22 侵入
最後の街ウルティカを出てから、最後の村で食材を少し分けてもらって、どんどん魔王国の方に近づいてる。
魔族魔法はよくわからないのだけれど、黄色い光を発光するくらいならできそうなんだよね。
でも、和也も私と同じようにメルティトの魂の一部が混じってるんだったらと思い出して……。
聖魔法と同じような性質があるなら、使ったら和也にもばれんじゃないかって……。
というわけで、もう魔王国に勝手に入って、捕まって、メルティトの所へ連行されるしかないだろう。
かなり不本意ではあるが……。
たぶん、もう魔王国の国境は越えたあたりじゃないかな?
そのままずんずん進み、何も起きないまま、夕方になり、そこで野営をしようと焚火の準備を始めた。
どこかで子どもの泣き声が聞こえた気がした。
動物の泣き声かもしれないけど、暗くなる前に確かめないと!
私は慌てて声の聞こえる方へ走った。
小学生1年生くらいの小さな女の子がしゃがみこんで泣いていた。
黒い髪の……、日本人?!
ドキッとしたけれど、声をかけた。
「どうしたの?」
その子は驚いた顔でこちらを見た。
展望室で魔法陣を展開した子とは違う。少しほっとした。
涙で目の下が赤くなっている。
「お姉ちゃん、だれ?」
「私は……、野口七瀬、高校生だよ」
「私は渡辺こころ。ひらがなでこころだよ。小学生1年生だよ」
「こころちゃんね。
お姉ちゃん、あっちで焚火するんだ。一緒にどう?」
こころちゃんはこっくり頷いたので、私は背中を向けてしゃがみこんだ。
「おんぶするよ」
ちょっと躊躇した感じが伝わってきたが、そろそろと小さな手が肩にかかるのを感じた。
「いいかな? しっかりつかまって!」
私は立ち上がり、「よいしょっ!」と少し上にこころちゃんを跳ね上げるみたいにした。
「大丈夫?」
「うん!」
野営の場所に戻りながら、私が住んでいた街の話をする。
「こころもそうだよ。
ここにはメルちゃんと一緒に来たの!」
「メルちゃん!」
「メルちゃん、知ってる?
メルちゃんはこの世界の子だったんだって。
遠足の時ね、それを思い出したんだって。
何だか、せいじょとゆうしゃとかいう人を追いかけてきたんだって。
大きなお兄ちゃんとお姉ちゃんみたいだったけど、会ったら思い出したんだって。
で、こっちに来る時に私を連れてて来てくれたの」
「そうなの?!」
「うん、私ね、うちでも……、邪魔って言われてて、それで、学校でも友達に嫌なこと言われてて……。
……いじめられてたのかもしれない。
メルちゃんだけなの、仲良くしてくれてたの……」
この子、あの時『メルちゃん!!』って叫んだ子?!
小学生女児、ふたりも異世界に転移しちゃってるとは?!
地球の日本の方は大騒ぎですね。
同じ都市で、高校生ふたりに引き続き、小学生もいなくなっちゃったとか?!




