、他の誰にもナナセに魔力循環をさせなかっただろ。
あれ……、カズヤ、ナナセに循環に必要なことだからって……」
「おい!」
和也があわてて止めようとする。
そりゃ、あんまりばらされたくないよね、自分の悪行は。
「なによ、はっきり言いなさいよ!」
シンシアが一喝して、マイネが言った。
「好きだとか何も伝えてない状態で、循環に必要だからってだけ言って、毎晩キスしてたみたいだよ」
「えっ?」
シンシアが和也を見る。
「だから、悪かったって、ちゃんと……、何てことしたんだろうって、反省して、七瀬に謝ったし、自分の気持ちをちゃんと伝えたし……」
「もう、何やってたのよ!
あ、ナナセを城の外に出さないようにしてたのもそのせい?!
わー、それはひどいわ……」
読んで頂き、ありがとうございます。
完結まで書きあげました。
43話で完結予定です。
後もう少しですが最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。




