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「4月、うさぎさんの行動理由」7.いろいろ試します

改稿については後書きで説明しております。




 優月ゆづきの隣にかなで、左前に育生いくお、正面にラビィ、右前にゆかり。

 再び同じ配置で席に着いた五人と、優月に近いほうのテーブル短辺側に新たに着席したヨク。


 ここからは、いろいろとチェックしたり試したりしていく。


 まずは優月のタブレットを使い、テイクのサイト内、ラビィの件用の専用スペースで、状況把握機能のチェック結果を見てみた。

 ラビィの状態も、各機能の付与状態も、チェック結果によると問題ないそうだ。


 危険化防止機能は、実感する機会は、基本的にはほとんどないが、チェック結果上は問題がないし、それを信用することも問題はない。


 保護機能がきちんと働きだしたことは、付与された途端、ラビィ本体の綺麗さが増したことから、目に見える形でもよくわかった。

 今日、地面に落ちたときについた汚れも、これまですごしている過程で、落としきれなくなってきていた汚れも、すっかりとれ、花山はなやま家の面々は感心していた。

 帰りに、別口の相談でメンテナンスとクリーニングの依頼を考えていたけれど、ここで叶うとは、とのことだ。


 転送機能と通報機能を試してみる。

 本体と精神体一緒の状態での転送。

 本体から精神体だけを指定しての転送。

 精神体の状態での転送。

 精神体の本体への転送。

 それぞれ実行してみた。


 また、本体の中にいる状態、精神体のみでいる状態での通報も、ラビィにしてみてもらった。

 どれもスムーズだし、ラビィ自身も特に問題ないようだ。


 通報、転送。

 どちらの機能も、使わなければいけないような場面が来ないに、こしたことはない。

 けれど、使う必要がある際には無事に使えそうだとわかり、花山家の面々はほっとしていた。優月たちとしても安心だ。


 せっかくなので、専用スペースからの通報機能の使用と、電話やメールなどさまざまなルートを使っての通報を、育生やゆかりにも実行してみてもらった。

 さまざまなルートからの通報は、なにか緊急で助けを求めたいときに、誰でもテイクに対してできるものだ。


 もちろん、救急医療、レスキュー、警察など、専門組織への通報を優先してほしいが、緊急だけど、どこにどんな対応を求めればいいかがまずわからない、といったようなとき用に、存在しているシステムだ。

 通報システムを、いきなり本番で使うにはハードルが高いと感じる人も多いので、機会を見つけて試用してもらっている。


 また、あわせて試したところ、ラビィの声は、電話などの機械越しでは優月に届かないことがわかった。

 ラビィが喋るところを録音や動画撮影し、そのデータを再生した場合も、優月にも聞こえない。


 これらが可能であったならば、直接会っていない場でも、優月たちモノの声が聞こえるメンバーが、ラビィ言葉を、ほぼリアルタイムで育生やゆかりに遠隔で伝えて、やりとりしている風にできるのだが……。

 結果を知って、花山家の面々は、ちょっとしょんぼりした。


 少しでも元気になってほしくて、優月は話す。

 五十音表や短文のカードで会話する方法もある。

 ものによっては市販品もあるし、使いやすい大きさや素材や内容を一緒に考えて、制作をテイクが請け負うこともできる。


 それを聞いた育生とゆかりは、まずはすぐ使う分を、ひとまず自作してみますと力強く言い、ラビィも身を乗り出した。


 また、パソコンやタブレットやスマホなどを使うモノもいるという話も、優月はした。

 育生とゆかりは、ラビィなら、いろいろ使い方を覚えていそうだし覚えそうだから、なにか用意してみようかと、積極的に考え始めた。


 けれどラビィは、その話を聞いて、自分の両手を持ち上げてみたり、片方の手で片方の手を押してみたりしている。

 そして、顔を下に向け、落ちこんだ雰囲気になった。

 優月はあわてて声をかける。


「あの、ラビィさん。補助器具などを使って、画面やキーボードの操作をしていらっしゃる方もいます。いろいろと工夫していけますから、大丈夫ですよ」

『よかった……!』

 聞いたラビィは顔を上げ、嬉しそうな声を出した。


「いろいろとお疲れさまでした。また、現時点では、付与状態に特に問題はありません」

 ひととおり終え、優月は花山家の面々に言う。

「「『よかったです……! お疲れさまです』」」


「「『ありがとうございます!』」」

 花山家の面々は優月に笑って返してから、ヨクのほうを見てお礼を言った。

 ラビィもお礼を言っていることを、優月はヨクに伝える。


 優月に頷いてから、ヨクが花山家の面々に向かって口を開く。


「こちらこそ、付与を受け入れてくださり、ありがとうございます。現時点で、いろいろ可能なこと無理なこと、様々ございますでしょうし、今後もいろいろと、手探りで進んでいかれる面も多いかと存じます。ですが、みなさまの素敵な雰囲気のご関係でしたら、きっと楽しさを多くお感じになりながら、おすごしになっていけると――そう、感じるとともに、願ってもおります」


 ヨクの言葉に、花山家の面々が笑って頷く。


 続いてヨクは空間から、白い封筒を取り出した。

「こちら、この村の店舗や施設等でご利用いただける、クーポンのセットでございます。今後、いらっしゃる機会も増えるでしょうし、何枚お持ちになっていても邪魔にはなりにくいかと。よろしければお使いください。――なお、私が渡したからといって、クーポンの利用具合や扱い具合が、付与状態に影響することは、まったくございませんので、ご安心を。それでは、私はここで失礼いたします」


 花山家の面々にクーポンのセットを渡し、立ち上がったヨクが、優雅なお辞儀をしてみせる。

 お辞儀を返したり口々に礼を述べたりする花山家の面々に微笑んだのち、ヨクは面談ルームを出ていった。


 途端、部屋の中が、なんだか静かに感じられる。

 その場を支配しかけた妙な沈黙を破ったのは、ゆかりの声だ。

「個性的な方だったわね……。今日、初めてのこといろいろあるけど、これはまた違う意味で、今までにない感じ。素敵な経験が増えたわ」


『うん。それに、急に変わった雰囲気に、びっくりしてる間に付与されてた……すごい』

 ラビィの言葉を伝えられたゆかりと育生が頷く。


「俺も、いろいろ驚いたけど……なんか自分の中に引き出しが増える……かも? でも、クーポンの扱いと付与が無関係とか、言われてみれば、聞いておかないとあとから気になるかもなぁ、って内容の説明もしていってくれるところは、しっかりテイクの人だなって気がした。説明大事だと思うから、テイクの詳しい説明は心強い」

 育生の言葉に、ゆかりとラビィも頷く。


 確かに、テイクは説明を重視しているし、結果、長くなることも多い。

 それが合わないというメンバーや利用者にはいろいろと工夫もするが、説明歓迎! となる相手のほうが、対応しやすいというのも正直なところだ。


「ではお言葉に甘えて、次は専用スペースについて、説明させていただいてもよろしいですか?」

「「『よろしいです!』」」

 優月が少し軽めの雰囲気もまぜて問いかけると、花山家の面々も、それぞれ右手を挙げながら、ノリよく返してくれた。




お読みくださり、ありがとうございます。

今後もおつきあいいただけますと幸いです。


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【改稿について】

【2024年7/8(月)】空白行を入れる位置を変えたり、空白行を増やしたりといった変更をおこないました。


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