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「11月、秋、いろいろ」6.新しい面を知る


 結論から言うと、機能付与済みのタッチペンで試したところ、佐風さふうはスマホやタブレットを操作できた。


 ただ、佐風が試し始める前、佐々木(ささき)は、ちょっと思った。

(試すといっても、モノが使えるようにという機能付与なら、そもそもできるのでは?)


 けれど話は、そこまでシンプルではなく。


 限度とか個々のいろいろな条件的なものとかがあるため、ある機能付与が、どの対象に対してもなんでも有効というわけではないらしい。


 一口に、モノが使えるようにタッチペンへの機能付与といっても、内容的には、いくつかのものがあわさっているのだという。


 おおまかに言うと、モノが使っても端末がしっかり反応するようにとか、タッチペンそのものをうまく扱えるようにとか。


 それらがうまく作用するかどうかはモノによるらしく、特に、タッチペンの扱いの面で、個体差が出やすいのだそう。

 そして、うまく作用するかどうかの条件というか、キー的なものがあるとのこと。


 今回の佐風の場合、短冊でタッチペンを巻いて持ってみることができるというのがキーのようだ。


 たとえば、ぬいぐるみや人形などのように、手があるつくりの物の場合は、この手で持つと考えて、手というか腕というかを自分の意思で動かせることがキーとなる場合が多いらしい。


 実際に自分の手でタッチペンを握ったり持ち上げたりできなくても、機能によるサポートをうまく得られることが多いそう。


 そうでないつくりの物の場合は、どこか、手的な部分と考える箇所で、タッチペンを持つような動きを実際にできるかどうかが、キーとなる場合が多いのだとか。


 実際、佐風が試してみたところ、タッチペンを巻かず、短冊部分で持つと考えて短冊部分を佐風自身の意思で動かしてみるだけでは、タッチペンを扱うことはできなかった。


 ただ、少しだけでも巻いて持てればよく、自分だけで使用中ずっとタッチペンを持っていられなくても、思う位置にうまく動かせなくても、機能に助けてもらえる。


 それに、タッチペンを持ち始めるとき、置くときにも、機能によるサポートがある。

 使い始める時点で、タッチペンと佐風との距離が離れすぎていなければ、だが。


 佐風が、タッチペンを使うとしっかり考えたら、タッチペンを短冊のところに引き寄せることができた。

 そしてタッチペンを使い終え置く場所を考えると、遠すぎなければ、その位置に置くことができた。


 それぞれごとに、いろいろ試してみることで、わかることもあるらしい。


 言葉や風鈴の音で、さまざまなリアクションをしながら佐風がタッチペンの使用を試し、佐々木はそれを興味深く見守った。


 ちなみに、モノによっては、どこか動かせる部分にゴムやテープなどでタッチペンを固定することで、機能がうまく働くこともあるそうだ。


 また、モノが自分の意思で自分のどこかを動かせなくても、機能がうまく働いて、遠隔操作的にタッチペンを使用できることも、ないわけではないとのこと。


 ある機能付与で、どういうことが可能かは、それぞれごとに、まちまちということも多いそう。


 そして、なににどのような機能付与をするか、作用具合による違い、モノ自身の能力や性質が影響する部分など、いろいろからまり合い、全体としてもいろいろな結果になるそうだ。


 トキたちのように、ノートパソコンなどを直接操作という方法になったり。


 それぞれ、さまざま、状況による、個々による。そしてあくまでも、現時点では。

 なんであれ、そういう面はあるのだろうが、どうも超常においても、そういった面が大きいようだ。


 その一方で、それぞれという面が多いにしても、超常について、共通している部分や、はっきりとわかっていることもあったりするそうだから、なかなかに複雑というか不思議というか。


(機能付与といえば……)

 佐々木はふと思う。


 機能組み込みと機能付与は違うのだろうか? けれど、組み込みについてのやりとりなどの中でも、付与という表現もされていたような。


 梅幸うめゆきに質問してみたところ。


 機能付与ではあるものの、少し深い部分に入り込ませる、ちょっと凝った形で入れ込むという感もあり、組み込みという言い方もしている。


「そういう感じだと受けとっていただければ」

 とのことだった。


 いろいろ考えたり訊いたりもしつつ、話は、機能付与したタッチペンで操作可能、ではこのあとどうする? という方向に進んでいく。


 まず大筋として訊かれたのが、佐風の端末使用に、テイクがどの程度関わることを希望するか。


 関わりの少ない例としては、佐々木が用意したタッチペンにテイクは機能付与をするだけ、あとは佐々木と佐風で、という感じ。


 多いサポートの例としては、タッチペンや端末の用意についても相談に乗る、佐風に最初の段階で端末の使用方法などいろいろと説明する、端末を置く台の用意などにも対応する、今後も継続して必要に応じてサポートする、といった感じ。


〈佐風さん『佐々木が希望する塩梅で!』〉


「わかった。――僕としては、多いサポートの例の感じでお願いしたいです」


 モノが端末を使用するということに対しての経験値が、佐々木と佐風の二人とテイクとでは段違い。

 佐々木と佐風の二人だけで試行錯誤、右往左往するより、助けてもらったほうがいいだろう。


(そういえば、端末)

 答えつつ佐々木は思い出す。

 佐々木は今回、あるタブレットを村に持ってきているのだった。


 思いがけず手に入れた物なのだが、普段は別の物を使っているため、今のところ使用頻度は低い。

 今回、村に持ってきてみたのは、いつもと違う環境でなら、それも使う機会があるかもと考えたからだ。


 違うといえば、当初の予定と違う者が使うことになっても、それが佐風なら佐々木としてはかまわない。

 そう思い、佐々木はタブレットのことを、スペック等の情報も込みで話してみた。


 結果、ではその端末の使用をベースに進めていきましょうということになる。


(あとは……)

「タッチペンは、機能付与していただいたものを複数本持っていてもいいのなら、念のため二本以上持っていたいです。佐風にとって使い心地がよい物や好みに合う物を、新たに選びたいのでサポートをお願いします」


「かしこまりました。機能付与済みのものを複数本持っていていただくことは可能ですから、二本以上ということもあわせて情報共有します」


「ありがとうございます。あと、台とかは、スタンドにもなるケースと台とか、スタンドと台とか? どんな感じにするのがいいか、というところから相談に乗っていただきたいです」


 家にあるあれこれを集めれば、なにかそれっぽく使えるかもしれないけれど、よさそうな状態にうまくできるかわからない。

 佐風用としてピンポイントに用意したほうがよいかなと思う。


「かしこまりました」

「お願いします。――あっ、そうだ。台とかは保管サービスにあずける分も……物によってはレンタルのほうかもしれませんが」

「そちらも、かしこまりました」


 保管サービスもレンタルサービスも、テイクがおこなっているものがある。


 保管サービスは、あずけた物を適切な状態で保管してくれて、指定した先に送ったり運んだりしてくれたり、保管場所に戻してくれたりもするものだ。

 すでに佐々木も利用開始している。


 今、面談ルームで、佐風である風鈴をかけているスタンド。

 佐々木が購入した物だ。


 村に行くにあたって、スタンドも持っていくのは大変そう、けれど送ると、自宅でスタンドが使えない期間ができてしまう。

 もう一つあったほうがいいかもと思い調べたところ、自宅で使っている物と同じ物が、まだ売っていた。


 ちなみに、テイクのレンタルサービスでレンタル可能な物のリストにも、風鈴スタンドはあった。自宅で使っているのとは違う物だが、サイズ的に使用できそうな物だ。

 あるの? と佐々木は驚いたし、驚いているような音で風鈴も鳴った。


 ただ、今後、使いたいときにちょうど借りられるかはわからないし、使い慣れている物と同じのがまだ売っているから、ここらで買い足しておくのもいいだろう、ということで購入のほうを選んだ。


 家で保管して、使う予定ができるたびに送って、よりは、保管サービスを利用したほうが便利そうだったので、利用開始を決め、あずけた。

 そして今回、使用する面談ルームに運んでおいてもらったのだ。


 佐々木の要望を聞いたあとで端末を操作していた梅幸が、顔を上げて佐々木と佐風を見る。


「調達担当のメンバーたちとも協力して進めていきますね」

「調達担当の方たち、ですか?」

「はい」

 頷いた梅幸が調達担当について説明する。


 どのようなものがあるか、どういったものが希望に合うか。なになら調達可能か、どこからどういう方法で調達するか。


 やりとりしたり、知識を活かしたり、調べたり、必要なところにつなぎをつけたり、自分たちで実際に調達に向けて動いたり。


 相手が目的のものを手にするまでをサポートするのも、調達担当のメンバーたちの対応範囲なのだという。


「そういった担当の方たちもいらっしゃるんですね。お世話になります」


「はい。メンバーたちに伝えますね。今後は、佐々木さんや佐風さんと直接やりとりする機会も多くなると思いますが、佐風さんが意思あるモノとして振る舞われて大丈夫なメンバーたちですから」


〈佐風さん『わかった、ありがとう! お世話になります。――いろいろな担当の方がいるんだなぁ』〉


「どういたしまして。伝えますね。――そうなんです。いろいろ、たくさんの担当があるんですよ。協力し合いながら活動しています」


 笑顔で梅幸。

 佐風が元気に風鈴を鳴らす。


〈佐風さん『いいな! それに、たくさんの協力関係とか、図にしたらすごそうだ!』〉


(ん? 図?)


〈トキ『壮観な、相関図』〉


(えっ? トキさん? そういうこと?)


〈佐風さん『よっ! 強力な助力!』〉


〈トキ『そう感じていただけたなら、嬉しいです』〉


(おおー)

 即席コンビのやりとりに、佐々木は思わず小さく拍手をした。




お読みくださり、ありがとうございます。


次の投稿は、7/12(土)夕方~7/13(日)朝あたりを予定しています【2025年7/5(土)現在】


(状況によっては、7/15(火)夕方~7/16(水)朝あたりか、7/19(土)夕方~7/20(日)朝あたりになるかもしれません)


今後もどうぞよろしくお願いいたします。


――――

【改稿しました。よろしくお願いいたします】


【2025年9/15(月)に改稿】

 思いがけず手に入れた物なのだが、今のところ使用頻度は低い。

 思いがけず手に入れた物なのだが、普段は別の物を使っているため、今のところ使用頻度は低い。



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