第2閉塞 OJT説明会 注意進行!
この胸の高鳴りは去年の夏休み終了直後から始まる、NR創立後国鉄が運営していた「鉄道学園」は形を変えてNRが運営をする「鉄道学園鉄道高校」となる、中央線の沿線に位置して尚且つ鉄道総合技術研究所が近い僕の通ってる学校は「中央鉄道高校」の名を冠したのだった。
この学校のカリキュラムの目玉である学生OJT(ON JOB TRAINING)、要するに学生の頃から仕事に慣れさせて就職直後に即戦力となる人材を育成するものであって、鉄道現場に学生が入り授業と並行して鉄道員としての自覚を育てて行くのが目標であったりする。
1年生夏休み明けの9月2日、運輸科の1年生総勢97名は体育館に集まりOJT説明会を受ける事になっていた、この説明会はまず運輸科が受けその後に接客科、保守整備科、機械科そして一般科の5科が5日に分けてOJTの説明会に参加する事になる。
体育館に入り、チャイムがなると電気が消されて舞台に下げられたスクリーンに映像が映し出され始める、大きく『NR』とロゴが映し出された後にナレーションが「NIPPN Railway株式会社、通称NRは日本全土の鉄道を担う企業です」と入って画面がガラリと変わると少し古めの映像の様で、涙脆いで有名なアナウンサーが大写しになっている「蒸気機関車、と言うのは親父の背中のようでありまして黒々としていて大きく頼もしく思える訳でございます、その事を思い出す度自分もいつしか親父の背中になっているのかな?と...、さてここからは京都は梅小路蒸気機関車館に勢揃いしている蒸気機関車達による演奏会をお楽しみ下さい、指揮は山本直純さんです。」そう言い終わるとまた画面が変わってオレンジ色の法被を着て眼鏡をかけたおじさんが指揮棒を持って指揮台へ歩いていく、その背後の奥には扇形庫に居る全ての蒸気機関車達が頭を庫外に出して煙をあげ前照灯を付けている。
指揮者の人が余振りの二拍子を取った後に転車台の向こうの蒸気機関車を指し示すと、それに応えてD52が汽笛を鳴らす、次々とずらりと居並ぶ蒸気機関車へ指揮をすると段々とオーケストラの音がはいり、蛍の光が奏でられて、そして汽笛のリズムは完全にオーケストラを伴奏にして主旋律を奏で始めて間奏にはいる、また画面は変わりどこかの駅のホームを学生が歩く後ろ姿が遠くから映し出されて、その遠くのトンネルから列車のヘッドライトが見えて気笛がなる、とまた画面は変わりどこかを走る列車で夢現で船を漕ぐおばあちゃんが映し出され、新幹線ホームで別れを惜し皆から電話するねとジェスチャーする女の人や、終電の終着で駅員さんに起こされる酔っぱらいのおじさんと場面が変わって画面は扇形庫へと戻ってくる、機関車の間から高齢の職員さんたちが沢山出てきて汽車の前に並ぶと蛍の光は間奏から2番に入って、職員さん達が合唱をして曲が終わるのであった。
と、ここまでで映像が止まって電気がついて説明が始まった「運輸科の各コースを選択をしている、皆さんこんにちは!今、皆さんに見てもらった映像はNRの会社説明ビデオの冒頭部分です、しかし全編見てもらうと15分以上掛かってしまうのでこれより学生OJTの説明に移らせて頂きます、改めまして司会の高木です!よろしくお願いします。」と司会が入ってOJTの概要の説明をされ、その後に本番のOJT先の紹介が始まった。
まずは運転士・車掌コースです、こちらはOJT開始後6ヶ月は駅員として、その後3ヶ月のシュミレーター研修と座学を受けてもらい、10ヶ月目から学園線での運転士、車掌として過ごしていただきます。
2つ目は接客・アテンダントコースです、こちらは駅員やアテンダントとして切符の発券業務や駅のホームでの立番やアテンダントはグリーン車や食堂車での案内業務などをして頂きます。
3つ目が整備コースです、電車や機関車の保守点検作業を主にやっていただきます、6ヶ月目までは先輩の元で学んで頂き、7ヶ月目から先輩と共に実際に保守点検と修繕作業にあたります。
4つ目が機関士コースです、それぞれディーゼル、電機、蒸機と三科ありますが各科共にOJT開始後3ヶ月は座学と保火番、その後3ヶ月は庫内手、そして7ヶ月目から機関助手見習として座学、シュミレーターと学園線と指定線区での機関助手業務、12ヶ月目から機関士見習いとして座学とシュミレーター、15ヶ月からは学園線と指定線区での機関士として過ごしていただきます。
5つ目が鉄道警察隊コースです、こちらは学園授業と並行して1週間交代で学園警察科と合同授業を受けていただき1年後から、指定の鉄道警察隊へ所属し駅での警備や列車内護衛などを行っていただきます。
各コースとも、学園での選択科と違っても構いません、興味のあるコースを選んでください。
ではここから先は各コースの教官と先輩に登場していただきます。
と、こんな風なOJTの紹介から早1年と4ヶ月、そして幼心を掴んで離さなかった蒸気機関車への憧れ、あの力強い咆哮、鉄道車両にして唯一の体温をもち扱いを間違えれば走ってくれない、僕が選んだのは人間臭い蒸気機関車のOJTだった。
国鉄時代、入りたての機関士志望の人達は庫内手から機関助手、そして機関士へと職のレベルが上がって行きそれは、ここでもさして変わることは無くて、蒸気機関車がどのような機械であるかどうすれば故障をするか、どうすれば直るか、それをまず学んでから機関助手になり、機関車の動かし方、石炭の焚き方、水の扱いそれらを覚えて行って、ようやく機関士となれる。
そして、遂に学園線と指定線区で機関士として走れる日々が始まるのだから、これがワクワクしないはずがない!そんな思いを乗せながら列車は山手貨物の短絡線を渡っていくのだった。
横浜から乗り込んだ列車は横須賀線を経由し、山手貨物の線路を使い定刻に新宿駅へと滑り込んだ。
夕刻のラッシュ時間帯の混雑した新宿駅
でもこの時の新宿駅にはなにか違和感が感じられた、いつもの駅であってそうでないような。
「しんじゅくー、しんじゅくーご乗車ありがとうございました
お忘れもののございませんようにお気をつけください」
駅の自動放送が新宿への到着を知らせる
荷物を持ち人の流れにのり列車から降りる
いつもと変わらない風景、人が絶えることなく行き交う駅構内ーーー
『___ズドッーーーン!!!』
空気を大動させて何かが、爆発をした
しかもかなり近い距離で
駅舎が揺れて階段を上っていた人達はその場にうずくまっている。
あちらこちらから悲鳴が上がって、階段は阿鼻叫喚状態。
ふと、音をした方角を見ると黒煙がもうもうと立ち上っていて
そこは、さっき通ってきた湘南新宿ラインの踏み切りの辺りであった。。