39 呼び名
「そうなの? 大丈夫なの? ……それならいいけど」
シンシアがまだわからないことがあるけれど……という感じで頷いた。
「ありがとう。
マーティスたちのところに合流しよう」
私はシンシアと和也に言って立ち上がった。
屋根裏から急な階段を降りて行く。
シンシアがあちこち珍しそうに見て言った。
「魔王国って言っても、普通ね。
サラザール王国の北部地方の建物に似ている感じがするわ」
へーそうなんだ。
「その魔王国って呼び名、あんまりいい感じがしないんだけど……。いつから?」
私はシンシアに聞いてみる。
そうなんだ。メルティトの話でもあったよね。
サラザール王国の方が文化や魔法の使い方が違うこちらの魔王国を見下しているような……って。
「そうね。昔からだから……。
サラザールは聖魔法と属性魔法が主流で、魔王国は特殊な魔法なのよね。
だから、サラザールからすれば得体のしれないところもあって、しかも、こちらの国の人にはその力があることが多くて……、だから魔族魔法っていう、ちょっと下げたような言い方になったのかも」
「じゃあ、その名称を変えるってことをしてもいいわけだよね」
◇ ◇ ◇
急に私達がシンシアを連れて戻ってきたので、メルティトやマーティスはびっくりしてたけど、そのまま、話に加えてもらう。
国交について話をした時、私は魔王国、魔族魔法という名称をやめて、新たに名前を付けることを提案した。
「確かに……、長年サラザールからそう呼ばれていて、便宜上、自分達でも使用していたが……。
改めて王国としての形や名前を決めるのもいいかもしれない」
メルティトが考え込む。
この国は王を強さで決めるので……。
メルティトが不在の時も、他の王がいたようだが、魔王という名で統一されちゃってるので、今の魔王とか先代の魔王とか、そういう感じで話されることが多いらしい。
それで特に問題がなかったそうなんだけど。
「国の名前を付けるのはいいと思います。
それに……、私はサラザール国内のギルドで仕事をしたこともありますが、魔族、魔王国という言葉に、少し侮蔑の意味が込められているような気がしましたし……」
ノアが控えめに、サラザールの使者たちを気にしながら、自分の意見を伝えてくれた。
「そうか……、でもどんな名前がいいかな?
みんなが納得する名前?」
メルティトが首を傾げる。
「まずさ、魔族はやめよう。
聖魔法、属性魔法と区別できる、いい名前?
黄色くてきれいな光なんだけどな」
私が呟くと和也が言った。
「黄光魔法とかは?」
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