25 魔族
魔王城の中は思ったより明るかった。
「明るいんですね?!」
私は城の中を見上げながら言った。
黄色い光がふわふわたくさん浮いていてきれいだった。
「メルティト様の魔力で作られた光です」
私を捕まえたというか、まあ普通に案内してくれている男の人が言った。
あ、剣はさすがに取り上げられたよ。
「城中の明かりを……。
あの小さな身体で、辛いでしょうが、力を少しでも使っている方が楽なようで……」
「……こころちゃんに聞きました。魔力過多の症状なのですか?」
「そうです。
メルティト様は異世界へ転生され、その時の身体でこちらに戻ってきています。
小さな子どもの身体……。魔力が収まりきらず、使わなくても身体が苦しいし、使った方が安定はするのですが、子どもの身体に負荷がかかるという、悪循環に……」
それはつまり何もしなくても、力が常に暴走気味になり辛い。使えば楽なはずなんだけど、今度は身体が子どものため、身体に無理が生じる……ってことか。
「薬があるのですよね? それ以外は?」
「聖魔法の治療するという方法があるようなのですが、魔王国には聖魔法の使い手がいませんので……」
私は魔王城の中を改めて見回した。
魔族って、普通の人に見える。
私の不思議そうな顔に男の人が笑う。
「魔族が珍しいですか?」
「いえ、その、私のいた地球という世界では、魔族と言うと、その人間とは違う種類の生物を指す言葉に近くて……。このイルバニアでは違うんだなと」
「メルティト様もそれは、笑っていました。
そうですね。
イルバニアでは、人と種類が違うとまでは……。
同じ人間ですが……、人種というか民族……、文化が違うというか、そういう違いでしょうか?」
「私やメルちゃんの今の姿の方が、よっぽど珍しいのですね」
男の人が面白そうに笑った。
「お客人の名をうかがっても?」
「私は七瀬です」
「ナナセ様ですね。
私はこの城のことを任されています。バースと申します」
執事さんとか大臣みたいな感じか?
「バースさん、よろしくお願いします。
それで、その聖魔法の治療なのですが、私は少し聖魔法が使えます。
でも、使うとサラザール王国の魔法使いに感知されて、強制的に王城へ転移させられる、かもしれません。
聖魔法を外部に感知させずに使う方法とかないですかね?」
「あなたは……、サラザール王国の命を受けて来たのではないのですか?」
私はいつものように大口を開けて笑ってしまった。
「いえ、家出の真っ最中という感じで……。見つからないようにするの大変でした!」
バースさんは驚いたような表情をしてから、頷いた。
「そうなのですか?!
メルティト様に相談してみましょう。
……この部屋でお待ち下さい」
読んで頂き本当にありがとうございます。
書いてる本人はけっこう楽しいのですが……、ブックマークがつかないところをみると、全く読者の方々には面白いとは思って貰えてないんだろうな……と思いつつ、でも、このままの路線でちゃんと最後までは書きあげようと思います。
完結までお付き合いいただけたらうれしいです。どうぞよろしくお願いします。




