三題噺第36弾「台風」「少女」「穏やかな高校」
日本の南海上に“台風”が接近している頃の夜遅く、“穏やかな高校”に通う“少女”は事件に巻き込まれていた。
「離してください!」
「ヘッヘッヘッ、嬢ちゃんは金になりそうな身体してんなぁ。たまんねぇぜ」
「やめて! 離して!」
「誰が離すかよ。おい連れてけ」
「へい」
男たち三人は少女を車の中へ引きずり込む。
口をタオルで塞ぐと手足にはガムテープでぐるぐる巻きにして拘束した。
その現場を偶然通りかかった一人の若者が警察へと電話をかけた。
「もしもし警察ですか? 今一人の少女が連れ去られたんですけど、すぐ来れますか!?」
「場所は?」
「水沼高校の裏手沿いに入ったところです」
「すぐ行きます」
十分後、警察が来た。
「電話をかけたのはあなたですか?」
「はい、そうです」
「連れ去ったのはどんな人でしたか?」
「男三人で、この暑い中フードを目深に被っていました」
「逃走手段は車ですか?」
「はい、そうです」
「ナンバーは見えましたか?」
「暗くて見えませんでした」
「どちらに行きました?」
「大通りの方へ行きました」
「捜索してみます。ご協力ありがとうございました」
犯人たちの車が走り去って一時間が経った頃、車は止まっていた。
「やっとついたか」
「長かったすね」
「あとは人身売買のkに売るだけだな」
「いくら手に入るっすかね?」
「百万はいくだろ」
「そんなにもらえるんすか。いいっすね」
「さっさといくぞ」
取り壊されそうな廃ビルの中に取引の男がいるらしい。
その男はkと呼ばれ、この界隈では知らぬ者はいなかった。
「kさん、いい娘を連れてきましたぜ」
「どれどれ、んん。てめぇ馬鹿野郎。俺の娘じゃねぇか!」
なんと、誘拐してきたのはkの娘だった。
「ええ!? kさんの娘?」
「てめぇら俺の娘を誘拐してきてタダで済むと思うなよ」
こうして誘拐事件は終わり、警察の出る幕はなかった。
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