23 迷子
焚火の所に到着し、火をつけた。
鍋でお湯を沸かし、水筒に入れてこころちゃんに渡した。
カップぐらい買っとけばよかった……。
「ありがとう、ななせちゃん」
こころちゃんがお湯を飲んでほっとした様子。
「パンもあるよ、食べる」
「うん!」
パンを食べ終えるとこころちゃんが悲しげに言った。
「メルちゃん、心配してるかなあ。
ななせちゃん、メルちゃんに連絡できないかな?」
「うーん、とりあえず、今日はこの焚火のそばから動かないようにしよう。
明日、明るくなったら、一緒に行ってあげる」
「うん、一緒にいてね。
あのね、私……。
メルちゃんとここに来て、本当に幸せなの。
一緒に来てほんとうによかった。
メルちゃん、時々苦しくなる時があるの……。
なんか、まりょくかたって言ってた。
そのお薬がこの花なんだって。
だから、集めようとしたら、道に迷っちゃって」
メルちゃん、魔王メルティトだよね。
なんかいいところもあるんだな。
たぶん、まりょくかたは魔力過多だろう。
魔力量を作りだす力と今の身体のバランスが悪いとなると聞いたことがある。
聖魔法で抑えることができるんだよな。治療的な感じで。
こころちゃんが持っていた花は、いつも採取している花だ。
そういう効能があったのか!
今も集めてる。
乾燥した状態でもいいそうで、3日間の移動中に見つけたら採集してたんだよね。
メルちゃんと話ができたら……、いや、どうなるかわからないか……。
こころちゃんに渡しておこうかな……。
フードにふたりでくるまって横になる。
私はぐっすり眠り込まないように我慢して、時々焚火に薪を足した。
朝になり、お湯を沸かしてから、ベーコンを焼いた。
パンと果物を出す。
こころちゃんは「キャンプみたい!」と喜んでいる。
あー、確かに、日本にいた時のことを考えるとそうかも。
私は一緒に朝食を食べながら、こころちゃんに集めていた花について話をして、後で渡すねと約束した。
焚火の後始末をして、荷物をまとめる。
花は乾燥していて軽いから、こころちゃんのカバンに入れることができた。
「わー、こんなにありがとう!」
こころちゃんが喜んでにっこりした。
たぶん地図を見ると、山の方に歩けばいいはず。
手を繋いでふたりで歩き出す。
しばらくいくと「わかった!」とこころちゃんが叫んだ。
「こっちだよ!!」
私を引っ張るように歩き出し、森に入り、抜けたところに黒っぽい石で作られた城が建っていた。
森の後ろだから、直接見えなかったのか!
メルティトが封印された20年+転生しちゃった10年。
魔王国は国としてはあんまり機能してなかったんだろうな。
サラザール王国との交流もなくなっちゃってたようだし。
だからギルドも撤退しちゃったわけで……。




