表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

はじめての戦闘! 敵幹部にもぶたれたい!

 高校から帰り、風呂入って、飯食って。

 あまりにもいつも通りの日常で、今日の出来事が夢だったのかと思った頃。


「さて、そろそろ戦いの時間だな」

「あ、神様」

「ちゃんとお前が……」

「お前?」

「クソブタが」

「ありがとうございます」


 頼むよ神様。サボらないでよね。

 神様はルックスも最高だが、声も最高だよ。澄んだ水のような、麗しい声なのに、罵倒するときは妙にエロティックなんだよな。

 要するに、はっきりいって早見沙織なんだよなあ……。罵倒されるなら一択なんだよなあ……。丹下さんも捨てがたいけど……。


「おいクソブタ」

「ありがとうございます」

「クソブタが普通に日常を送れるように、敵が出てくるのは夜寝る前だけってことにしておいたから」

「優しい世界ですね」

「スマブラみたいなものだからね」


 男子兄弟が宿題終わらせた後にゲームするみたいな感覚なのか……。

 突然襲ってくるもんだと思ってたけど……。


「じゃ、そろそろ戦いでいい? トイレ大丈夫?」

「優しいな……優しくないほうが嬉しいんですけど」

「しょんべん漏らすなよ、このクソブタが!」

「はい、頑張ります!」


 その刹那。

 身体が瞬間移動した。

 

「どこだこれ……」


 荒れた土地で、人どころか動物もいなさそうな。

 芝はあるけど、木は無くて、妙に高い丘だけある。似たような場面を見たことがあるとすると、そうだね、ナメック星だね。

 思う存分戦える、そういう感じです。


「人間と動物のどっちの味方か、って戦いだからね。被害を出したら意味がないからね」

「神様!」


 声だけじゃなくて神様がそこにいた。

 やっぱ顔が見れた方が嬉しいなー。なんて可愛いんだ。

 この世界では神様と一緒にいられるようだ。嬉しいなあ。


「見惚れてる場合じゃないよ」


 くいっと顎で向こうを見ろって合図された。似合うなー。素敵だなー。


「見惚れんなっつってんの」

「ありがとうございます」


 今、前蹴りをいただきましたー。ありがたいですね~。

 じゃ、見惚れるのをやめましょう。


「アンタが、ブタキャラってやつかい」

「おっ?」


 敵なのかな?

 腕組みをして、かっこよく立っている女性……あ、いかにも悪の幹部って感じだ。露出が多くて、黒くて。神様と似てるな。

 てか、神様のお姉様って感じだな。25歳のスタイルの良い巨乳の神様と言ってもいいような。ぶって欲しいなー。


「あたいは、ワギュウ。養殖されている黒毛和牛のために戦う女よ」


 なるほど……明らかに悪っぽい雰囲気なのに、ちゃんと正義を背負ってるのが洒落くさいなあ。そもそも和牛って人間が作った命じゃねーか。ややこしい。

 でも、牛って感じするね。体つきが。うん。

 え?

 てか、あの人と戦うの?

 倒したくないんだけど。むしろ倒されたいんだけど。


「いきなり幹部と戦わないから」

「ほっ」

「ほっとすんなよクソブタが」

「ありがとうございます」


 神様はちゃんと罵倒してくれるから本当に嬉しいな。

 ワギュウは、かっこよく右手を挙げるとバリバリという音と光とともに、何かがやってきた。召喚ってことでしょう。


「さあ、ブタキャラを倒すのよ、怪人ブリ男」

「ぶーりぶりぶりー!」

「いかにもなやつが来たな」


 もうね、でかいブリの頭から手足が生えてる的な。こいつは躊躇なく倒せるぜ。

 ていうか、変身しないと。


「どうやって変身するんですか神様」

「変身するときの掛け声と動きは、自分で考えて」

「えっ!? 俺が自分で?」

「これで変身できる、っていう気持ちが重要なの」

「なるほど」


 変身か……。

 ブタキャラに変身するんだよな?


「スーパーヘンタイパワー! プリーズヒットミー!」


 俺は四つん這いでうろうろしたのち、大きくジャンプして一気に土下座。神様の靴を舐めた。


「きも!」


 神様が自然な流れで、俺のケツにムチを入れる。

 そのタイミングで、ぱーっと光が溢れ、俺は変身した。こんなシーンの変身バンクを作ることになったらアニメーターがブチギレるだろう。


「変身できた!」


 できたが……どういう格好しているのだろうか。


「単純に、ピンクの魔法少女の衣装を着ただけのお前だね」

「ええ!?」


 そんなコミケスタッフのコスプレみたいな!?

 なぜ魔法少女なんすか!?


「大丈夫、めっちゃキモいから」

「そうですか」


 神様がそう言うなら間違いないね。

 キモい方がいいもんね。


「ほんとキモいわね」

「ありがとうございます」


 ワギュウもキモがってくれました。ありがたいですね~。

 蔑む表情が、似合いますね~。蹴って欲しいですね~。


「いけ、ブリ男!」

「ぶりー!」

「うわっ」


 でかい大根みたいなので攻撃してきた。ぶり大根ってことかな?

 なお、変身したところで動きが早くなるとかはない模様。ほんとに大丈夫?


「食らっても、死にはしないから。痛くてもいいでしょ」

「やですよ!」


 神様やギャルならいいけど、ブリ男に殴られても嬉しくねえよ!

 痛かったらなんでもいいわけないでしょうよ。


「ぶりー!」

「うおー!?」


 ほうほうのていで逃げ回る。

 華麗とはほど遠いバトルだな!

 とてもテレビでは放送できないし、子どもの目はキラキラしねえよ。

 んあ~、逃げ待っててもしょうがねえ!


「こ、攻撃はどうするの、神様?」

「それもイメージでいけるから。魔法少女らしい感じでやってみ」


 神様の説明が丁寧じゃないですねー!

 この雑な感じ。プレイみたいで嬉しいですね。やっぱ神様サイコー!

 えーっと、相手がブリだからな。


「て、てりー!」


 俺が両手を突き出して、そう叫ぶ。ベギラマのイメージが再現される。熱攻撃ね。


「ぶりー!?」


 ブリ男が、熱に苦しむ。


「くっ、なんて魔法の力が強いの!?」


 ワギュウがビビっている。

 ビンタしてくれた先生に感謝ですね。


「いまので、使ったMPは6よ」


 なるほど……そのくらいか。

 しかし、いい匂いだな。


「くっ、攻撃魔法でブリ男を照り焼きにするなんて……なんて邪悪なの」


 ワギュウさんからすると、俺は邪悪とのことです。ブリと言ったら、照り焼きだろうがい。


「いまのうちに、必殺技よ!」

「必殺技?」

「そういう気持ちでいけばいけるから」


 ふむ……。

 さっきの魔法もなんとなくいけたから、いけるか。


「自分が思う強力な魔法のイメージでね」


 確かに「てりー!」で倒せる気がしないもんな。

 個人的には詠唱が長ければ長いほど、強いイメージだ。

 ええっと……この体内の魔力をこう……表現したいね。


「侮蔑の眼差しに、興奮を感じ……」


 両手の中に、光が集まってくる。


「軽蔑の言葉に、歓喜を覚え……」


 きてるぞきてるぞ……


「足蹴にされては、恍惚となり……」


 神様が「なんだコイツ」という目で見ています。嬉しいね。


「罵倒を食らわば、快楽とする……」


 ワギュウからも「なんだコイツ」という目で見られている。気持ちいいね。


「今、変態の力を、魔力に変えて、尊き命が食材にならんことを!」


 手の中にある、凝縮された魔力を一気に開放する!


「ブタキャラ・クッキング・ジャスティスパワー!」


 ブリ男に向かって手を突き出した!

 強烈な光線が敵を撃ち抜く。まさに必殺技!


「うわあああああああああ」 


 断末魔を残して消えていく。


「めしあがれー」


 光線が消えた後には、こたつと鍋があった。どういうこと?


「くっ、この外道め!」


 ワギュウが、シュッと消えた。

 勝ったんだな。


「さて、勝利の食事としようか」

「神様」

「極上の養殖の鰤は、ぶりしゃぶで食べるのが美味いんだと。一緒に食お」


 ほお~。

 こんな普通の幸せもあるんですね?

 美少女とこたつで、美味いぶりしゃぶかよ。

 ガスコンロの上の土鍋からは湯気が立ち上り、中には昆布が沈んでいる。

 神様が菜箸を取って、鰤をつまんだ。こんな露出の多い格好でやるのはレアでしょうね。へそ出し黒ボンテージですからね。


「ほれ、このくらいレアで食べるのが美味いぞ」

「あ、ありがとうございます」


 神様がとんすいによそってくれた。ポン酢とあさつきも添えてある。


「いただきまーす」


 うわー。

 うめえー。

 ブリ男、美味すぎるー。


「養殖で太っているからこその脂の乗りだな」

「しゃぶしゃぶだと、さっぱり食べられるのに、旨味が凄いなあ」

「これを人間の業とするか、妙とするかだな」

「こんな幸せなことが、悪であってたまるかって感じですけど」

「お前はそれでいい。この感じで戦っていってくれ」


 イヤな顔をされるのは好きだが、微笑んでいる神様は本当に可愛いな。

 この癒やしの時間を糧に、明日も頑張ろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ