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35 告白   ※和也視点

 ノアが『待て』というように両手を下に向け、自分だけ進んでいく。


「ナナセ、落ち着いたか?」

 声だけが聞こえてくる。


「う、ノア……」

「大丈夫、メルティトが気にして様子を見てくるように言われただけだ。

 ナナセの無事が確認出来たら、すぐ行くよ」

「ごめん。心配かけて。

 もう少し、ここにひとりでいる……」

「そうか、わかったよ。

 ナナセ、泣いてるのはカズヤのため?」

「う、うーん、そんなのわかんないよ……。

 自分のために泣いてるのかもしれないし、なんだか、もうわからない………。

 うう、うーん。

 失恋って、こんなに辛いんだな。

 メルティトが暴走して、魔王になったのわかる……」

「そうか、じゃあ、暴走しないように制約魔法かけとくな」

「な? なんで?」


 黄色い光の魔族魔法が発動したのがわかった。


「え? 何これ、ずいぶん強力な……。これだと歩いて部屋に帰れってか?!」

「ああ、思う存分ここにいればいい。迎えが必要なら、迎えに来てやる」

「ありがとう、ノア」


 ノアがこちらに歩いてきて、ドアの辺りで隠れている僕の肩をポンと叩くとドアを閉めて階段を降りていく。


 そっと七瀬のいるあたりを伺うと、ナナセは屋根裏の窓の方を見て、陽だまりの中でぼんやり向こうを見ている。

 こちらを見ていない。

 僕はそっと七瀬に近づいて行った。


 屋根裏の床材は古く、すぐにきしんだ音がして、七瀬がはっ! と振り向いた。


 七瀬と僕の目が合う。


 七瀬の泣き腫らした目の回りが痛々しい。

 怯えたような表情が浮かび、立ち上がって逃げようとして、よろめいた。


 僕は駆け寄り、七瀬を抱きしめる。


「いやだ!? 放せ! なんで?!」

 すごい力で抵抗しようとする七瀬をただひたすらに抱きしめ叫んだ。


「七瀬、好きだ! 

 ずっとずっと好きだった!

 七瀬がかわいくて、大好きで、ずっと一緒にいて欲しくて、だから、わざと理由をつけて、僕のそばにいるように、僕がキスしても変に思わないように、嘘をついた。

 本当は七瀬が大好きだから、僕がキスしたかったんだ!   

 ごめん、七瀬がそこまで傷つくなんて、そこまで、僕は考えていなかった。

 許して、許して下さい」

「嘘?!」

 七瀬の怯えたような悲鳴のような声。


「嘘じゃない!

 これが本心!

 本当に、七瀬のことが大切。

 七瀬がいなくなったら、僕、どうしたらいいか……」


 七瀬が泣き笑いのような表情で言う。

「私は消えないよ。

 和也が別の人と生きてくと決めても、私は消えない。

 いなくならない。それは安心して」


「いやだ、僕と生きて欲しい。離れたくないんだ!!」


「私は、もう『勇者』じゃないから……」

読んで頂き、ありがとうございます。

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