表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/91

「12月、この月だから?」3.ご到着!


『みなさん、どうぞお部屋の中へー!』


 部屋前の廊下でいちとせから案内を引き継いだチーズはんが、空飛ぶ絨毯形で飛んで部屋に入ってきた。


 部屋の中を飛んで進むチーズはんのあとに続くのは、スノードームン。

 トナカイを先頭に空中を走って室内を進む。


 スノードームンがモノだということは、ここに来るまでの間に担当者が鑑定して、確定している。

 いちとせがスノードームンから許可をもらい、担当者が鑑定した。


 その担当者は、モノの精神体のみの姿を見ることはできないけれど、鑑定はできる。


 ハンカチーズは、精神体も見える者や声しか聞くことができない者などがいるけれど、今回対応する三人は、精神体も見ることができる三人だ。


 テイクの役割、モノについて、相談する際のあれこれ、互いが得た情報の扱いについて、といったことなども、いちとせがすでにスノードームンに説明してくれている。


 スノードームン七人全員が部屋に入ったので、チョコレートはんはドアを閉めた。

 あかワインはんは、部屋の中ほどの位置、ベージュの絨毯敷きの床に立っている。


 赤ワインはんの近くに、チーズはんが降り立った。


 スノードームンの七人も、走る動作をやめて高度を下げ、赤ワインはんとチーズはんの近くで、一列に並んだまま床に立つような形になる。


 チョコレートはんも、そちらのほうへと浮いて進んでから、チーズはん近くの床に立った。


(ん……? 疲れちゃったかな?)


 クリスマスリースが、家に寄りかかっている。


 穴の空いた輪っか面の、飾りのついたほうを前に向けて、縦で立っているような体勢のクリスマスリース。

 その状態で走り続けて、疲れたのだろうか。


 寄りかかられた家のほうは、文句を言うこともなく、あせる様子もない。

 クリスマスリースが寄りかかりやすいよう、家がさりげなく自然に、立ち位置を調整した。


 よくあること、といった風に見えなくもないが、実際のところがどうかは、チョコレートはんにはわからない。


『走っていらっしゃったんですものね。自己紹介の前に、座るところを用意しましょうか』

『うん! そのほうがいいかも』

 赤ワインはんとチーズはんが急ぎ気味に言葉を交わす。


 と、そこに。

『あっ! ボクのことなら大丈夫ー。ちょっと楽させてもらってるだけで、まだまだ元気だよ!』

 聞こえてきた高めの声。


 内容的に、クリスマスリースが話したのだろう。

 言葉のとおり、声からはエネルギーが、しっかり感じられる。


『リースくん、言葉言葉。話し方。初めてお会いした方たちなのですから』

『あっ、家さん! そうだった。えーっと……です、追加で!』


『お話ししやすい感じで大丈夫ですわ、お気になさらず』

 半歩ほど前に出てから、赤ワインはんが柔らかな口調で言う。


『お気遣い感謝しますぞ。みなさんも好きな話し方でお話しくだされ』

 太めながら優しい感じの声がする。

 サンタクロースが一歩前に出てから声がしたから、サンタクロースが話したのだろう。


『ありがとうございます。そうさせていただきま……いただくわね』

 赤ワインはんが途中まで言いかけて言い直した。


『それでは先に自己紹介をしましょうか。チーズはんは、もうしたの?』

 赤ワインはんが、チーズはんのほうを見る。

『ううん、まだ! みんなと一緒にーと思って。赤ワインはんからよろしく!』


『そう? では……。赤ワインはんと申します。よろしくお願いします』

 前を向いて更に一歩前に出た赤ワインはんが名乗り、綺麗に、お辞儀に見えるであろう動作をして、体を起こすような動きをした。


 赤ワインはんが前を向いたまま後方へ。最初の立ち位置に戻る。


 次はチーズはんかなと思っていたら、チーズはんがチョコレートはんのほうを見て、ハンカチの上両角を使い、どうぞどうぞといった仕草をする。


『あ……では』

 チョコレートはんは、少しあわてて一歩前に。


『チョコレートはんです。よろしくお願いします』

 ちゃんとお辞儀に見えるよう、チョコレートはんも深めに体を曲げるような動きをした。


 小さく頷く、少し会釈、ちょっと視線を向ける、などの仕草が、ハンカチのつくりと動き方の都合上、見慣れない相手には伝わりにくいことがある。


 ハンカチが五角形だったら、顔的部分ができて、わかりやすかったかも。

 そう言うハンカチーズもいる。

 とはいえ、五角形のハンカチを見かける機会は、とても少ないように思うのだが。


 体を起こして一歩後ろに戻るチョコレートはんの動きと同時に、チーズはんが一歩前に出た。


『私はチーズはん! はんは三人とも名前の一部で、ハンカチからのはん、なんです。どうぞよろしく!』


 言い終えたチーズはんは、グイン! グイン! という感じに、元気にお辞儀をして元気に身を起こした。


『うん! 覚えた! 赤ワインさんさん、チョコレートはんはん、チーズさんはい! ……あれ? ごめんなさい。頭の中では三人みなさん、はんさんって覚えたんだけど』

 クリスマスリースであろう声。


『呼んでいる相手が誰なのかがわかれば大丈夫よ?』

『そうそう! 赤ワイン、チョコレート、チーズ、だけでも伝わるし』

 柔らかな声で赤ワインはん、明るい声でチーズはん。


『ありがとう!』

 クリスマスリースがまっすぐ立ってから、ピョコリとお辞儀のような動作をし、また家に寄りかかった。


『重ねてお気遣い感謝しますぞ。こちらは、先頭で来たトナカイどんから順に、としますかな』

 と、サンタクロースの声。


『ではさっそく。トナカイです!』

 しっかりとした発声の声。


『ソリです!』

 力の入った元気な声。


『サンタクロースですぞ』

 太めながら優しい感じの声。


『クリスマスツリーです』

 落ち着きと理性を感じさせる声。


『クリスマスリースだよ!』

 高めで、エネルギーたっぷりという感じの声。


『家です』

 ソフトな中に芯がしっかりありそうな声。


『雪だるまです。七人でスノードームンです。どうぞよろしく』

 涼やかながら親しみやすさも含んだ声。


 チョコレートはんの中で、それぞれの姿と声が結びついた。


 クリスマスツリーが少し前に出る。

『スノードームンという名からも伝わるとは思いますが、私たちはそれぞれ、スノードームの中の物たちです』


『実物は、棚やテーブルに気軽に置けるサイズのスノードームなので、それぞれも、もっと小さいですが』

 少し前に出て雪だるま。


『お互いの大きさの感じも、今は違ったりしてるよー。ボク、実際は家さんのドアにかかるサイズなんだ!』

 クリスマスリースの声。


『僕が先頭で一列で来ましたが、スノードームの中では、一列に並んでいるわけではありません』

 トナカイが説明する。


『教えてくれてありがとうございます! えっと、今の状態でも、座ったりできますか?』

 お礼を言ってから訊くチーズはん。


『スノードームン七人みな、すり抜けないと意識すれば、触れることもできますし、立っている感じや座っている感じもありますぞ』

 サンタクロースが答える。


『では、みなさんの座るところをご用意したいと思います! どんな感じで座りたいとか、ご希望をお聞かせください。あちらにいろいろ運んでもらってありますし、それ以外でも、物によっては用意できますので!』


 話の後半のほうでは、部屋の一角をハンカチ右上角で示しつつ、チーズはん。


『おお! またまた、お気遣い感謝ですぞ。私はちょこりと腰かけて、場合によっては背もたれに体を……座椅子がいいですかな』


 チーズはんを見て、部屋の一角を見て、またチーズはんに視線を戻し、としながら、サンタクロースが言った。


『ボクも背もたれがあるのをお願いしたいな。座椅子をお願いします! ちょっと大きめがいいかも』

 クリスマスリースの声。


『私は……できれば、絨毯の上に直接いる、この感じのままが……』

『私も絨毯に直接いるのが落ち着く気がします』

 家とクリスマスツリーが続けて言う。


『そちらも大丈夫です! 直接座ることもできるお部屋なので』

 チーズはんが明るい声で返事をした。


『僕は、ふんわりした感じの、長めの座布団かクッションが嬉しいです!』

『僕も同じ感じでお願いします!』

 トナカイとソリがテンポよく言う。


『……私は、少し体をあずけたい気もしますね……座椅子をお願いするのがいいのかな……』

 少しあとから雪だるまの、考えつつといった感じの声がした。



 部屋担当のメンバーにも手伝ってもらい、スノードームンのうち五人それぞれの希望に合う、もしくは希望に近い物を運んで並べた。


 ハンカチーズの三人が使う物も並べた。

 三人とも、コンパクトな感じの座椅子と、タブレット用の低い台。ちなみにタブレットのケースは、スタンドにもなる物を普段から使っている。


 運んでいるとき、スノードームンも、物を押してみたり、持ち上げようとしてみたりと、運ぶことに積極的に参加してくれようとした。


 けれど、あまりうまく動かせないみたいで、今回はすみませんが私たちは見学で、と少しして雪だるま。


 お気になさらず。お気持ちありがたいです! と、赤ワインはんとチーズはんが、すぐに言葉にした。

 チョコレートはんも大きく頷く。



 スノードームン七人と、ハンカチーズの三人で、内側を向いて円を描くように、座ったり立ったり寄りかかったり。


 チーズはんの右隣に赤ワインはん。


 赤ワインはんの右隣から、トナカイ、ソリ、サンタクロース、クリスマスツリー、クリスマスリース、家、雪だるま、とぐるっと来て、雪だるまの右隣にチョコレートはん。


 チョコレートはんの右隣はチーズはんだから、これで一周だ。


『あらためまして。テイクに相談をと考えてくださり、ありがとうございます。まずはご相談の内容を――』

 赤ワインはんがそこまで言ったあたりで。


『スペシャル抽選とはなんですかな?』

『僕たちでも応募できますか?』

『なんのプレゼントがいいと思いますか?』

『もっと仲よくなりたい相手にどうすればいいかな?』

『――いろいろと知りたいことがありまして』


 サンタクロース、トナカイ、ソリ、クリスマスリースが、違う内容を同時に話し始め、ほんの少しあとから、雪だるまも参加した。


 四人プラス一人の声が、ワッと空間に響き渡る。

 なんとか聞き取って、入力していくチョコレートはん。


 クリスマスのにぎやかな雰囲気が、一気に訪れた気がした。




お読みくださり、ありがとうございます。


次の投稿は、9/20(土)夕方~9/21(日)朝あたりを予定しています【2025年9/14(日)現在】

(状況によっては、9/27(土)夕方~9/28(日)朝あたりになるかもしれません)


今後もどうぞよろしくお願いいたします。


――――

【改稿についてです。よろしくお願いいたします】


〈8月7の改稿について〉

先にご説明したことに加え、育生のルビ追加もおこないました。


〈11月6を改稿予定です〉

 思いがけず手に入れた物なのだが、今のところ使用頻度は低い。

 思いがけず手に入れた物なのだが、普段は別の物を使っているため、今のところ使用頻度は低い。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ