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「11月、秋、いろいろ」7.選んだり教わったり


 そのあとも、いくつかのことについて打ち合わせをしたのち。梅幸うめゆきが必要各所とやりとりをする向かいで、佐々木(ささき)は。


(塩むすび……梅……おにぎり……)


(でも初対面の人たちのところで、手で持って大きく口を開けて勢いよく……より、お箸で食べる系?)


(あーでも、相手は別に気にしないかな? 僕が相手側だったら気にしないけど……)


(そもそもさっきから、頭の中が……とりあえず、いったんおにぎりのほうに進んでみて……)


 スマホの画面を見ながら、遅めのお昼ごはん選びをしていた。


 とはいえ、今朝は早くに出発して途中で朝ごはんを食べたため、おなか的には、これからお昼ごはんでも遅めの感はないのだが。


 このあと、佐風さふうの端末使用に向けていろいろ進めていくが、準備の時間も必要。その間、佐々木は、もしよかったらお昼ごはんを、と勧められた。

 これから佐々木と佐風が向かう部屋に届けてくれるのだそう。


 その部屋で、佐々木はお昼ごはんを食べ、メンバーは各所で準備を進め、それから、操作説明や物選びなどをおこなうとのこと。


 ではまずメニュー決めをということで、佐々木はスマホを手に選び始めた。

 佐風はトキと会話中である。


 佐々木が今回、お昼ごはん選びに使っているのは、村にあるお店のメニューをまとめて検索できるシステムだ。こういったものがあると、梅幸に教えてもらった。


 トップ画面から、村内各所に配達可能なもの、というほうにまず進む。

 次のページが表示された。

 お店をまず選んだり、言葉を入力して検索したりもできるが、料理のおおまかな分野を選んで進んでいくこともできるつくりになっている。


 頭の中に浮かんでいる食べ物と、予想される場面での飲食風景。悩みつつ、おにぎり分野へ。


 佐風の、塩梅で、の言葉を読んでから、佐々木の頭の中に浮かんでいるのは、おにぎりたち。


 塩梅の梅は梅干しではないと、どこかで読んだ気もするが、まぁそれはともかく。


 梅幸の名前からは、梅の木や梅の花が浮かぶのに、佐風の言葉からは食べ物が浮かんだ、その違いはなんだろうと疑問に思わなくはないが、まぁそれもともかく。


 とりあえず気分は、おにぎり食べたい、である。


(……ん? これ……)


 おにぎり、お箸でもどうぞ


 そういうメニュー名だ。

 どうやら、お箸とお皿でおにぎりを、ということもできるメニューのよう。

 説明ページに進む。


 おにぎりを一口大にお箸で分けられるよう、海苔も小さく切ったものを選ぶこともできる。

 しんなりが好きなら、おにぎりにつけた状態で。パリッとがいいなら海苔だけの状態で、食べるときに自分でおにぎりへ。


(塩むすびも梅も選べる。これにしようかな……三つとか……食べちゃう?)


(なんか細かくいろいろ選べるんだ……)


(塩むすびは……、お漬けものを一種類選べるのか)


 たくあんを選ぶ。


(梅は……梅干しについていろいろ)


 かたいのか、やわらかいのか。

 味は、しょっぱい、酸っぱい、甘い、どの方向を強くしたのにするか。

 細かくしてごはんにまぜるか、おにぎり内に入れる形にごはんで包むか、別で提供して食べるときに自分で組み合わせるか。


(やわらかいので、酸っぱい系で、別で……。そして、あと一種類は)


 昆布の佃煮にした。

 ピリッと辛めの味のも選べるようなので、そちらを選んでみる。

 ごはんで包まず、別で。


 三つとも、小さく切った海苔を、おにぎりにつけた状態にしてもらうことにした。


(よし、決まった)


 具入りのおにぎりというより、塩むすびプラス具、という感じがしなくはないが、佐々木的に、食べるのが楽しみなセットにできた。


 ちなみに、細かく選ばない、おまかせという選択肢もあった。

 おにぎりの数と海苔のタイプだけ指定、プラス、具の種類だけ指定、という方法も、とろうと思えばとれた。


(あと、飲み物……冷たい麦茶を)


 注文内容が決まったことを梅幸に言い、届け先の指定を梅幸に訊きつつして、注文。



(うん。全部おいしい。それにお皿でだと、一つ食べてから次のじゃなくて、三種を少しずつ食べていけて、これはこれでいいなぁ)


 案内されて来た結界内の和室で、佐々木は届いた料理を楽しく味わっていた。


 面談ルームで、今日ここまで対応してくれた梅幸とトキにお礼を言い、迎えに来てくれたこうの案内で、佐々木と佐風は結界内の、ある和室へ。

 佐風である風鈴は、佐々木がいったん箱に入れて運び、この和室でまたスタンドにかけた。


 今日このあとの対応は行がしてくれて、佐風の言葉を入力して佐々木たちに伝えてくれる役は、モノである熊の人形が担ってくれるとのこと。


 熊くんと呼ばれているらしい熊の人形は、金太郎人形とコンビなのだそう。

 熊の人形に乗るのは金太郎人形だけではないし、別行動のときもそれなりにあるけれど、仲良しな二人なのだという。


 今、室内には、佐々木、佐風、行、熊の人形、そしてもう一人、調達担当のケンゴというメンバーがいる。


 ケンゴは、洗練された雰囲気と気さくな感じと真剣さを、あわせ持ったような人物だ。二十代半ばだという。

 調達担当のほかに、運転、送迎、配達などの担当も受け持っているとのこと。

 モノの声は聞こえないそうだ。


 佐々木と佐風にまず挨拶をしたケンゴは、佐風である風鈴がスタンドにかけられている様子や、使用予定のタブレット、佐風がタッチペンを短冊で巻いて持ってみるところなどを実際に見たあとで、いったん部屋を出ていった。


 その後、いくつかタッチペンやケースやスタンドやミニテーブルや台などを持ってきて、今は、佐風のタブレット使用に向けて、いろいろ試したりしながら用意してくれている。


(それにしても……結界内とのことだけど、なんかこう、特殊な空間内にいるぞ、って感じはしない、というか、わからないというか……)


 室内の各所に視線をやりつつ佐々木は思う。



 結界については、面談ルームにいる段階で梅幸から説明を受けた。


 テイクに、佐々木や佐風を閉じ込める狙いはないし、出たいときには自由に出られる。けれどそれを証明しきる方法はない。佐々木や佐風が結界内に行きたくなくても無理強いはしない。


 そういったことも梅幸は言った。


 佐々木としても、不安や警戒心がないわけではなかったが。


 佐々木と佐風にとってメリットが多いように思える空間だし、モノや持ち主と交流するおもな場であるとのことだし。

 このままテイクと関わっていけば、いつかは行くことを決めそうだなと思った。


 そして、もし仮に、テイクがなにか企んでいたとして。

 しばらく警戒していればそれに気づけるとは佐々木には思えなかったし、いろいろな面でテイクの上を行けるとも思えなかった。

 気にしたところで、もしものときにはどうしようもなさそうだ。


 ならば思いきって、というか開き直って? 初回から案内してもらおうか。

 そもそも、テイクがなにかするつもりなら、結界内にさえ行かなければ安全という話ではないような気もする。


 そんなことも考えつつ。


「……どうする? どうしたい?」

 佐風に訊いてみる。


〈佐風さん『正直、警戒したところで、って気もするし。佐々木と一緒に誰か頼るなら、テイクを信じてみたいって気持ちもある。俺は案内を頼みたいな』〉


「……うん。僕も、正直なところそうも思うし、それに確かに、佐風と一緒に誰かを頼るならテイクを……結界内への案内、お願いします」

〈佐風さん『お願いします!』〉


「かしこまりました」

 真剣な顔で応じた梅幸が、笑顔を見せた。



 で、意を決してやってきた、と言えなくもない結界内。

 今現在、特に危険は感じない、結界内だからどう、という感じもない。


 とりあえず、気にしたところでわからないので、おいしくおにぎりを味わっている佐々木である。


 このあと、タブレットの操作を佐風に教えてくれるメンバーが、この部屋に来ることになっている。

 典子のりこというメンバーとのこと。モノの声は聞こえないそうだ。

 来室予定時刻までには食べ終わりたいと思う。



 典子が予定どおりの時間に部屋に来た。柔らかな雰囲気の人だ。

 典子は梅幸と同年代だと、会話の中でちらっと口にした。


 典子が佐風に操作説明をし始める。

 おにぎりを食べ終え、食器返却等も済ませた佐々木も見学する。


 実は、ある提案を受けて、今夜、佐々木と佐風には出かけたいところができた。

 よって今日は操作説明は、夜前あたりまでの短い時間でとなってしまうけれど、ひとまずできるところまで、という感じでお願いしてある。


 ちなみに、機能付与により、佐風がある動作をすると、端末の電源ボタン等物理ボタンが反応するようになっている。

 佐々木がおにぎりを食べている間に能力者が来て、付与をおこなっていった。


 佐風と佐風用端末間で有効なものであり、この機能付与によって、佐風がどの端末の物理ボタンも扱えるようになったわけではないとのこと。


 基本的な操作方法、安全に使うための注意点、入力の仕方、文字によってやりとりする幾通りかの方法の説明、テイクの佐風用専用スペースの使い方、等。


 佐風と明るくやりとりしながら、典子が教えていく。


 終了予定の時間になった。ここまで、かなりスムーズに進んだようだ。

 続きは明日の午前にだが、勤務時間帯の関係で、別の担当者が来るそう。

 佐々木と佐風は、典子に丁寧にお礼を述べた。


 出かけるまでの時間で、物選びをする。


 操作説明を受ける中で佐風がいくつか試してみた結果、気に入ったタッチペンがあるとのこと。


 ケンゴによると、村内の店に在庫があるそうだ。


 びっくりするような値段ではなかったので、佐々木はひとまず二本購入することを決め、機能付与を依頼する。色は白系と黒系のを一本ずつにした。


 続いて、スタンドや台について。


 スタンドにもなるタブレットケースを使うことになり、グレー系を選択。

 台は、白基調のシンプルな物を自宅用に選んだ。


 ケースも台も、村内の店に在庫があり、購入。


 村で使うときの台は、使う場に合わせて、レンタル等から用意したほうがいいように思えるとのことなので、そうすることにした。



 出かける時間になった。

 佐々木は、佐風である風鈴を箱に入れる。


 行とともに、佐々木と佐風は結界の外へ。

 このあと、ある場所へ向かうバスに乗る予定だ。




お読みくださり、ありがとうございます。


次の投稿は、7/19(土)夕方~7/20(日)朝あたりを予定しています【2025年7/13(日)現在】


(状況によっては、7/22(火)夕方~7/23(水)朝あたりか、7/26(土)夕方~7/27(日)朝あたりになるかもしれません)


今後もどうぞよろしくお願いいたします。



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