10 恋人 ※和也視点
今回は和也視点です。
時々、他の視点を入れてく予定です。
どうぞよろしくお願いします。
七瀬がとてもかわいい。かわいくて仕方がない。
なんだか気持ちがふわふわする。
「魔力量を上げる練習なら、マーティスとかと、練習してもいいのでは?」
「! ダメ、魔力の癖とかあるから! 僕以外とはしないで」
「わかった……。
……で、いつまでこうしてればいいの?」
僕はそこで七瀬の身体の上に半分乗っているような体勢になっていたことに気がつき、あわてて「ごめん」といいながら、両手を放して、七瀬の横にごろんと横になった。
七瀬を見ると、手のひらを上に翳して手のひらをうれしそうに見ている。
七瀬がかわいい……。
魔力の練習だと言って………、キスしてしまった……。
七瀬も驚いていたけど練習だと信じてるみたいで、ちょっとあわててしまった。
イルバニアに転移して、七瀬はいつもよりおとなしい。
だから、本当は別の部屋に泊まった方がいいとは思ったけれど、七瀬が不安がっているのでと言って、同じ部屋でベッドを部屋の対に離して設置という、面倒な用意をお願いしてしまった。
本当は七瀬と離れるのが不安なのは僕の方なのに。
前から、ずっとずっと前から、七瀬のことが好きだったのだと思う。
母によると七瀬に初めて会ったのは0歳の時、僕達が住んでいた街の子育て支援拠点という赤ちゃん連れの親子が遊びに行ける施設に初めて行った時のことだそうだ。
ちょうど同じくらいの親子がいて……、どこかで会ったような気がして、お互いに何となく声を掛け合ったそう。
それからはずっと七瀬がそばにいたという感じだ。
七瀬がにぱっと笑うとすごくうれしくなる。
女の子にしては豪快な笑い方と周囲からは言われていたけど、それがすごく、僕は好きで、うれしかった。
夢の中で七瀬に似た笑い方をする男の人に会って、それをきっかけに自分の以前、つまり前世についていろいろ考えたり思い出せるようになって……。
8歳の時、思い切って七瀬にそれまでにわかったことを打ち明けてみた。
七瀬なら笑ったりしないで、ちゃんと聞いてくれると確信が持てたから。
そうしたら、七瀬は本当に夢の中の勇者ナーセルの生まれ変わりだった。
僕の前世のカージュさんがずっと片思いしていた人。
カージュさんをとても大切にしてくれて、魔王を封印することになった時も……、最後まで一緒にいてくれた人だ。その時にやっとお互い好きだったことを知って、恋人らしいことは何ひとつできなかったようだけど。
あの女の子がメルティトなら……、話をすることはできないだろうか?
メルティト、カージュ、ナーセル。
カージュはメルティトの暴走した力を封印するために聖魔法でお互いの魂を共鳴させた。
メルティトの暴走と魔力と魂は封印……、完全に封印はできていなかったと思う。
カージュとナーセルの魂はその時の時空の歪みから異世界まで飛ばされてしまったわけだから。
メルティトの魂に触れた時、彼がカージュともう一度話したいと願っていたことがわかった。以前に会ったことがあるらしい。
でも、拒絶され、カージュのそばにいるナーセルに激しく嫉妬していることも。
それならば、何とか話し合うことはできないだろうか?
読んで頂き、どうもありがとうございます。
これでちょうど10000字ぐらいになりますね。
これからもお付き合いいただけたらうれしいです。




