「12月、この月だから?」18.年末いろいろ
「あら。こちらもかくれんぼよ」
十二月もあと数日となった日の午後。栞の部屋。
隣でスマホを操作していたおとなりさんが言って、持っていたスマホの画面を栞のほうに向けた。
おとなりさんは、珠水村にあるお店のサイトを見ていたようだ。
「オランジェットのかくれんぼ」
画面に表示されている商品の商品名を、栞は声に出して言ってみる。
「おもしろそう。私も見てみよ」
栞は自分のスマホを操作する。
おとなりさんへのプレゼントをさがしていたとき、珠水村のお店のサイトもいろいろ見た。
けれど、さがす対象に食品は入れていなかったからか、この商品のページを見た覚えがない。
目当てのページを表示して読み始める。
布製の巾着やポーチなどが、いくつかセットになっている。そしてその中のどれかに、ラッピングされたオランジェットが入っている。
そういう商品らしい。
かくれんぼ状態のオランジェットを見つけてね、ということのようだ。
ここ数年、冬に販売されている商品らしく、なにに隠れているかは、年によって違うもよう。
「前回は、アンティーク風の紙製小箱のセットだったみたいね」
おとなりさん自身のスマホを再び操作していたおとなりさんから情報が来る。
「オランジェットも、かくれんぼ。スノードームンさんも、かくれんぼ。だね」
栞は笑み、少し歌うような口調で言う。
そう、スノードームンはただ今、栞の住居スペースで、七色のトナカイたちを使って、かくれんぼ中である。
現在、スノードームンお気に入りの遊びで、わりと頻繁に、おこなわれている。
スノードームンはちゃんと毎回、かくれんぼ開始前と終了時に、栞に、遊びに来ているときにはおとなりさんにも、文で教える。
栞とおとなりさんは、スノードームンのかくれんぼ中は、目立たない場所や、ぱっと見では気づけないところに、七色のトナカイたちがいるかもしれないと、普段より意識しておく。
もっと積極的に、栞とおとなりさんも、かくれんぼに関わることもある。
隠れる場所が増えるよう、引き出しを開けておいたり、棚の戸を開けておいたり、袋の口や箱のふたを開けておいたり。
ふわっとした布を各所に置いたり、本や雑誌を何冊か、ざっと重ねて、内部に空間ができるようにしてみたり。
七色のトナカイたちは、あの小さな体でけっこう速く移動するし、どうやって行ったの!? と思うようなところにも到達していたりする。
ただ、スノードームンのする、かくれんぼは、栞が子どもの頃にしたことがあるものと、ちょっと違う。
さがす役となった一人以外の六人が、それぞれ自分のトナカイに入って移動。
隠れる場所を決めたら、そこに自分のトナカイを置いたまま、精神体はスノードームへ。
精神体が入ったままだと、気配が手がかりになってしまうので、トナカイだけにしてくるそう。
さがす役の人は、白サンタか自分のトナカイに入ってさがす。
自分のトナカイを、さがす役の人に見つけられたら、見つけられた人は再びトナカイに入って、タブレットなどが置かれているスノードームン用コーナーに戻ってくる。
そういう手順らしい。
(隠れるというより隠す感じ? 本人的には隠れてる気持ちなのかな。でもどっちにしても……)
スノードームンは、七人で思考を共有している部分もあるのでは? 隠れた――隠した場所も伝わるのでは?
栞はそう思って、何回目かのかくれんぼのあたりで、スノードームンに訊いてみた。
共有されないこと、つまり、表明しないと自分以外には伝わらないことも多いし、共有状態を短時間オフにもできる、とのことだった。
それを答えてくれた文のあとで、〈『かくれんぼ仕様ー。かくれんぼに使用ー。栞さんも、かくれんぼしよー』〉という文も表示された。
実際、栞も、さがす側として、スノードームンのかくれんぼに参加したこともある。
そのときのスノードームンは、というと。
栞が趣味で集めた箸置きを並べてあるところに、しれっとまざってみていたり。
飴やチョコなど小さめの個包装のお菓子を、ざざっと入れてあるカゴの中に、ちょこんといてみていたり。
隠れるというより、まぎれる? しかも、見つかってしまわないよう頑張るというより、見つけた栞が笑うのを待っているというか……。楽しかった。
栞が思い返している中、白サンタがトテトテとタブレットのところへ行く。今、白サンタに入ってさがし役をしているのは、サンタだ。
白サンタがタッチペンを持ち、入力開始。
少しして、栞のスマホに文が表示される。
〈サンタ『おらんのう。トナカイどんのトナカイどんは、どこにおるのやら』〉
トナカイが入って隠した、トナカイ用の橙のトナカイが見つからないということなのだろうけれど。
(もしかして……)
「おとなりさん、おとなりさん、見て」
サンタが入力した文を見せる。
「おらん……いない……かくれんぼ……」
おとなりさんは文を読んだあとで、そう、声に出していく。
栞が読んだときと、同じようなことを考えていそうだ。
「オランジェットのかくれんぼって、そういう意味も入ってるのかな」
「そんな気がするわ」
言葉を交わし、栞もおとなりさんも笑みを浮かべる。
企画した人は、スノードームンとも気が合いそうだ。
トテトテと、またさがし始めた白サンタの動きを見ながら、栞は思った。
チョコレートはんです。
今年もあと数日となりました。
この時期のハンカチーズも、普段よりいそがしいメンバーもいれば、少し予定が空くメンバーもいたりと、いつものようにまちまちですが、それぞれ順調に活動しています。
クリスマスイブ付近には、テイクのスケジューリング担当の人たちに予定を調整していただき、持ち主さんとハンカチーズで、クリスマスパーティーをすることができました。
プチサイズのケーキが、おしゃれなケース内に並んだセット。
目にもおいしく、食べてもおいしく、わいわいと楽しく食べました。
調整や用意などなど、力を貸してくださった方々に感謝です。
後日、三ネコさんと、今年食べたクリスマスケーキについて、話す機会がありました。
三ネコさんは、月乃さんと一緒に、ロマン感じるマロンたっぷりクリスマスケーキ、というケーキを、おいしく食べたとのことでした。
「ふっとばすー。だけーど攻撃はしーないわよー。温和な方でーす、ふっとばすー。あたためーるのは足ですがー」
カップを持つ優月の耳に届く、フットバス使用中のコトハの、明るい声。
「フットバスー、ホットティー、どーちらーも素敵なあーたたーかさー」
(そう歌うコトハも素敵だよ)
あと数日で、新しい年になる。
みなさま、よいお年を。
来年もよろしくお願いいたします。
お読みくださり、ありがとうございます。
次からは、1月を題材とした話に入ります。
次の投稿は、1/3(土)夕方~1/4(日)朝あたりを予定しています【2025年12/28(日)現在】
(状況によっては、それよりあとの、(土)夕方~(日)朝あたりになるかもしれません)
今後もどうぞよろしくお願いいたします。




