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恋と愛の本棚

幼馴染みの男子に『お互い30歳になっても結婚してなかったら結婚しちゃおっか?』って冗談で言ったけど、本当に結婚することになりました。



「あ、そう言えば俺、彼女と別れたんだ」


 夕食を食べ終わり、テレビを見ながらぼんやりとしていると、幼馴染みの弘也が言った。


「また?どうせまた、私のせいでしょ?」

「んー……まあ、果奈のせいではないけどさ、果奈と仲良くしてるのが気にくわなかったみたいでさ」

「は~……だから言ってんじゃん、彼女いる時は私の家に来るなって。いくら私ら幼馴染みとは言え、男と女なんだから、彼女さんからしたら嫌でしょ」


 弘也はカッこ良くてなんでもできるやつで。だから昔から女子によくモテるし、よく女子に告白されている。弘也も弘也で、告白されたら、その時彼女がいなかったら「いいよ~」って軽く付き合う。

 幼馴染みとは言え私は女だし、彼女ができたら普通は会うのを控えそうだけど、弘也は彼女ができても、こうして私のところにちょくちょく遊びに来たり、私を誘って一緒に出掛けたりする。そんなことするから、弘也の彼女が、私のことを「弘也の彼女」だって勘違いして、弘也はよくフラれている。

 だから私は大学を卒業した後、遠くの他県で一人暮らしすることにした。弘也から離れるために。

 けど暫くすると、弘也は何故か、私の住むマンションの別の部屋に越してきた。その時は本当に、なんの嫌がらせだろうと思った。けど弘也は「果奈が傍にいないと寂しい」とか言いやがった。何コイツ可愛いかよって思って、結局こうして今も、遊びに来ることを許してしまっている。


「はぁ~……ほんと、あんたとは兄弟てか、家族だったらよかったのにってよく思うわ」

「なんで?」

「だって、家族だったら、こうして会っても誰も文句言わないし怒らないでしょ」


 そう言うと弘也は顎に手を当ててう~ん……と、何かを考える仕草をした。そして。


「じゃあさ、家族になっちゃおっか」


 と、弘也はピコーンと、何か思い付いたような顔をしたかと思えば、そんなことを言った。


「は……?ナニソレどう言うこと?」

「結婚しようってことだけど?」

「は?いやいやいや!何で突然、結婚する話しになるの?」

「だって、果奈と家族だったら、果奈と毎日会っても良いんでしょ?それに前に果奈『お互い30歳になっても結婚してなかったら結婚しちゃおっか?』って言ってたし、明日俺30歳になるでしょ?果奈もこの前30歳になったし、丁度良いかなって」

「……確かにだいぶ前に、酔っぱらってそんな冗談言ったけど……。てか、結婚するってあんたどういう意味かわかってるの?夫婦になるってことだよ?兄弟になれるわけじゃないんだよ?」

「まあ~良いじゃん、夫婦でも。果奈は嫌なの?」


 そう言いながら、弘也は私の顔の傍に顔を寄せた。私は反射で顔を横に向けた。


「べっ、別に嫌じゃないけどさ。けどあんた、結婚しちゃったらもう彼女なんて作れないんだよ?」

「いいよ、果奈と一緒にいても良いならそれで」


 きょとんとした表情かおをして、弘也は言った。ほんと何コイツ、可愛いかちくしょう!と、私は内心で思いながら、顔を熱くする。


「そっ、も!そう言うことじゃなくて!弘也は私のこと、好きなの!?それも、兄弟じゃなくて女として!じゃないと、弘也と結婚はできないよ!!」

「女として?果奈を?何言ってるの?果奈は女の子じゃん?それに、果奈のこと大好きだけど?」

「だー!!そう言うことじゃなくて!何て言うかその~……キ、キスとか、セッ……それ以上のこととか、彼女としてきたことを、私とできるのかって聞いてるの!」


 私がそう言うと、弘也は目を瞑り、う~んと腕を組んで悩み始めた。

 そう、私と弘也は、こうしてお家で会ったり、ふたりきりで遊びに行ったりするけど、キスとか……身体の関係を持ったりなんてしたことない。本当に兄弟みたいな関係というか、距離感というか。まあ……私は弘也のことを兄弟なんて思ったことないけど。なんなら、異性としてだいぶ前から好きだけど。

 けど、弘也はたぶんきっと、私のことを姉か妹だと思ってるのかなって。だって、一緒にいてもキスとかしないし、恋人みたいな関係になったことないから。まあ、私の方から迫ったら、弘也は受け入れてくれそうだけども。

 ……まあ私は、万が一それでぎくしゃくして、弘也と一緒に居られなくなるのが嫌で怖くて。だからこうして、兄弟みたいな距離感を保ってきた。ほんと、私は臆病者だなって思う。


 弘也はう~んと考えた後、ぱちっと目蓋を開いて言った。


「……できると思う。果奈と」

「は?なにを?」

「だから、キスとかセックス。果奈とできると思うなーって」

「は……は!?なっ!バッカ!!!な、なに言ってんのよあんたは!!」

「いやいや、果奈が聴いてきたんでしょ。てか、あ~……そっか、そう言うことか。俺、果奈のこと本当の姉ちゃんみたいに思ってると思ってたけど……違うわ。果奈とキスしたいし、セックスしたいみたいだわ」

「!!!?」

「……というわけで、結婚しょっか、果奈!」


 そう言って弘也は、私に抱きついた。


「待て待て待て!!そんな『はい、良いですよ』って結婚できるか!!まだあんたとはそう言うこと……キッとかセッとかしてないのに……」


 私がそう言うと、弘也は私の顎を手でくいっと上げ、そして。


「今、やれば良いじゃん。俺は今すぐに果奈としたいけど……果奈は嫌……?」


 そう言いながら、弘也はまっすぐに私の瞳を見つめる。これまでたくさん弘也の顔を見てきたけど、私に男の顔をした弘也は……初めて見た。


「いや……じゃない。私も弘也と……したい」


 私がそう言うと、弘也は私の唇に深くふかくキスした。






 それから数ヶ月後、私と弘也は、本当に結婚したのでした。






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― 新着の感想 ―
ノリが軽いというか・・・。 近すぎて今まで結婚という概念まで行かんかってという感じですね。
分かりやすくて、スラスラと頭に入って来る様でした。 カジュアルなノリが良いですね~。 もー、婚姻前に、おセッセやキスを済ませるのは当たり前。 いや、欧米では付き合う前にシちゃうから、日本はまだまだ…
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