2 落下
聖女と勇者の性別逆転異世界転生から16年。
何やら物語が動き出しました。
どうぞよろしくお願いします。
「わあぁぁ、七瀬! 大丈夫だからな!」
和也が私にしがみつきながら目をつぶって叫ぶ。
「うるさいな、近くで叫ぶな」
私が低い声で言うと、和也が「うう、機嫌悪い?」と呟いた。
「これはイルバニアの転送魔法陣だろ?
この光は聖魔法の……、和也は忘れてる?」
「忘れてるわけないだろ!
というか、今は前世のことはあまり思い出したくない!」
私は和也の強張る顔を見て、ふっと笑った。
「あ、笑ったな」
和也が顔をしかめる。
「ほら、姫、もうすぐ着くぞ」
「姫って言うな!」
私は和也を引き寄せると、着地のタイミングを計った。
足に地面の感覚。
うまく着地のタイミングで膝を使うが、やはり前世の時のようにはいかず、膝をついてしまった。
「七瀬、大丈夫か?!」
焦る和也の声。
「くっ、不覚。
でも、姫を守れて良かった」
「前世の影響受けすぎっていうか……。
今は女の子なんだから」
和也が私の膝を気にしながら、支えて立ち上がらせてくれる。
「さっきの小学生女児は姫を追ってきた魔族だろう」
「ぷっ、小学生女児」
和也が笑う。
私は膝の土を払った。
校外学習中でジャージだったのは助かった。
制服だったら、スカートで動きに制約があり、膝をついたら擦りむいていただろう。
そういえば、展望室はどうなったのだろう……。
「ここはイルバニアなのか?」
私は森の中と思われる周囲を見回しながら言った。
「確かめてみる」
和也が両手を胸の辺りで組んで目を閉じて祈る。
きれいな青白い光が和也の身体を包み、発光する。
前世で見慣れた光景。
私は少し苛立った。
和也は前世の力、聖魔法の力を失っていなくて、こうやって使えて、さっきも私を守ろうとしてくれた。
なのに、私は……。
自分の細い白い手を見て、悲しくなる。
まあ、同年代の女子の中では私は背が高くて、力もある方で、運動神経もあってと、まあ、体格や体力的には恵まれている方だとは思うが……。
勇者だった時の感覚が残っているのに、それを全く生かせない。
それに今は武器を何一つ持っていないのだから、足手まといのなにものでもない。
和也が目を開けた。
「そうだね。ここはイルバニアだ。僕達の前世の世界。
この魔法陣は、僕が展開した結界に気づいたマーティスが転送してきたものらしい」
「マーティス、生きてるのか!
あまり時間が経ってない?!」
「いや、10年以上、2,30年ってとこかな?」
「私達が転生して16年?」
「うーん、時間の流れが微妙に違うのか歪んだのか……」
読んで頂きありがとうございます。
これからもお付き合いして頂けたらうれしいです。
1000字じゃ、あまりにも短い?!
ということで、時々は不規則投稿ありっちゅうことにします。