37 心配
しばらく無言で抱き合って座り込んでいたけど、ふと気がついたように和也が言った。
「そういえば、なんでシンシアと僕のことを?
教会で聖魔法や結界などについてシンシアと話をしたりすることはあったけど……、そんな誤解されるようなことはなかったんだけど」
私は困ったように言った。
「たぶんシンシアは和也のことが好きなんじゃないかなって思って……」
「……それはどうして?
僕のことは、誤解させるようなことを言ってしまっていたけど、シンシアは……」
私はため息をついた。
「シンシアに『カズヤの足を引っ張らないように頑張りなさい』と言われたことがあって。
真意がどこにあるかいまいちわからなくて……。
マイネに相談したことあるの」
「なんでマイネ?」
「だって、和也に言ったらなんだか言いつけてるみたいかなって」
「……そういうことは気にするんだな。で?」
「私のことを頑張るように応援してると思うけど、もしかしたら、剣の練習を勧めたことでカズヤが教会で過ごす時間が減ったのを……、少し、怒っているというか、そういうこともあるのかな……と」
「……それで?」
「だから、シンシアは聖魔法をもっと研究したり練習したりしたいんだろうし、今の『聖女』でもあるし。
それで和也はどんどん強くなって『勇者』と呼ばれるようになるかもってことになって……。
そうしたら、もう、私が頑張っても追いつけないし、ふたりが王国を守るのが一番いい形なのかなって」
「それでシンシアとお幸せにって……。
心にもないことを言って、泣いてたの?!
七瀬はバカだな……」
「どうせ、私はバカですよ。
もうそれはわかってる。でも、和也が幸せになれるなら、それでいいと思ったんだもん」
「……他人の幸せなんてわかんないだろ?!」
「うっ、それは言われると、そうなんだけど……」
和也が心配そうに、私の目の下にそっと指で触れる。
「治癒魔法かけるよ」
「……ありがとう」
私は目を閉じた。
目を閉じていても青白い明るい光が満ちたのがわかった。
和也があわてる気配がして、聖魔法を急に止めると私を抱きしめた。
「わっ、そうだった!」
驚いて目を開けると近くに転移の魔法陣が青白く展開していて、そこに、シンシアがいた。
「えっ? シンシア?!」
私が驚いて叫ぶと、シンシアはちょっと不機嫌な表情だけど、さっと和也と私のそばに来てしゃがみこみ
「あー、これは痛そうね。
でも、その様子じゃ、心配してた感じじゃないわね。安心した。
もう、カズヤったら、私も行くって言ったのに、来なくていいって言って!
聖魔法の治療を使ったら、七瀬に何かあったってことだから、追いかけるからね! って言って、ウルティカで待機してたの!」
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