1 邂逅
前から書きたいと考えていた聖女と勇者ペアの話。
だいぶ設定が変わって、さらに男女逆転しちゃいました。
これはこれでいろいろ楽しく書けそう。
シリアスな話ではなく、ほのぼのしていく予定です。
以前の連載物は、自分が文字中毒気味なので1話ガッツリ読みたいと3000字と決めて、毎日2話連載するのがけっこう大変ではあったので、今回は1日1投稿、1話1000字と決めました。
これなら無理なく毎日投稿できそう。
どうぞよろしくお願いします。
「見つけた!」
高い可愛らしい声が響いた。
ん? 和也の方からだ。
私はそちらを見た。
和也が戸惑っているのが見える。
ここはこの都市の展望タワー。
私と和也は幼馴染で、幼稚園、小学校、中学校と同じ時を同じ場所で過ごしてきた。
今、高校生になって、初めての校外学習がお馴染みの展望タワーで……、遠足らしい小学生の群れと一緒になったところだった。
「見つけた! 聖女カージュ!」
小学校低学年と思われる少女が和也の前に立ち塞がるようにして手を広げた。
「僕は……、今は、違うよ!」
和也の表情が強張っている。
「和也、なんだよ、あれ?」
「知り合い?」
和也の友人の新田と高橋も戸惑っている。
私は慌てて和也のところに駆けつける。
「どうした、和也!」
「おお、和也の保護者、七瀬ちゃん。
あの子、知ってる?」
高橋の言葉に小学生女児を見る。
「お前は……勇者?! 勇者は滅ぼす!!」
小学生女児は私を見るなり叫んだ。
は?
私の前世が勇者だということ、知ってる?
この子もイルバニアからの転生者か?!
小学生女児が手を打ち合わせると、空気感が変わった。
何だこれ、イルバニアの時の……、魔法陣を展開する時の……。
和也が私の手をつかんで走り出す。
「逃げるぞ、七瀬!」
「逃げるって!」
私は和也と一緒に走り出す。
なぜか停電も発生したようで、エレベーターが緊急停止となり、パニックが展望室に広がっていく。
「和也、階段!」
私は非常階段のドアを指差した。
ふたりで非常階段のドアを開けようとするが、鍵が掛かっていて……。
悲鳴に展望室の方を見ると、小学生女児の背後に巨大な黄色い光でできた魔法陣が展開し始めたところだった。
「メルちゃん!!」
小学生女児のお友達か?
同じくらいの女の子が叫んだ。
メルちゃん? 黄色い光の魔法陣?
メル……、もしかして……。
「和也、私の後ろに隠れろ!」
「何言って!
七瀬こそ、今は女の子なんだから!
僕の方が、まだ魔法が使える!」
和也が叫んで青白い光を発生させて、私達の前に結界を展開した。
その時、足元に和也の魔法と同じ、青白い光の魔法陣が現れたかと思うと、床の感覚がなくなり、私と和也は空中に投げ出される。
和也と抱き合いながら、展望室を見た。
小学生女児が手を伸ばし、こちらを必死な表情で見ている。
彼女の後ろの魔法陣からは何か巨大な黒いものが出てこようとしているみたいだ。
「ゴジラ?!」
最後に新田の声が聞こえた気がした。
読んで頂きありがとうございます。
これからもお付き合いして頂けたらうれしいです。