38 治療
「シンシアは七瀬が魔王国側にひどい目にあわされて、魔王国に都合のいいことを言わされてるんじゃないかって、心配してたんだ」
和也が説明してくれて、私は驚いた。
「何、その顔だと、私のこと何か……誤解してた?」
シンシアが苦笑いしながら言う。
私は申し訳なくて、下を向いて言った。
「その……、ごめん。
シンシアに言われたこと、なんか裏があるのかと思って……、シンシアは和也のことが好きなのかと……」
シンシアは驚いて和也を見てから、笑った。
「私がカズヤを?!
まあ、聖魔法がこんなに上手だから、仲間って意識は強いけど……。
そもそも、私には恋人がいるわよ」
「えっ? 誰?!」
シンシアは私がすぐに『誰?』と聞いたことに驚いたようで、少し赤くなって口ごもったが、答えてくれた。
「……レオン、よ。
だから、レオンがカズヤと剣の練習時間を増やすのも……、それが終わって今度は私と聖魔法の練習をするのも……。
結局、私はレオンと過ごす時間が減るのよ?!」
私はそんなことを言うシンシアに驚いて、目をぱちくりしてしまった。
「ナナセのことは心配してた……。
なんでそんなに頑張るんだろうって。
でも、やろうとしていることを、納得できるまで、本当にできるならやり遂げて欲しいと思ったし。
少し厳しく発破をかけてた、つもりだったんだけど……」
「ごめんなさい。全然、その、ダメだと言われているのかと……」
シンシアの表情が申し訳なさそうに……、微笑んでいるのに少し悲しい感じ。
「そっか、きちんと伝わっていなかったなら、それはこちらも謝らないと、ごめんね」
そして、シンシアの白い指先が私の目の下に優しく触れて……。
「治すわよ」
優しい青白い光が私の目の前に広がり、私はあわてて目を閉じた。
目の周囲の気になる感じが消えていく。
「うん、これでいいわ」
シンシアの言葉に私は目を開けた。
「うん、大丈夫。
でも、何で泣いたの?
それに、ここは?
やっぱり、魔王国に何かされた?」
私はあわてて答えた。
「魔王国のせいじゃないの!
その……、私が、いろいろ勘違いしてて……、和也のことをあきらめて離れようとして、それで勝手に泣いてたの……」
そう言うと、すごく恥ずかしくなって、顔が赤くなったのがわかった。
シンシアが訳がわからないといった感じで和也を見る。
「その……、僕が自分の気持ちを七瀬に伝えずにいたから、それで七瀬が誤解してて……。
でも、もう誤解は解けて、七瀬に気持ちを伝えることができたから!」
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