神様のためなら、いくらでも戦います!
「ブタキャラ、待ってたよ」
なんとワギュウさんが俺を待っていたそうです。
やめてよね、好きになっちゃったらどうするの。
腕組みで強調される大きな胸。その豊満なボディをまるで隠せていない黒いレザーの格好。非常にけしからんですよ。
「いやらしい目だね!」
「ありがとうございます」
エロ目で見て怒られる。最高だ。
「さあ、倒すよ、ブタキャラ。黒毛和牛が食べられない世の中のために!」
じゃあ、すき焼きが食べられる世の中を守るために戦うか。
ワギュウさんは、今回も右腕を振り上げて怪人を召喚した。前回のぶりしゃぶ美味かったからな。今回はなんだろう。
「さあ、ブタキャラを倒すのよ、怪人イクラ男」
「イークラクラクラー!」
「うわ、いくらかー! やったー!」
まるでミャクミャク様みたいな怪人を見てるんだが、もうイクラ丼に見えるね。
好きだぜ、いくら。神様と食べられるなら、戦いますよ!
「スーパーヘンタイパワー! プリーズヒットミー!」
俺は犬のように神様の周りを這い回ってから、ジャンピング土下座して、神様の靴をぺーろぺろ。
「きも!」
神様によるムチで変身!
女装魔法少女にしか見えないヒーローとなった。
「うーん、やはりキモいわね、ブタキャラ!」
「ありがとね、ワギュウさん」
こんな美人から言われるのホントご褒美だぜ。
まさに転職といえよう。魔法少女。
「いけ、怪人いくら男!」
「クラー!」
「うわー!」
いくらに見えるオレンジのボールが大量に飛んできた。
なんとか避けるが。
ドーン!
バーン!
ボールが壁や地面に当たると、まあまあ強めの爆発が起きる。イクラ爆弾だ!
「ぬをー!」
逃げ回ることしかできねー!
基本的に格好がつかないんだよな。
「ふふ、まぬけな逃げ方」
ワギュウさんにそう言われると……嬉しいですね!
もっとまぬけになりたいよ!
「四つん這いで駆けずり回って……情けない」
うーん、言いたいことを言ってくれる。そしてそれが言われたいことなのよ。なんていい悪の幹部なんだ……。
「ぐはあ!」
いくら爆弾が、足にあたった!
どちゃくそ痛え!
ワギュウさんにムチで叩かれるなら嬉しいが、いくら爆弾はイヤですね!
「か、かみさまー!」
「いや、自分で戦えよ」
「ありがてー!」
神様って、助けてくれるものだと思ったら大間違い!
HELPしてくれない、それこそが俺にとってのGOD!
「しかし……」
ブリ男に熱攻撃して、ブリ照りになったのは良い。
いくらなんて、寿司か丼じゃん。
どうやって攻撃したらいいんですか?
「うひー」
ドカンドカンと弾け飛ぶ爆弾を避けて逃げ回るのみ。
なにか……倒すイメージ……いくら……ん!?
普通に、噛めばいいのでは!?
「カミカミー!」
両手を前に繰り出し、上下からプレスのイメージ。
重力の魔法により、潰す!
「くらくら~」
よし、ピヨらせたぞ!
「よし、いけ」
「はい、神様!」
神様にポケモンみたいな扱いされる俺!
もっと雑な扱いで大丈夫ですよ!
さて、詠唱しますか。
「侮蔑の眼差しに、興奮を感じ……」
やはり呪文だと、魔力が込めやすい。
「軽蔑の言葉に、歓喜を覚え……」
パワーが、どんどんと集まる。
「足蹴にされては、恍惚となり……」
ワギュウが「くっ」と言えば、神様は「ふっ」と言う。前回みたいにもっと馬鹿にしていいのよ?
「罵倒を食らわば、快楽とする……今、変態の力を、魔力に変えて、尊き命が食材にならんことを!」
このセリフね、言ってて気持ちいいです。ええ。真似してもいいよ。
「ブタキャラ・クッキング・ジャスティスパワー!」
いくら男に向かって手を突き出す!
「いくらあああああああああ」
そして消えゆく怪人いくら男。
「めしあがれー」
そして登場する、ちゃぶ台とタライ。
「覚えてろ!」
ワギュウさんが消えた。忘れるわけないですよ。
「さて、食べよか」
「食べましょう」
座布団に腰を下ろすと、タライからお寿司の香り。酢飯だ。
「いくらは手巻き寿司だって。巻いてやるよ」
「こういう優しさはいくらでもして欲しい!」
俺はもちろんドMだが、ママに甘えたい気持ちもありまぁす!
「誰がママだ、気持ち悪い」
「ありがとうママ!」
気持ち悪いといいながら、いくらたっぷりの手巻き寿司を手渡ししてくれた。
飴&ムチ! 最高すぎるだろ。
「おや。普通のいくらと味が違うんですね。もぐもぐ」
「鮭のいくらは養殖してないからな。これはトラウトサーモンのいくらだぞ。もぐもぐ」
「そうなんですねえ。もぐもぐ」
「なかなか養殖が難しいみたいだな。もぐもぐ」
「人類が頑張って養殖を成功させていってるんですねえ。もぐもぐ」
「それを悪いことだと言い張る神がいるってわけだ。もぐもぐ」
「ふむう。まあ俺にはよくわかりませんが、こんなに幸せな時間がもっと続けばいいと思います。もぐもぐ」
「それでいい、それでいい。ほら、もっと食え」
「ありがとうございます」
手巻き寿司って、こんなに幸せなイベントだったんだなー。
ま、誰と食べるかによるのか。
神様にお供え物をするのは、案外一緒に食べたいと思っただけだったりしてな。