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日本鐵道―線路は続くよどこまでも―  作者: 或る鐡
第1話 繋げ!明日の都会の線路!
5/9

第4閉塞 出区点検 入れ替え進行!

さて機関区へと向かおうかな、駅構内にはすでに石炭の燃える匂いが漂って時折に「ガチャコン、ガチャコン」と複式のエアーコンプレッサーの動く音が聞こえてくる。

ホームから駅コンコースへと階段を上って、通路を職員専用通路へと入る数週間ぶりの風景、もう何度も通った道なので慣れた風景だったりする。詰め所に入って挨拶を済ませて、ナッパ服へと着替える。うん、やっぱりナッパ服を着ると気分が引き締まるね!更衣室を出ると佐倉機関士がソファーに座ってスタフを確認していた

「佐倉さん、おはようございます!本日はよろしくお願いします」

「お?身延か。なんだ?助手はお前なのか。」

「えぇ、なんでも今他に助手を務められるのが捕まらないそうで、白羽の矢がたったみたいです。」


佐倉機関士はベテラン中のベテランでJR時代には高崎からの出張運転で他線区でのハンドルを何度も経験してる凄い人。

山梨や長野でD51が走った時も担当されてたらしくて、時たま聞かせてくれる出張運転の話とかが面白くて大好きな人だ。


「おろ?みのぶっち?君もこの士業なのか!」

「え?石和先輩!?」

「うんうん、そうそう石和センパイですよ!」

石和先輩は中央鉄道学園高校の3年生の先輩機関士科特に蒸気機関車に至っては女性機関士なんてほぼほぼ見ないけど中央鉄道学園高校のOJTの中でももそこそこ居る女性機関士の中で珍しい蒸気組の先輩だったりする。

ルックスも飛び抜けて綺麗で、運転成績や機関助手としての成績も抜群なので学校では女子からも告られる先輩として有名だったりする。

「どうやら機関助手さんが捕まらないらしくて、緊急で召集が掛かりました」

「らっしいねー、いつもは機関士だけど今日は助手として呼び出されたし」

「そうか、君たち2人は同じ学校の生徒だったな、ま、よろしく頼むよ」

そう、向こうの機関士の長坂さんにも声をかけられて余計に気が引きしまる。

「よっし、じゃぁ士業点呼行くか」

「はい!」

「では、こちらも行くかい」

「はい、長坂さん!」

4人連れ立って運行管理室に入る、今日はいつも以上に賑やかと言うよりもスジやさんが居るからか時々罵声が聞こえる。

「えー、臨9211列車点呼お願いします」

佐倉さんがそう言うと、奥の事務机に座ってた白新区長がこちらにきた

「あ、はいはい臨9211列車ね、悪いねー4人とも、急に呼び出したりしちゃって。うちの庫からディーゼル出そうにも日が悪くて全部仕業に着いててねぇ、しかも電気に至っては現場じゃ使えんなんて言うから急遽蒸機組に白羽の矢がたったというわけなんだよ」

そっか.....、爆破されたところはちょうど埼京線とか湘南新宿ラインと中央線、総武線がクロスする踏切上の小さな跨線橋。

だから、両方とも架線は破断してて使えないってことなのか......、

「では、臨9211(りんきゅーにいちいち)臨9232(りんきゅーにーさんに)列車士業点呼を始めます

時計確認、21:01....20秒1..2..3..4..5..」

「「「「誤差ありません」」」」

「はい、臨9211列車は本務機がD51 499機関士佐倉、機関助手身延両名。2名とも体調、異常ありません」

「続いて臨9232列車本務機がC58 342、機関士長坂、機関助手石和、両名体調等異常なしです」

「えーっ、今列車は線路復旧工事のための資材列車です、復旧工事用の車掌車、橋梁鋼資材2両、枕木1両、レール2両、架線、架線柱1両と作業員用の客車の客貨車8両プラス本務機、後補機の現車10両、換算25両で、編成有効長は12両相当です。

当該列車は貨客編成のみ連結、編成済みです。重量列車の為、蒸気圧の管理、ブレーキ扱いに気をつけてください。」

「「「「はい」」」」

「それでは、手帳を」

点呼が終わって手帳を出して、ハンコを貰う

さて、細かい仕業表を確認したけどかなり入れ替えが多いなぁ。八王子駅構内の入れ替え、新宿駅構内入れ替えの他に基本ダイヤはかなり寝て作られてるけど

三鷹~中野の区間は停車なしに駆け抜ける形になるのかアップダウンが激しい所なだけにかなり不安.....。

まぁ、心配しててもしょうがないね。

「どうした身延?」

「あ、いえ少し新製高架区間の走破に不安を感じちゃって」

「あー、なるほどな。まぁ確かに新製区間完成後あそこを蒸気機関車が走った実績はないからな、重量そのものは耐えられるように設計してあるってたが、重量じゃなくて勾配の方が心配になるな。」

「ははは、それだから私たち後補機が着いてるんですよ、本務さんはがむしゃらに走って下さいな。

いざ、となればバック運転の真骨頂お見せしますから」

いや、長坂機関士の貫禄.....老兵ここにありって感じだ


そんなこんなを話しつつ建家から出ると、広大な八王子駅と八王子機関区の敷地が眼前に広がる、手前側が電気機関車、ディーゼル機関車の留置線と検修庫、そして八王子駅に近い側に蒸気機関車用の矩形庫という配置で、長さ的にはテンダー機1台とタンク機が並列で止まっても余裕のある結構大きな車庫、今D51499とC58342の2台しか居ないけど時たま神奈川所属のC11とかが入区してることもある。

蒸気機関車全廃後からは役目を果たす事も少なかったもののNRになってからは設備の拡充をして機関車への給炭、給水は庫内で行えるようになって

出区の前にわざわざ転線をして給水·給炭をしなくて良いようになってる。

「右よし、左よし、足元よし」指差確認喚呼をしつつ広い構内を(くら)へと向かう。

保火番の人が既に圧を上げてくれているらしく、給水インジェクターと複式の空気圧縮機の動作するデュエットが賑やかに聞こえてる。

枕木のクレオソート油、熱せられた機械油、燃えた石炭の香りが混じりあってああ、これこそ生きる蒸気機関車の側だと実感を持たせてくれる。


庫内に踏み入るとまるで、待っていましたとばかりに安全弁が吹き上がる

「たく、張り切りすぎだよ。出区点検も終わらん内に弁吹かすたぁ、こりゃあ二三言わんきゃダメだな....」

「まぁ、庫内手の人達もそれだけ気合が入ってるってことじゃないでしょうかね?」

ちょっと機嫌が悪くなった佐倉機関士を宥めつつ、キャブへ先に荷物を置く、その後手摺に手をかけて、軽く地面を蹴ってステップ2段を上がっていく


「あ、おつかれさまです」

「出区準備ありがとうございました、おつかれさまです」

キャブへ上がると庫内手の人が、水面計を確認し終えてちょうど

下りるタイミングだったらしく、目が合った。

「佐倉機関士、弁吹かした事にちょっとふきげんですから気を付けてくださいね」

「あははは、ありがとうございます、ちょっと張り切りすぎました

では、道中お気をつけて」

と言うと自分が上ってきたタラップと逆側から下りて行った。

鞄を炭水車の荷物入れに閉まって、各圧力計と水面計を確認し焚き戸の踏み子を踏んで、火室の様子を見る、安全弁が吹いたばかりだしあまりくべなくても問題なさそうだね。


運行開始に備えて、発電機のバルブを開けていく

ビィィィイイイインと矢羽根が蒸気を受けて回り出すとキャブの電球が暖かく明るく灯り、ATSの電源が入れられるととビィィィィと警報音が鳴った後に確認扱いのリントンリントンと警報持続音がなり始めるのだった。

「うっし、身延!出区点検やるぞー、座っとけなー」

「はい、了解です!」

佐倉機関士の鞄を閉まってスタフ受けにスタフをセットして機関士席へ座る。手歯止め使用中の札がかかってるのを確認しながら、歓呼して単弁を操作する。

「ブレーキ緩解!」「ブレーキ緩解!了解!」

佐倉機関士から緩解指示を受けて、ブレーキハンドルを保ちから運転位置へと動かす、フヒューーーーーッとブレーキシリンダに込められた空気が抜ける音がして、ブレーキ圧力計が0kpaを示す

「ハイ、緩解オーライ!」「緩解オーライ、了解」

「続いて込める!」「込める!了解」

再びブレーキハンドルを動かし重なり位置へと動かす

ブレーキ分配弁からファシャーーーーと空気が流れる音が景気良く聞こえ、圧力計は指し示すその数字を段々増やして行き3kpaを示したところで保ち位置に戻す

「はい、込めオーライ!」「込めオーライ!了解」

「続いて、非常!」「はい、非常!」

非常の指示を受けて、一気にブレーキハンドルを

非常抜き取り位置へと持っていく、パシャーーーーーと盛大に音を立てて空気が流れていく。

「はい、非常オーライ!」「非常オーライ!了解」

ブレーキの挙動は異常なしで、そのまま空気圧縮機の可動確認に入る

「次!圧縮機始動」「圧縮機始動、了解」

キャブのバルブをひねると賑やかにガチャコンガチャコンガチャコンと音が聞こえて来て、排出弁を開いたらしくシャーーー!と景気のいい空気の流れる音が聞こえてくる


「はい、圧縮機オーライ!」「圧縮機オーライ!了解」

さくさくと出区点検を進めてるにも関わらず


隣からボッボッ!と短笛が二声聞こえてくる

早い.....もう、出区点検終わったのか。

傍で待っていた、誘導員が乗ったらしく

短笛一声静かに転車台へ向けて走り出した。

今回の士業では新宿へ向かう列車は本務機がD51499

後部補機がC58342、東京方面へ重い貨物を牽いていくので

D型が先頭でC58は逆機で補機扱いになる。

C58が逆機の理由は帰り行路の為、新宿には転車台はない

なので、帰りはC58が先頭で八王子まで帰ってくるという理由だ

新宿に転車台がないのも不便なので、どこかに作ろうか

という話もあるらしいのだけれども用地の話しやらで難航しているらしい。


そんなことを考えてるうちに、佐倉機関士が打音検査と煙室のチェックを終わらせたらしく、既に機関車の前にいた。

「身延ー!前照灯入れ!」「はい、前照灯入れ!」

「オーライ、続いてハイビーム点灯」「ハイビーム点灯!」

「オーライ!前照灯消し!」「前照灯消し!」

「オーライ!次は前部標識灯だな、はい入れ!」

「前部標識灯入れ!」「オーライ、次消し!」

「はい、消し!」「オーライ!、次は給水ポンプだ準備しとけー」

機関車前部の点検が終わって非公式側と後部の点検に移る

「はい、ポンプ始動!」「ポンプ始動!」

水面計受けのコックを捻って、給水器のバルブを開ける

カン カン カン カン カン カン とリズミカルに

給水ポンプが動く音が聞こえてくる。

「よし、OKだ次は後ろだな用意しとけー」

カンカン、カンカン、と打音検査をしながら佐倉さんが後ろに回る音が聞こえてくる、カチャン!と 連結器のピンが降りる音がして、続いて声が飛んでくる

「はい、後灯入れ!」「後灯入れ!」

「オーライ、また入れ」「また入れ!」

「オーライ!、次消し」「はい、消し!」

「オッケーだ、次、標識灯入れ!」「はい、標識灯入れ!!」

「よし、OK。さて、こちらも出区するぞー、圧力上げとけよー?」

出区点検も終わって、ようやく出区。気合い入れ直さないとね。

現圧は、1450kpaか。そこまで減ってないね火床も良い感じに整ってる

これなら、10回投炭すれば定圧に持ってけそうだ。


炭庫の受け口に挿してあったワンスコを手に取って予備動作に入る、スコップの軌道を確認して、踏み子を踏んで焚き戸を開けて燃えの薄くなり始めてる所を確認する。


ザク、プシュッ、サッ、ザク、プシュッ、サッリズムよく、腰を落として投炭を始め適度に焚べたら、ブロワーを上げて燃焼を促して水面計を確認する、よしこれで定圧いっぱい。出区準備完了。


「おし、圧も定圧だな!じゃ、いくぞ!」

『ボッ』短笛一声鳴らして、ブレーキが緩まる

『スプッ』と音がしてドレイン弁が閉まってゆっくりD51が動き出す『フシャーーー』と景気良くドレインを吐きながらそろそろと機関区から進み出てゆく。


「おうおう、どこから情報を仕入れたのやら

ほら、身延。鉄ちゃんがいっぱいいるぜ?」

タイミングが良いのか悪いのか、横浜線の機関区側には列車が在線していなかったらしく、カメラを持ったオタの皆さんが必死の形相で、夜の庫から出区する汽車を撮ろうと群がっている

「あぁ…ほんとだ、何も起きなきゃいいんですけどねぇ、あの人たち暴走すると何するかわからないから.....」

「気持ちは分かるがまぁ、そう言ってやるなや」


そんな様な短い会話のうちに機関車は既に転車台直前に到達する、転車台直前で一旦停止をし転車台の向こう側では誘導掛けさんのカンテラ誘導に合わせてゆっくりゆっくりと足元を確かめるように転車台へと乗ってゆく、ガッコン......ガッコン.....と転車台に動輪が乗る度にキャブが揺れる。

「はい...あと10m.....あと5m.....ヤワヤワ...ヤワヤワ」

無線機から聞こえる誘導の声に合わせて、ブレーキを扱われていく細かい込めと緩解を繰り返してゆっくり確実に転車台上の停車位置へと機関車を止めてゆく。

基本、転車台は電動だから気にする必要は無いのだが

前後のバランスが悪いと回らなかったりすることがあるやじろべえのような形の転車台だからこそそういった調整が必要なのだ

「はい、トマレトマレ」無線からの停止誘導と同時に完全にD51は転車台上に収まって、前後のストッパーが外された。


ウォーーーー...と音を立てて転車台がゆっくりと回り出す

と言っても進路を変えるだけなので、さしても回らないまますぐに転車台は止まった。

「はい、進路出区線から八王子駅留置側線へ進行願います」

誘導の声に合わせて復唱し、短笛一声転車台から出区線に進入していく「制限45!」「はい、制限45!」出区線から八王子駅留置側線へとポイントを乗り越えて行く、キャブはその度にフラフラと左右に大きく振れる。

先頭ランボードからのカンテラが赤に変わってそれに合わせて再度停車をする、これから入る線路は留置側線このまま後進してC58が既に連結をしている編成と連結を行う。


無線機から後ろのタラップに移った誘導員さんの声が聞こえてくる

「これより、連結5メーター手前まで誘導を開始しますよろしくお願いします、はい、あと30メーター」

逆転機を後進フルギアに入れて短笛一声動き出す

「はい、あと20メーター、はい、あと10メーター」

運転台機関士側後ろでは青色のカンテラが左右に大きく揺れている

「はい、あと7メーター」

ブレーキを入れたみたいで空気の流れる音がキャブに響いて

ゆっくり動いていた機関車は人の歩くスピードまで速度が落ちる

「はい、あと6メーター、ヤワヤワ、ヤワヤワ、はい、とまれとまれ」

停止合図を待ってたかのようにピタリと機関車が止まるちょうどそこは車庫の隣辺りで、右側には木製の壁があって駅側には連結の瞬間を撮ろうと鉄オタ達が群れている、後ろの方で連結テコを動かす音がしてその少しあとに誘導員さんがキャブ横までやってきた

「それでは、これより連結作業を行います5メーター手前からです、よろしくお願いします」

「おう、よろしくな」

佐倉さんの返事を聞くと、誘導掛けさんは編成側に戻っていった


「はい、これより連結5m前からです」

無線機から声が聞こえてきてそれに呼応して、短笛一声ブレーキが解かれるドレインを盛大に出しながらゆっくりとD51は再び後退を始めるキャブの窓から半身を捻って佐倉さんは汽車を進めていく

「ハイ、あと4メーター」

加減弁は開けままで逆転機が少し引き上げられる

「ハイ、あと3メーター」

シリンダー圧力計は力行時の4分の1ほどの圧力を示している

「ハイ、あと2メーター」

案内があった瞬間に加減弁が閉められて

ドレイン、バイパス両コックが払われ、逆転機が後進80に戻される

「ヤワヤワ、ヤワヤワ」

ブレーキが少し扱われ空気圧縮機が作動を開始する

「ハイ、1メーター...ヤワヤワ....ヤワヤワ....トマレトマレ」

連結の衝撃が来る直前にブレーキを完全に込められて

『カチャン』と連結ピンが降りた音がして軽い突き返される衝動がキャブまで伝わってきた。

「はい、連結完了です、これよりブレーキ管接続を行いますので、単弁ブレーキのみの取扱でお願いします」

そう無線から連絡があり、単弁が込められ保ち位置になり続いて自弁が払われて、緩解位置へと持ってかれる、空気の流動を受けまた空気圧縮機が作動を始める

『パシュッ』どうやら、ブレーキ管の接続が始まったようで後ろの方から管を開ける音が聞こえてきた。

「臨9211本務機さん聞こえますか?こちら後部補機機関士長坂です」

「こちら臨9211本務機佐倉です、通信感度良好です」

横浜線のホームに列車が入ってくると同時に後ろにいるC58からの無線が入ってきた

「えー、ではこれよりブレーキ確認の為にブレーキコックの操作願います」

そう無線からの指示でブレーキ台の下にあるコックが重連統括位置へと切り替えられた

「ブレーキコック、操作完了です」

「了解です」

無線が切れた直後、後部補機から短笛二声の合図でブレーキ試験が始まった、こちらは単弁を掛けたまま自弁の圧力計の確認をする、空気圧が段々と上がってゆき2.5kpaで止まるそこから10秒間空気圧の変位が無いか確認して短笛一声、汽笛が鳴らされる。

合図後、補機のブレーキが払われたようで圧力計の針はぐんぐんと下降して空気の流れる音が響く。


続いて、臨9211列車の本務機であるこちらからのブレーキ試験、短笛二声汽笛を鳴らして、自弁が重なり位置へと持っていかれる。

ふと、主圧力計を見ると随分と圧が減っているので投炭を再開する

「おう、身延そんな気合い入れんでもストーカー使っていいからな?まだ、本線に出てもいないんだ動揺酷くなるとストーカー使えんから、使えるうちに使っとけなー。」

「ありがとうございます」

現役時代D51にはメカニカルストーカーなんて物は付いていなかったが、各地で復活していく新製されていく蒸気機関車にはメカニカルストーカーは標準装備となっていた、現役時代の装置自体は火室の中央にしか石炭を入れられなかったが、改良されて火室の左右に撒けるようになったので、少し技術と体力のいる右端や左端への投炭は停車中であれば、ストーカーで済ませることも多い。


短笛一声汽笛を鳴らし、無線でブレーキ試験が終わったことを伝え再びブレーキコックが重連統括位置へと扱われる、メカニカルストーカーは独特のカラカラカラカラという石炭の転がっていく音をたてながら給炭を続けている。


「これより、臨9211列車の入れ替え誘導を開始します、お願いします」無線機からの声に返答するようにC58が短笛一声、続いてこちらも短笛一声を鳴らす、C58のブレーキが払われたらしく空気の流れる音がキャブに響く、入れ替え中は基本片方が動力車として動く為に、D51側はドレイン弁もバイパス弁も払われて無動力としてぶら下がって着いていくのみとなる。

ガツンッと衝撃の後に機関車が後ろに進み出す、スゥプスゥプスゥプとドレイン弁から空気の入れ替わる音が聞こえてタービン発電機と機械式速度計のカランカランという音をのみキャブに響かせて列車はそろそろと留置側線を進み行く。

八王子駅のコンコースを何度か潜って幾度も分岐器を乗り越しながら中央線の下り本線へと入ると、八王子駅から高尾方面は上り勾配なので『ボッボッボッ』とC58が奮闘する音が鮮明に聞こえてくる。


無線機からの停止合図を受けてD51は高尾方の八王子駅手前の踏切を睨むように止まり、後は進行の合図を待つばかりだ、列車の前の方では交通誘導の人が忙しく「立ち止まらないでください!」と声を上げながら、どうにかして鉄オタ共が留まるのを阻止しようと奮闘している、そんな中踏切がなり始める、「臨9211機関士さん、この後の特急通過直後に進路が開きますので発車準備をお願いします」無線機から誘導掛けさんの声が聞こえてきていそいそと、発車準備に取り掛かるブレーキをこちら主導に切り替えて、軽いブレーキ試験緩まって転がらないように注意しながらの試験が終わる、主圧力はほぼ下がっていないのでメカニカルストーカーの動作も止めてある。


「ピィーーーー」後ろの方から特急のミュージックホーンと空笛が聞こえてきて武田菱を車体に纏った特急車両が駅へと入っていく、

「それでは、臨9211列車八王子駅上り中線への誘導を開始します」無線機からの声に答えて短笛一声それに引き続いて「それでは、臨9211列車八王子駅へ進行願います」と無線が聞こえてくる

長笛一声鳴らして逆転器が前進80へ引き下げられて、ブレーキが払われる、加減弁が引かれて逆転器がすぐさま前進75に引き上げられる、直後ドレイン弁が払われて盛大に蒸気を吹き出しながらソロソロと踏切内を堂々と列車は進んでいく。


「はい、制限45!しめーる!」「制限45!しめーる!」

佐倉さんの歓呼を復唱し、その直後ドレイン弁が開けられたまま加減弁が閉められて、バイパス弁が開けられて逆転器は再び前進80へと引き下げられた、流れるバラストから読み取れる速度は30km/h前後なのでこのまま下り勾配に任せて下っていく。

ポイントを踏み越す度にキャブが右へ左へと揺れて、その度炭庫の給炭口から石炭がガラガラと一二個転がって落ちていく

その動揺も収まって列車はゆっくりとした動きのまま、八王子駅上り中線を停止位置へ向かう。

左側のホームには先程入ってきた特急列車が右側の下り副本線ホームには八王子折り返しの快速がそれぞれ止まっていて、列車はその間を進んで貨10両の位置でピタリと止まる、それに合わせたかのように特急が新宿へ向けて八王子駅を発車していった。

この貨物列車のダイヤは勿論、臨時であるから都度都度運行指令と連絡を取りながら入れ替えの最中はポイントを変えている、なので普段なら有り得ない程のカツカツでダイヤが組まれていたりする、その証拠に特急が出ていったすぐあとに上りの快速がすぐにホームに滑り込んできた。


「身延!ちょっと足回り見てくるから頼むな」

列車が止まると佐倉さんはそう言ってキャブから下りて足回りに蓄熱されていないか見に行った、

水面計は正常位置、圧力正常特段やる事はなさそうだ

手持ち無沙汰を感じて、少し喉の渇きを覚える

炭水車の荷物入れからお茶を取り出して二口程煽って

キャブから進行方向の新宿方面を見つめる

ずらっと並んだ出発信号機は中央上りだけが進行現示でその他は出発停止のまま。入れ替え信号機もまだ進路閉鎖を示したままだ。


「なんもなかったかい?」足回りを見に行った佐倉さんが機関助手側から上がってきた、「はい、特段」

時刻は19時50分、列車の発車時刻は19時55分でラッシュの終わりの時間帯をダイヤに合わせて新宿へ向けて列車は上っていく。

「発車まで、あと10分立川まで通過」

「発車まで10分、立川まで通過」

スタフを確認しながら佐倉さんが歓呼を行う

それを確認するようになぞっていく

「立川で快速1本通過待ち後発車、国分寺まで通過」

「立川で1本通過後発車、国分寺まで通過」

今回の行路は八王子~立川、立川~国分寺、

国分寺~三鷹、三鷹~中野、中野~新宿と停車する駅は少なくしかし各駅で通過待ちをするので停車時間そのものはあるように立てられている、その停車時間に蒸気圧を作れという算段らしい。

「国分寺で特急列車通過後発車、三鷹まで通過」

「国分寺で特急通過待ち、三鷹まで通過」

まぁ確かに途中どこかの駅で中線に入ろうものなら

制限45を抜け出すまで足が重くなり自然と加速が遅くなる、よく考えられている。

「三鷹で快速1本特快1本通過待ち、中野まで通過」

「三鷹で快速、特快通過待ち、中野まで通過」

さて、問題はここから三鷹~中野間の駅間の細かいアップダウンここで足を取られてしまっては、ここまで順調に走り抜けていても意味が無い。

「中野で快速1本下り特急1本通過後発車、新宿着」

「中野で快速1本下り特急通過後発車、新宿着」

中野で下りの特急を待つのはこの列車が入れ替えで特急線も使う予定だから、着番線は快速の上りホーム

そこで組成をし直して事故現場へ向かう。

「はい、発車まであと3分!上り中線出発進行!入れ信(入れ替え信号機)点灯!」

佐倉さんの歓呼につられて機関士側から、前方を見やると、上り中3番線路出発信号機はたしかに青色に点灯し、その下の入換信号機は進路開通を現示している。

「発車まで3分、上り中線出発進行入れ信点灯」

改めて主蒸気圧計を確認する、1440kg少し下がってしまっている、火室を開けて薄くなってるところを見る奥は問題なく手前中が少し薄くなっているようだ

ブロアーを開けて投炭を開始する、リズム良く、返しシャベルで狙いを定めて薄くなってる所に重点的に投げていく。

大体良くなった頃合で佐倉さんの発車まで残り1分の歓呼があり顔を上げる、懐中時計を取り出し復唱をする。


2023-11-17

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