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日本鐵道―線路は続くよどこまでも―  作者: 或る鐡
第1話 繋げ!明日の都会の線路!
4/9

第3閉塞 機関助手緊急要請 高速進行!

散り始めの桜を横目に流しながら、

土手の道を自転車で走って家へと向かう

今日新宿で起きた線路爆破事件の影響で湘南新宿ライン、埼京線、山手線中央線、総武線各駅停車は一部区間で終日運休となって、家へ帰るにも相当な時間を新宿駅で取られてしまった。

駅の混乱もひどくて、「どうなってるんだ!」と駅員さんに詰め寄る人が居て、心の中でお疲れ様ですと言いつつ振替輸送の地下鉄に乗ってようやく地元へ帰ってこられたのだ


家について、自室へ戻ってテレビをつけるとちょうど事件の事をやっている「こちら線路爆破事件の現場です、時刻は午後6時半を過ぎ現場検証のために投光器が用いられ現場を照らしています....」

現場の状況を見ると、線路のあたりだけに被害が集中していて

TSFの犯行である事は間違えが無いようだと専門家が見識を話している「それにしても、線路や架線の被害の状況はかなりの物でちょうど列車の居ない状況が不幸中の幸いでした、現場検証は終わっていますが、線路の復旧見込みは立っていません現場からは以上です」


そんなテレビの中継を見ながら多分あの状況だと、OJTの子も色々な場所に駆り出されてるんだろうなぁ、なんて他人事のように見ていると携帯が鳴った

「はい?もしもし?」

「たくっ、あんたは良いわねぇお気楽そうで」

電話の相手は同じクラスの羽幌七海(はぼろ なみ)だった。

「なんだ、なみか。どうした?」

「どーした?じゃないわよ、新宿で線路爆破があったのは知ってるでしょ?あれで駅員が足りなくて駆り出されたのよ」

「あー?やっぱり??そうじゃないかなぁ~って思ってた所」

「ほんと、気楽で羨ましいわぁ」

「で?なにか用事?」

「あ、そうだった。えっと駅員さんから頼まれたんだけど混乱が酷くて接客科のOJTだけでも全然手が足りないのよで、手の空いてる友達とかいないか探してくれって頼まれたんだけど、手伝いに来てくれないかしら?」

「今、ようやくその事件の被害から帰ったばかりなんですが出て来いと言うのかい?なみさんは。」

「帰ったばかりって、あんたFaceBoodで買い物中~って写真あげてたじゃないっ!てか、その場に居たなら協力申し出なさいよ!」

「んー、疲れてたしねー、っとごめん他に電話掛かってきた後で掛け直す。」

「ハイハイ、私休憩後10分くらいだから早めにね?」

「ん、りょーかい」


やっぱり、こんな自体になってましたかーと思いながら

キャッチの電話に切り替える。

「もしもし?身延史人(みのぶあやと)君の携帯で間違いないかな?」

「はい、そうですが?」

「良かった、史人(あやと)君八王子機関区区長の白新(はくしん)です。

急で悪いんだけれども、今から出てこれないかな?」

「あ、区長さん!こんばんは。今からですか?大丈夫ですけど」

「そうか大丈夫か、助かったよ!いや、実は君も知ってるかと思うけど新宿の線路の事件で復旧工事をするんだけど、その際電気機関車が使えなくて、色々な事情から急遽うちの(くら)から蒸気機関車を派遣することに成ったんだけど、肝心の機関助手が捕まらなくてね。で、OJTではあるけれど君は優秀だしと声を掛けたんだが、どうだい手伝ってくれるかな?」

「はい!もちろんです!」

「それは、良かった。ではこれから八王子まで来て欲しい、家は杉並だったかな?一応中央線は新宿折り返しで動いてるからね、添乗で来るといい。一応学校の制服は着といてね、制帽も必要かな?」

「了解しました、直ちに向かいます」

「うん、よろしく頼むよ」


うぉぉぉぉぉ!マジか不謹慎かもしれないけど、かなりテンション上がる。あ、なみに連絡しとかなきゃね!電話じゃあれだし、SMSでいっか

「ゴメン無理、俺のとこにもOJTで声掛かった」っと!よし、そうとなれば急いで着替えなくてはね、ナッパ服は洗濯してカバンに入れてあるし。あとは、着替えてっとネクタイは簡易型のでいいいかな?


階段を降りてリビングに顔だけ出して出かける種を告げる

「母さんちょっと出掛けてくるねー、夕食は置いといてもらえばいいや!じゃ、いってきまーす。」

「あやと?ちょっと、どこ行くの?って、あら行っちゃったわ......、まったくしょうがない子ね」


あ、行先言ってないけどま、しょうがないか。

つい1時間程前に通った道も今は街灯がついて、散り際の夜桜見物をしてる人がチラホラと居る、4月と言っても肌を掠める夜風は冷たくてマフラーを巻いてくれば良かったかなぁ?なんて思いつつ駅への道を自転車で走ってゆく。


駅について、改札でOJT用のパスを見せてホームへと向かう途中駅からで緊急の対応となるから、車掌室に行った方が手っ取り早いかな?そんな風に考えつつ列車の後より10号車停車位置を目指す。

「まもなく、3番線に快速 高尾ゆきが参ります

危ないですから黄色い線の内側までお下がり下さい」

列車接近を告げる自動放送が流れて、ヘッドライトがレールに反射してだんだんと近づいてくる


入ってくる列車にの運転士さんへ向かって軽く挨拶しながら前照灯、行き先方向幕、種別幕、列車番号を確認する空制の音が何回か聞こえて、エアーコンプレッサーが動き出す

「おぎくぼー、おぎくぼー、ご乗車ありがとうございました」

到着の自動放送が流れ、列車の扉があく。


「お疲れ様です、学生OJTの身延です、添乗お願いします」

「あっ。はいはい、だいたい話は聞いてるよ、

さ、乗ってすぐ出るからね。」

乗務員扉を開けた車掌さんに話をして乗務員室へと乗り込む国鉄型特有の狭い乗務員室、薄緑色の運転台はこれぞ電車と言う感じがする。


乗り込んで30秒も経たない内に、発車を告げるメロディーがホームへと鳴り響き慣れた動作、それでいて美しくきびきびとした動きで扉を閉めて、指差喚呼をし、運転士さんへ合図を送って列車を、発車させていく。

うん、まさにプロフェッショナルだ


そして、息つくまもなく次の停車駅を放送し車掌さんはようやく椅子へと腰掛けた。


「大変だね、学生なのに緊急招集なんて」

「いえいえ、むしろいい勉強になります!むしろ皆さんこそ今日は大変ですよね、急遽折り返しの作業をしなくちゃならなくて」

「まぁ、仕事だからなぁ仕方ないっちゃ仕方ないさ」

そんな短い会話をして列車は次の駅へと止まるため速度を落としていく。


ふと、目を後方に移すとアップダウンの激しい線路が見えてくる、これを蒸気機関車で攻略しようって言うのだからキリがない....、はっきり言ってかなり無茶な感じはするけど、それでもSL全廃後に比べボイラー法も蒸気機関車関連項目に限り国鉄時代と同じ基準まで改正され、上げられる罐圧もかなり改善された事で今まで乗り入れられなかった路線での出張運転も見られるから、これくらいなら問題ないのかもしれない。


いつも通学で走る線路だけど、いざ自分が乗るとなるとやっぱり線路の下見がしっかりと出来てないのは不安がかなり残るかな。


三鷹、国分寺、立川と列車は順々に停車してそのジョイント音を高らかに響かせて、いまぞ多摩川橋梁をわたり行く、線路形状からすると上り列車は多摩川橋梁上から少し投炭が必要だろうか?

八王子から列車が出たときまずは淺川橋梁を超えるまで小さなアップダウンがあって、そこから豊田駅までは下り勾配で滑り込む、豊田~日野間は多摩丘陵を超えるため蒸気が必要、問題があるとすれば立川より先の新生高架橋区間だろうか立川~国立の上り勾配と、もう一つ国分寺~三鷹ここは蒸気機関車の入線実績がないからかなり不安であったりはする。


列車は日野を出て、多摩丘陵を駆け上って中央自動車道を潜り抜けて、豊田駅への下り勾配へ差し掛かる、やっぱりここの勾配は斜度自体もそれなりにきついし距離も長いから、かなり蒸気圧も心配になりそうだ、八王子発車後にどれくらい蒸気圧を保てるかが勝負になりそうだ。

緩やかな減速をしてホームに滑り込んだ列車は、少な目の乗客を吐き出して駅を出てゆく、進行方向左手には広大な豊田電車区が広がって、国鉄型の特急車両やらが身を休めている、ここから列車は軽くなったその車体に加速をかけて、淺川橋梁を通過して八王子の市街へと入り右へ左へと緩やかなカーブに車体を沿わせて八王子駅へと入線する。


八王子駅は今も昔も変わらない主要駅で、小さいながらも貨物駅と貯油所が付近にあったりする。

もちろん蒸気機関車の方向転換に必要な転車台もあって甲州、信州へと向かう列車の拠点地だったりもするのだ

「添乗ありがとうございました」

「はいはい、じゃあがんばってくれよ?君の双肩に首都圏の今後が掛かってるんだ。」

「はい!がんばります」

添乗をさせてくれた車掌さんは、発車ベルを鳴らしつつ乗降の推移を見守る、ホームにはこの当地がモデルの夕焼け子焼けのワンフレーズが流れてる、カチッとスイッチを切る音が聞こえて、戸締めの案内が流れ車掌さんが笛を吹く扉が閉まるのを確認して、「お気をつけて」と敬礼しつつ発車してゆく列車の後姿を見送る

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