33 後悔 ※和也視点
僕は七瀬の魔法の痕跡をなんとか追いかけたが、七瀬の部屋だと思われる部屋へ転移した時には、すでに七瀬は次の場所へ移動してしまっていて、もう辿れない。
何もかもが僕の手をすり抜けていってしまった。
七瀬は僕のことを好きでいてくれたんだ。でも僕の態度から、僕の七瀬への気持ちを勘違いしてて。
僕は、ただ、きちんとまっすぐに気持ちを伝えれば良かったんだ。
前世を抜きにして、七瀬のことが好きだ、かわいい、ずっと一緒にいたいと思っていたはずなのに、どうして、こうなったんだ?!
確かに、あの練習の時のキスは……、練習のために必要だからと僕が言った。
だから、七瀬はあんなにじっとして耐えるような……。
好きな男から、好きとか嫌いではなく強くなるために必要なことだからと言われて、何度も繰り返しキスをされて、傷ついていたのは……、七瀬だったんだ。
僕はふらふらと七瀬の部屋を出て、マーティスとマイネとウリエルと……、魔王国の人達が話している部屋へ行った。
マイネが驚いて言った。
「カズヤ、死にそうな顔してるぞ?! ナナセは?」
「もう、死んだほうがマシかも……。
七瀬が僕の話を、もう聞いてくれない……。
あんなに、あんなにずっとずっと大好きで、そばにいたのに。
もう、話を聞いてくれない。
僕は自分の気持ちを隠して押しつけることで、七瀬を傷つけていたんだ。
気がついたけど……、もう七瀬は……」
メルティトが口を開いた。
「ななせちゃんはカズヤのことが好きだよ。
聖女カージュとカズヤは、もう別人として生きているということを、私に伝えるために、殺される覚悟で魔王国までひとりで来たんだ。自分が殺されてもカズヤが狙われることがなくなればと」
「そう……、そうなんだ。
七瀬も僕のことを……。僕も七瀬のことを好きだったのに、僕は何も言わず、いろいろいいわけをつけて、そのために七瀬は僕のそばにいなきゃいけないというふうに……、一度も僕自身が男として七瀬のことを好きだと言わずに……」
マイネがため息をついた。
「なんで自分の気持ちを伝えなかったんだ?」
「そうだよ、僕はバカだ……。
毎晩毎晩、七瀬にキスしたくて、キスしてたのに!
七瀬には魔法の練習だからって、練習のためにこうするんだって、ずっとずっと……」
マーティスが顔を歪めた。
「なんでそんなことを……」
「ずっとそばにいて欲しかった。
理由をつけて、縛り付けておかなきゃと。
今、わかった。
好きだと、こんなに大好きなんだ、七瀬が好きなんだと言えば良かったんだ!」
メルティトが静かに言った。
「ななせちゃんは、この城の中で泣いてる……」
「どこにいる?!」
僕はメルティトに詰め寄った。
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