起き上がれブタキャラ、ベッドから!
日曜の朝。
「いつまで寝てるんだ、早く起きろ!」
「ぐほお!?」
寝起きのベッドを襲撃してくるパターン!?
目を開けると、オレの腰に乗ってる神様が!
「うう……」
「なぜ泣く!? そこまで強くやっとらんぞ」
「憧れのシチュエーションすぎて……夢が叶いました」
「しょうもない夢だな……」
「その死にぞこないのセミを見るような目も最高です……」
背の低い女子に、屈服されながら蔑まれる。
こんなに嬉しいことはない……。
生涯に一片の悔い無し!
天から光が振り、小さな天使たちがくるくる回ってフライング。
「昇天してる場合じゃないぞ。今日も学校ないんだから」
「そうですね」
MPを貯めなきゃいけないからね。
1日中家でゲームやってちゃ駄目なんだよね。
「1日中家でゲームやります」
「駄目に決まってんだろ!」
「ぶふぉー!」
馬乗りからのビンタ!
たまんねえええ!
左頬がじんじんとするのが、もうね。いや、最高ですね。
相手が神様じゃなかったらMP相当貯まるのにね。
でもこの、MPにならないところが贅沢なんだよな……。
「今ので十分だな?」
「今ので十分です」
ご褒美をもらいすぎたので、モチベーションがすごいぜ。
腰に神様がまたがってるという、贅沢すぎる状況で本日の行き先を考えます。
服は買ったから、次はどこに行くかな。
コンセプトカフェはビジネスだから罵られてもノーカンだった。
そう考えると、容赦なくボロカスに言ってくれる素人ってことになるな。人に文句を言ってる人……
「老害か」
「ほう」
クソジジイとかクソババアから、ボロカスに言われに行くぞ。何言ってるかわからないフガフガした老人に会いに行こう、老人ホームへGO!
「いやだ―――――――!」
「自分で言ったんだぞ」
なんでジジババにボロカスに言われなきゃいけないんだよ。ヤダよ。
ジジイに怒られて興奮するわけ無いだろ!
ドMを舐めるなよ?
まだ子どものほうがいいじゃん。子ども……
「それだ―――――――!」
「子どもにはボロカスに言われたいのかよ」
言われたいでしょ。そんなもん。言うまでもないでしょ。リボンめっちゃつけてる女児からボロカスに言われたいでしょ。よし、幼稚園へGO!
「誰もいねえ―――――――!」
「日曜だからな」
学校が休みのときは幼稚園もやってねえのかよ!
誰も遊具で遊んでねえじゃねえかよ!
じゃあ、どうしたらいいんだ!
「あっ、産婦人科とか!? 生まれたばかりの赤ちゃんなら日曜でもいるよね!?」
「赤ちゃんに人を馬鹿にする心あるわけないだろ。バカか」
「バカだ―――――――!」
赤ちゃんに罵倒されるのはムリだー! バカでもわかることだー!
「どうしたらいいんだ……女児……ツインテールリボン女児に踏まれるためにはどうしたら……」
「いつの間にか妄想が具体的になっててキモいな」
「ありがとうございます!」
「褒めてないから。本当に思ってるだけだぞ」
「ありがとうございます!」
「いや、お前が本当にキモいんだって」
「ありがとうございます!」
こんなただのモブだった俺が、ここまで言われるようになるとは……
「いや、周囲にバレてなかっただけで中身は心底気持ち悪いぞお前」
「そんなあ……へへへ」
「もちろん褒めてないぞ」
褒められるより、けなされる方が嬉しい。だからなんだよな。優しい神様。
「いや、そういうわけでもないが……まあいいか」
大きな二重の目を、ジトりとさせる。うーん、この表情。好きです。長くて整ったまつ毛一本一本が、俺を見下ろしているよ。
「お前は幸せそうだな」
「神様に出会ってからずっと幸せですよ」
「そりゃ神様冥利に尽きるな」
俺より信仰心の厚い教徒いないと思うよね。
「そんなことはないけどな」
さすが神様、俺以外の人間にも優しい。
「いいから早く行く場所決めろよ」
「あひん!」
生足で蹴ってくれたぞ! くぅ~、なんて可愛らしい足で、なんと丁度いい力で蹴ってくれるのか。
少しの毛もなく、白くて美しい肌。適度な筋肉と、柔らかい肉感。キックではなく、足で強めに押すようなやり方。すべてが完璧すぎる。
これが神か。
「神をなんだと思ってるんだ……」
もうちょっと余韻に浸りたい。
「早くしろっての」
かかとで踏まれるのもいいが、足先でこづかれるのがこんなにいいとは……。はあ~。ふぅ~。
「……」
あぁ~、呆れ果てた目が最高すぎるぅ~。はふぅ~。んほお~。
「消えようかな」
「オーマイゴッド!」
「確かにお前の神だが」
俺の神……。
なんとありがたいことだ……なむなむ。
「そりゃ仏様だろ」
ウチの神様、ツッコミ上手だな。
さて、呆れられるのは嬉しいが、いなくなったら淋しいので、頑張らないといけません。
日曜に女児に会える場所。
なんという難問だ……。ぐぬぬ。
「普通に近所の公園に行けばいるだろ」
「公園!?」
その発想はなかった!
まさに神がかり的発想!
「普通にわかるだろ……お前、別に馬鹿じゃないはずなんだけどな……」
「いや! 馬鹿です! 愚か者です! どうしようもない低能です! 園児でもわかることがわからないんですから! どうぞ罵ってください!」
「いいから公園行って来い」
「あっ」
腰の重みが、フッと消えてしまった。
なんと幸せな時間だったんだ……。1日中ゲームする休日なんてもう来なくても構わないぜ。